は・じ・め・に・
前回、「脳性麻痺者の二次障害に関する報告集」を発行してから半年間、各方面の方々から大きな反響をいただきました。「今まで知らなかったことばかりで、衝撃的だった」「大変貴重な報告であった」という感想を持たれた方がある一方、「専門用語が多く理解できなかった」「脳性麻痺者と深く関わったことのない者にもわかりやすいものにして欲しかった」というご意見、また用語の使い方等に関しての専門家の立場からのご指摘など、温かいアドバイスも数多く寄せられました。
またこの間、二次障害連続講座を三回にわたり開催し、二次障害に対する関心が高まっていることを知ると同時に、我々もあらゆる角度からこの問題に取り組んでゆかねばならないことを改めて痛感しました。
そこで今回、前回の報告集からさらに一歩進め、より皆さんにわかりやすく内容の濃いものを作ることになりました。二次障害による身体機能の低下に苦しむ当事者、障害者運動に携わってこられた方、医療関係者、行政の方々はもちろん、これまで脳性麻痺者の体の問題について深く知る機会の無かった方々、ボランティア・介助者のみなさんなど、より多くの人々に知っていただくため、「わかりやすいリポート」をめざしました。特に、脳性麻痺児を持つお父さんお母さんに、これからの日常生活の中で気をつけてゆくことによって、二次障害を早期に予防していただきたいという我々の強い思いが込められています。
リポートの冒頭には、まず脳性麻痺とはどのような障害であるのか、そして二次障害の起こる過程と、結果どのような事態に直面するのかを基礎知識という形で挙げました。二次障害の予防と治療の面では、西洋医学と東洋医学、双方からのアプローチを紹介し、日々の生活のなかで心掛けるべきことを提案することによって、自分の体の状態について正確に把握し、自分にあったケアを主体的に選択することがいかに重要であるかを述べたつもりです。また、脳性麻痺者を取り巻く医療の歴史と現状を、「自立の家」をつくる会代表の小佐野彰と医療問題担当の天野誠一郎、他スタッフ2名との対談形式で、分析しました。ここでは、障害者医療のたどってきた道、地域における医療システムの不備、医療関係者・行政側の身体障害者医療に対する認識の低さを指摘していくと同時に、我々脳性麻痺者自身も医療者任せにするのではなく、意識を変えてゆく必要があることを認識しました。「自分の体は自分で治す」という積極的な姿勢で取り組もう、あきらめずに頑張ろう。
これが、我々の活動の根底に流れているテーマでもあります。
しかし、良き理解者である専門家の方々にご協力をいただき、仲間の深刻な体験談をどんどん取り入れ、医学書と取っ組みあいながら、より実のある報告書を作り上げようとつとめたつもりでしたが、完成度としてはまだまだ勉強と努力の余地があることは否めません。これからも休むことなく勉強し問題提起を続けていく決意です。
二次障害の問題は、脳性麻痺者にとって避けては通れない重大な問題です。現に毎日激痛や機能低下に悩まされている仲間にとっては、早急に解決されることが望まれます。脳性麻痺者の「二次障害」という言葉が広く社会的に認知され、当事者(そしてそれを支える人々)・医療者・行政の三者が一体となってこの問題に取り組んでいこうという合意が形成される日をめざして、これからも歩みを進めていきましょう。
・「自立の家」をつくる会・二次障害プロジェクト実績・
『脳性麻痺者の二次障害に関する報告集』第1版発行
(1995年4 月)
二次障害連続講座(1995年5月〜6月)
第一回「日常生活からくる二次障害の前兆と予防」
講師・天野誠一郎(当会医療担当責任者)
第二回「二次障害としての頸椎症の症状とその手術」
講師・大成克弘氏(横浜南共済病院整形外科)
第三回「二次障害を防ぐ治療法について」
講師・伊藤昇氏(鍼灸師)

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