鉄人28号 白昼の残月 DVD 〔REVOLTECH SPECIAL EDITION〕 新品価格 |
2005年(初上映は2007年)光プロダクション/鉄人計画2007
監督:今川泰宏
原作:横山光輝
音楽:伊福部昭
配給:日活
アニメーション作品
<あらすじ>第2次世界大戦の名残を残す昭和30年代前半、
次々と起こる怪事件に立ち向かう少年探偵金田正太郎と彼の操縦する巨大ロボット「鉄人28号」。
不発弾(実は正太郎の父であり鉄人の製作者である金田博士が残した「負の遺産」廃墟弾)を狙い突如出現するロボット群。
出撃する鉄人、だが多勢に無勢、苦戦する鉄人と正太郎、
しかしそこに謎の男が現れ彼がリモコンを借りて鉄人を操縦すると
鉄人は正太郎の操縦時以上に生き生きと動き出しあっという間に怪ロボットを倒した。
謎の男は「ショウタロウ」、正太郎と同名の義理の兄だと名乗った。
そして正太郎を付け狙う謎の復員兵姿の「残月」の出現。
怪ロボットを操り日本に上陸しようとするべラネード財団とそのエージェント・クロロホルム。
謎は再び謎を呼び、クライマックス直前の衝撃へと進んでゆく。
鉄人28号は自分の記憶の中で週刊少年マガジンのマンガの主人公ら、
あるいは東宝映画の怪獣たちと並んで最古のキャラクターである。
巨大ロボットコミックの元祖!後発のロボットたちが持つ超兵器の類は持たず、ただひたすら殴りまくる肉弾戦。
しかし兵士がヘルメットをかぶったような頭部、タンクのような丸い胴体のデザインには独特の魅力があり
その人気は誕生から50年を超えた現在でも色褪せない。
今回何度目かの復活で劇場版の公開ということだが、
それだけなら劇場に足を運んで見に行くまではなかったかもしれない。
しかし、今回の劇場版は音楽が伊福部昭先生!
果たして伊福部作品をバックに鉄人28号はどんな風に翔ぶか。
07年3月31日、新宿武蔵野館で鑑賞する。
初回はチケット売り切れの盛況で、次回の入場券と整理券を購入して待つ。
年齢層は老若男女さまざま。ただ親子連れは少ない。一人で来ている初老の男性が多い。
ロビーには幼いころ持っていた光文社のカッパ・コミックスの表紙のレプリカが陳列。
隣の人に「この本、俺全部持ってたんだよ!」って言いたくなる。
オープニングは「正太郎くんマーチ(註1)」ああ、懐かしい・・・。
鉄人の所有権は金田博士の遺言により実子の正太郎にある、と山岸弁護士は説明したらしい。
そのため金田博士の養子となり南方の島で共に鉄人建造に従事していたらしいショウタロウは
帰国してから自己の存在理由を見出せなくなり、のち正太郎と対立する。
顔を見せず日本刀を持つ「残月」が正太郎を付けねらう目的も、鉄人の所有権にあった。
彼ら二人が垣間見せた人間の「欲」という魔。
謎はクライマックス直前に明らかになる。
戦争に運命を翻弄させられた人々の悲しみ。
ショウタロウの思い出の家族。
そして「残月」の正体。
敷島博士が解いた謎はあまりにも悲しい。
複雑に絡み合った人間側ストーリーは重厚。
しかし、決定的なのは鉄人の格闘シーンが少ないこと。
鉄人はほとんど廃墟弾の撤去のために動いており
お目当ての敵ロボットとの対戦シーンは極僅か。
ラスト直前ではVL2号、バッカス、ギルバート、サターンと往年のライバルロボットが4体同時に登場するも、
鉄人全く苦戦せず圧勝。
映像的な見せ場がちょっと弱いことは否めない。
それからラストに登場する「本土防衛最終兵器」、
これも違うデザインのほうがいいのではないだろうか。
もしかしたら正太郎とショウタロウの対比と合わせたのかも知れないが。
敵ロボット・モンスター(これも懐かしい)と鉄人が廃墟弾を巡って格闘する場所は明治キャラメルの看板から銀座、有楽町辺りか。
正太郎とショウタロウが村雨一家と出会うところは浅草の仲見世。
正太郎とショウタロウが鉄人操縦の練習をする場所では4本の煙突が見える(千住にあったお化け煙突?)。
ということは川は荒川?
東京タワーは造りかけ。
戦犯が拘留されていた巣鴨プリズンも登場(今はサンシャインビルが建つ場所)。
都電も出てくるけど、昔はたくさん走っていたから場所の特定は出来ず(現在は荒川線のみ)。
と、昭和30年代前半の東京の、懐古感たっぷりの場所もたくさんでてきてうれしい。
伊福部作品は新作ではなく「サロメ」「日本狂詩曲」「兵士の序楽」「シンフォニア・タプカーラ」などからの流用。
しかし今川監督は作曲家の生前に使用の了承をいただいていたそう。
過去に特撮に使用されていない一般の曲からの使用ということであるが、
そこはもう、特撮ファンにはお馴染みのメロディーが聴ける。
「残月」には2つ以上の意味があった。
「残月」も「白昼の残月」も表の太陽に対する裏の存在だった。
この物語は金田博士が造った鉄人28号の物語ではなく、2号の物語・・・。
と言ったら上品さに欠けるか。
だがこの物語の裏主人公は悲しき2号(そしてその息子)なのではないか。
(2007.0501)
ただストーリー上「1号」の存在も希薄である。
(2007.0505)
註1:正式なタイトルは「進め正太郎」。
*ちなみに4月30日にもレイトショーで見ました、この文書くにあたってもう一度確認したい部分があったので。
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