リーディング編:英語は欠陥語!!


★神学論争「文法の学習は必要か否か?」

英語の学習法の是非を論じる際に、必ずと言っていいほど出てくる問答が文法の学習についてです。右の方が文法の学習の必要性について事細やかに論じる理論派ならば、左の方は文法の学習は必要なく繰り返し英文を読む聞くといった実践派に分かれます。

まあ私からすれば、どっちもどっちプッチモニです。彼らの英語学習が成功した経験から言うのでしょうが、どちらも何故文法が必要なのか必要でないのか、理論的に納得のゆく形で説明してないからです。

私は英文法は、高校で学習した程度で十分と考えています。でも私は体育会系スパルタ方式が苦手な方なので(でもインハイなんか行ったことあります)、ただ聞け読め等と言うつもりはありません。

なぜ文法の学習が必要ないのか?文法が必要ないなら、どのように学習を進めていくべきなのかを、これから順を追って説明したいと思います。


★英語は欠陥語!!

英語の長文が読めない理由として、よく言われるセリフが「文法が出来てないから!」というものです。しかし我々が高校で習う文法のレベルはかなりのもので、ネイティブスピーカーも驚く程です。実際にあなたが「TOEICの文法」等の類の本を読んでも、高校の文法の教科書と大差はないはずです。それなのに何故日本人は、英語の特に長文読解が出来ないのでしょうか?

もう答えは二つに一つしかありません。

我々の頭が悪いのか? それとも英語が悪いのか? さあ、どちらだと思います?

答えは英語が悪いからなのです。英語の文法に欠陥があるからなのです。

文法自体に欠陥があるのですから、いくら文法等を勉強しても、長文など読める訳はありません。むしろ英文法の欠陥や弱点をキッチリ知っておいた方が、皆さんのリーディング力も上がるというものです。

結論から言いますと、英語は会話形式の短い文章に特化した文法形態なのです。ですからその特徴ゆえに英語で長文を書くこと自体無理があるからなのです。


★英語は簡単すぎる!?

英語で四苦八苦している皆さんにはアンビリーバボーかも知れませんが本当です。実は英語はとは語彙的に非常に学習し易い簡単な言語だと言うことです。単語の変化が少なく学習が容易な言語なのです。

大学で第二外国語を授業で習われた方も多いと思います。ちなみに私はドイツ語を選択しましたが、あまりの難解さに悶絶したことがあります。また最近何を血迷ったのか、「ちょっとフランス語でも覚えて見ようかなあ。」なんて思い、テキストをいくつか買ってみたんですが、すぐ後悔しました。難し過ぎます。

フランス語もドイツ語も何が難しいかというと、単語の変化のパターンがやたら多く覚えきれないということです。

まずドイツ語・フランス語共に、全て男性名詞・女性名詞、中性名詞なんて分かれますので、覚える量は3倍です。
冠詞も男性形・女性形の他、単数形・複数形等で異なるので、4倍です。
動詞もフランス語では主語により動詞の末尾が6種類程に変化します。6倍です!

まあ本当は他にももっと色々な変化があるんですが、これくらいにしておきましょう。どうでしょう?英語が簡単だということに納得して頂けたでしょうか?

そもそも英語はゲルマン民族がグレートブリテン島に移住してきた時に、ゲルマン民族の複数の部族の言葉がミックスされて出来た言語が基礎となっているので、その生い立ちから自然と誰にでも覚えやすく分かり易いような言語が生まれて来たのです。

それに古代英語は、識字率1%なんて言われた中世ヨーロッパに成立した会話用の言語なのです。そういう時代に民衆の中で自然発生した言語なので、文字を書くなんてことは前提になかったのです。一応そんな欠陥のある英語も、簡単・覚え易いというメリットがある以上、もう書き言葉用の語形変化の難しい言葉にはもう戻れなくなってしまったのです。

しかしこの簡単・覚え易いといった英語のメリットが、長く難解な文章を作成するとなると一転して欠点となります。実際にこれから説明していきましょう。


★英語は「てにをは」?がない。

 では英語が何故に長文を作成するのに向かないのかというと、英語には大切なものが抜けているのです。単刀直入に言うと「てにをは」がないのです。

「てにをは」とは……
「漢文を訓読するとき、補読しなければならない、助詞・助動詞・活用語尾・接辞などの古称。」のことで具体例を言えば・・ 

主語(S)
目的語(O)
この本 目的語(O)

以上の下線部の所が「てにをは」です。もう分りますよね。日本語はこの「てにをは」を使い、英語の主語や目的語にあたる部分を構成させるのです。この「てにをは」がある為、日本語は単語を多少省略しても順番を変えてもしっかり意味が通じるのです。

「私この本渡しました。」
「私この本渡しました。」
「この本渡しました。」

上の例のように単語の順番を変えても意味は全く変わりませんし、一字たりとも単語も追加していません。高校でイヤイヤという程文法を学習された皆さんには、英語でこのような芸当が出来ないことはすぐ理解できるでしょう。倒置という語法もありますが、単語の変化など面倒な手間がかかります。

実際英語の文型に「てにをは」を付けてみると……

S+V+O+O

S() + V + O()+ O(

・・・となります。この日本語にあたる「てにをは」がないので、英語では5文型なる文型があり、その単語の位置で「てにをは」を説明しているのです。関係代名詞や過去分詞等で英文が長く複雑になってくる、または自分が知らない単語があったりする、そうなるとこの英文の位置関係すなわち「てにをは」が分らなくなり英文の意味が理解できなくなってしまうのです。


★「てにをは」がない英語:ドイツ語との比較 

ちなみに他の言語、例えばドイツ語には、ちゃんと「てにをは」があります。「てにをは」に対応し、冠詞が変化する仕組みになっているのです。

英語の“the”に当たるドイツ語の男性冠詞“der”は以下のように変化します。

〜は der
〜の des
〜に dem
〜を den

古代英語は元々、ゲルマン語系のドイツ語から派生した言語なのです。それなのにドイツ語にあった「てにをは」が、消えてしまったのですから、文法的に問題が発生するのです。

専門用語が出てきますが、まあ一つ例文を読んでみましょう。

"With consumer demand waning and corporate demand continuing to be sluggish, we're expecting relatively stagnant revenue for the first half of the year," said David Bailey, a computer analyst at securities firm Gerard Klauer Mattison.

(「個人需要、法人需要共に減少している中、(デル・コンピューターの)売上も上半期弱含みで推移している」と、ガーナード・クラウター・マティソン証券のコンピューターアナリスト、デビット・ベイリー氏はコメントしている。)

   下線部の単語を見ると、辞書で引くと全部名詞のはずの単語が、いつの間にか形容詞に化けちゃっています。専門用語が出てくると、このように教科書で教えてくれない現象も出てくるので非常に困ります。

また太字の単語“demand”、これ動詞と名詞が同じスペルなんですけど、どっちか分りますか? 英語は名詞と動詞が同じスペルの単語が非常に多いのです。

こうなると自分の知らない単語があった時、名詞、形容詞、動詞の区別がつきますか?

名詞、形容詞、動詞の区別がつかなければ、英語の文法も5文型もあったもんじゃありませんし、位置関係すなわち“てにをは”も分らなくなります。これがドイツ語や日本語だったら「てにをは」が分るので、多少は単語が分らなくとも、文章の内容は理解できるはずです。


★「てにをは」がない英語:フランス語との比較 

今度はフランス語と比較してみましょうか。もう一つの例文を読んでみて下さい。

How would the retained earnings of a subsidiary acquired in a business combination usually be treated in a consolidated balance sheet prepared immediately after acquisition?

(連結対象子会社の利益剰余金は買収直後に作成される連結財務諸表においてどう扱われるか?)

下線を引いた単語全て動詞です。しかも全部過去形!!どれが主語に対応する本当の動詞(述語)なのか分からなくなるでしょう。これが長文読解を難しくしてる原因の一つです。
(今回は“be”動詞があるので、どれが本当の動詞か、皆さんもすぐ分りますよね。)

また例文の太字の”balance、これを辞書を引いてみてください。名詞・動詞両方あるはずです。

実は「てにをは」が無いのは英語に限ったことではありません。フランス語も英語同様、位置関係で「てにをは」を表すタイプの言語なのですが、フランス語は主語に対応する動詞を英語よりもはるかに複雑に変化させることにより、動詞と名詞を混同させないようにしているのです。

例えばフランス語の「話す」”parler“なら・・・

単数形 複数形
私は parl 私達は parlons
あなたは parles あなた達は parlez
彼・彼女は parl 彼・彼女らは parlent

フランス語はこの多様な動詞の変化が、ながーい文章の中で位置関係すなわち「てにをは」を教えるヒントとなり、英文の読解を助けるのです動詞の変化が多様化していると、先程の例文のように、動詞が全部過去形になったり、名詞と動詞が同じスペルのなってしまうということがなくなるのです。

語形の変化が無いことが、複雑な文章を読むのにどれだけ不便なことか分かるはずです。
という訳で複雑・難解に変化する言語の方が、長く複雑な文章を構成するのに向いているのです。


辞書の引き方を変えてみよう。

「敵を知り己を知れば、もうハッピー&ラッキー」ってことです。英語が長文に向いてない理由が分ったのですから、もう対策は立てられるでしょう。英語の文法自体が欠陥なのですから文法を勉強しても効果があるはずはありません。答えを最初に申し上げておきますと、長文を読むには文法ではなくて単語力を磨く必要があるのです。

英語自体が長文に不向きなのですから、単語力でカバーしなければいけないのです。その単語力も単語の意味を覚えるだけでは不十分です。

・その1:まず辞書を引いたら……

英語の場合、特に名詞と動詞が同じスペルの単語が多いので、品詞のチェックが必要です。この区別がつかないと完全に「てにをは」が分らなくなります。最初にチェックしてね。ついでに、セットになる名詞や動詞、形容詞も憶えておこうね。どのようなシチュエーションで使われるのか、また語源は何なのかをチェックしましょう。

・その2:動詞ならば……

動詞でも他動詞か自動詞か、ペアとなる前置詞は何か、どのような言葉を目的語とするか等をチェックしてね。まあペアになる前置詞も単語の意味さえ理解できれば、おおよそ推測が可能なもので、さほど難しくないと思います。

・その3:専門用語を覚えましょう!

専門用語が入ると極端に英語が難しくなります。専門用語を知らないと先程の例で説明しているように、単に単語の意味が分からないだけでなく、名詞・動詞・形容詞の区別がつかなくなるので、「てにをは」までも分からなくなるからです。
また専門用語を単に辞書を引いても、英文の意味が分からないケースが少なくありません。その場合は、専門的な用語を理解するだけの基礎知識が不足していると考えて下さい。辞書を引いても意味が分からないときは、日本語で読んでもわかりません。その記事に対するバックグラウンドの知識が欠けているからなのです。
ほら、日経新聞なんかを始めて読んだ時も、「なんのこっちゃ?」って感じで、何を言っているのかサッパリ分からなかったでしょう。それと同じです。

自分は単語力はあるんだけど、長文は何故か読めない〜という人は、多分単語の憶え方に問題があったのでしょう。単語の意味だけでなく、名詞と動詞の区別、動詞なら他動詞か自動詞かペアとなる前置詞は何かまで憶える必要があるのですから。

よく英語の学習法において、必ず「どの辞書が良いか?」という評論がされます。私も英和辞典のセレクトは、英語の学習する上で非常に重要だと思っています。それは英文法に欠陥がある以上、辞書は単語の意味だけを調べるものではないからなのです。


★ありがちな長文読解法について・・・

ありがちなですが、リーディングのコツとして「次に何がくるか考えながら、英文を読む」言われます。今なら皆さんもその理由が分かるでしょう。英語は「てにをは」がないので、動詞の次に来る単語(つまり英語の語順)を考えながら読まないと、文章の位置関係が分らなくなってしまうからなんですね。

例えば動詞を見つけたら、まずそれが他動詞か自動詞なのか?他動詞ならばその後に続く目的語を探しながら読む必要があります。

V(動詞)……+ O(目的語)……+ O(目的語)

またペアとなる前置詞は何かを探しながら読む必要があります。例えば“compare”なら……“to”と来るはずです。

compare(比較する)……+ O(目的語)…+to+O(目的語)


★ありがちな速読法について・・・

またリーディングのコツとして一般によく言われるのが、「英文を一気に読め」とか「止まらずに日本語に訳さずに英文のまま読め」等と兎に角早く読め、早く読めと言われたりしますよね。

これは要するに英文をスピーディーに読んで一文全体を頭に叩き込まないと位置関係すなわち“てにをは”を忘れてしまい英文の意味も分らなくなる。だから早く読めと言われるのです。実際ネイティブでさえも分らなくなります。ですから会話用・スピーチ用の英文はリーディングの英文と比べ相当に短く、主語をやたら長くするようなことはないのです。


★簡単な英文を大量に読んで。

長文読解・速読の練習法として、レベルを一段下げた辞書を引く必要がない簡単な英文を大量に読んで見てください。単語の意味だけでなく品詞や前置詞等もキチンと分かるレベルの英文なら、文章全体をスピーディーに読め一文全体を頭に叩き込めて、位置関係すなわち「てにをは」をちゃんと理解しなから長文が読めるようになります。それをちょっと繰り返すことで文法が自然と体に馴染み、TOEICレベルの長文ならば簡単にスピーディーに読めるようになってきます。

この時辞書は引かず、多少の分からない単語を飛ばして読んで見て下さい。この勉強法は文章の位置関係「てにをは」を把握する訓練なので、辞書を引いて英文を読むことをストップさせては意味がありません。この訓練が出来てない人が、「英文を後から日本語に約しながら読む」とか「英文を二度読み直す。」ということになるのですから。

よく「辞書を引くな!」とか、無茶な勉強法を言われますが、こうゆう理由からなのです。


★お薦めではなく・・・、気が向いたら読んでね!

と言う訳で、英語の文法は受験英語レベルで十分だと思っています。もしそれでもあなたが、「イヤ、私には文法の力が足りないんだわ!」と、トラウマに取り付かれているひとは、このテキストを読んでみてね。文法に対する見方がチョット変わると思います。

まあ、英語はフランス語やドイツ語と比べたら、超簡単で欠陥だらけなんですから気楽に行きましょう。

 気が向いたら読んでね。面白いよ!

◎ネイティブスピーカーの英文法 研究社

◎ネイティブの感覚がわかる英文法 NOVA

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