一つの地区の住民の数をN(当然全員が未感染者である)とする。 一人の感染者が発生し他の未感染者にウィルスを移す日を0とする。 その移された感染者がまた同様にその他の未感染者にウィルスを 感染させるとする。 t日後のウィルス感染者数をY(t)とし、短い日数Δtの間に感染した 者の増加数ΔYが、その時までに既に感染していた者の数 Y(t)(1-b)と未感染者数 N-Y(t)とに比例するとする。 ここでbは、感染者の治癒、あるいは死亡による減少割合である。 この時、ある比例定数a(次元は(1/人日)^(註1)を用いて ΔY=aY(t)(1-b){N-Y(t)}Δtが成り立つ。 そこでΔt→0とすると、Y(t)は微分方程式 dY(t)/dt=aY(t)(1-b){N-Y(t)}^(註2)が得られる。 これを解く。 dY(t)/[Y(t){N-Y(t)}]=a(1-b)dt 1/[Y(t){N-Y(t)}]を部分分数に展開すると (1/N)[{1/Y(t)}+1/{N-Y(t)}] これを代入すると dY(t)/{Y(t)}+dY(t)/{N-Y(t)}=a(1-b)Ndt d[ln{Y(t)}]-d[ln{N-Y(t)}]=a(1-b)Ndt ln[{Y(t)/{N-Y(t)}]=a(1-b)Nt+C ① t=0の時Y(t)=1であるので C=ln{1/(N-1)}=-ln(N-1) これを①に代入し、 ln[{Y(t)}/{N-Y(t)}]=a(1-b)Nt-ln(N-1) =ln[exp{a(1-b)Nt)}/(N-1)] ∴{Y(t)}/{N-Y(t)}=exp{a(1-b)Nt)}/(N-1) 逆数は {N/Y(t)}=(N-1)exp{-a(1-b)Nt)}+1 もう一度逆数を求めると Y(t)=N/[(N-1)exp{-a(1-b)Nt)}+1] t=0の時は間違いなくY(0)=1となっており t→∞の時は、Y(t)→Nとなり、題意を満足している。 ------------------ <註1>aは一人の感染者が一日に未感染者を感染 させる割合、例えば100人の地区で感染者一人が 1日に未感染者一人を感染させるなら1%、つまり 0.01/100(1/日)という値、N人の地区ならこの値は 0.01/N(1/日)となる。 従って、指数函数の指数のa(1-b)Nを改めてAと置くと Y(t)=N/[(N-1)exp(-At)+1] として Y(t)を求めることができる。 <註2>時間(実際は日数である)がtをn等分し dY(Δt)/dt =aY(0)(1-b){N-Y(Δt)} dY(2Δt)/dt=aY(Δt)(1-b){N-Y(2Δt)} dY(3Δt)/dt=aY(2Δt)(1-b){N-Y(3Δt)} ------ dY(nΔt)/dt=aY{(n-1)Δt}(1-b){N-Y(nΔt)} とすると 左辺を足し合わせ dtを掛けると積分になり [Σ(i=0-n)dY(iΔt)/dt]dt=Y(t) 右辺も同様に足し合わせdtを掛けると [Σ(i=0-n)aY(iΔt)(1-b)・N-Σ(i=0-n)aY{(i-1)Δt}(1-b)・Y(iΔt)]dt =a[Y(t)・N](1-b)dt -[Σ(i=0~n)aY{(i-1)Δt}・Y(iΔt)](1-b)dt ここで、Δtを限りなく0に近づければ、 aY{(i-1)Δt}≒aY(iΔt) と置いて、 dY(t)/dt=aY(t-Δt)(1-b){N-Y(t)} を得る。 --------------- 因みに、N=10万人、A=0.1(1/日)と 0.2(1/日) の場合、1年後の感染者数をグラフで示すと 図の様になる。