1新座市障客者雇用推進委員会としての提言
(1)障害者雇用の基本的な考え方
新座市では、障害者の職業的自立を促進するため、平成5年度から労働省の指定を受けて、埼玉県及ぴ西部地域8市(薪座市、川越市、上福岡市、富士見市、所沢市、朝霞市、志木市、和光市)とともに「地域障害者雇用推進総合モデル事業」(以下「モデル事業」という)を実施してきた。モデル事業の目的は、重度障害者、特に授産施設等の福祉施設入所者や、養護学校等を卒業後自宅で福枇的サービスを受けている障害者、小規模作業所等に通所している者、さらに移動に困難が伴う身体障害者など、これまでの雇用対策では対応が困難である、より璽度の障害者の職業的自立の促進であったが、この5年間でめざましい成果は得られてい籔い。そのひとつの理由としては、モデル事業の中心となるべき事業である「職業リハビリテーションネットワークシステム」が当初の想定通りに機能しなかったことがあげられる。職業リハビリテーションネヅトワークシステムは、雇用部門と福祉部門、保健部門における連携を図り、職業的自立を希望する施設入所者等の情報や企業の雇用関連情報を共有化し、効果的な職業リハビリテーションサービスを提供するためのシステムとして構築されたが、システムの中心となるべき「障害者情報」の登録が進まず、システムの利用者がほとんどいない状況であった。このことは単に雇用部門と福祉部門、保健部門における連携の難しさを示すだけのことではなく、従来の「職業リハビリテーションから一般雇用へ」という図式の難しさをも示している。そして、そのことは、当事者や関係者が従来の職業リハピリテーションの概念を超える新しい発想と取り組みを求めていることも示している。今後は、職業リハビリテーション等の支援策の結果、直ちに一般雇用へと結ぴつかない障害者の就労間題を、すぐに福祉行政に委ねるのではなく、労働行政・福祉行政それぞれの役割分担を明確にした上で、統合的な雇用政策を進めていく必要がある。そのためには、「障害者の就労について職場(社会)参加という観点をもつこと」「障害者だけに適応を求める(職業リハビリテーション)のではなく、職場全体、相互の間題として働く環境を整えていくこと」「障害者を受けとめていくまちづくりという視野をもつこと」などについてより積極的な取り組みを進めていくことが望まれる。

(2)重度障害者の現状
本市における学校卒業後の障害者の進路としては、一般就労・福祉工場・授産施設・デイケア施設などが、障害の程度に応じて配置されている。一般就労については、印刷関連企業などの特定業種を中心に主に中・軽度の障害者たちが働いてきているが、2〜3年で辞めてしまうこともあり、特にバブル崩壌後は離職者が増えてきている。一般就労については、自力通勤・自力職務遂行能力があり、なおかつ労働意欲がある障害者しか労働行政の対象とはされておらず、多くの重度障害者が就労できないのが現状である。

職域拡大や職種開拓、就職後のアフターケアが必要であるといわれてきているが、広域行政として窓口業務が主である公共職業安定所ではきめ細かな活動は困難である。また全国的にも数少ない福祉工場が本市にもあるが、福祉工場は基本剛こは独立採算で企業べ一スに乗せるために重度障害者を何人も受け入れることは困難である。
一方、労働行政の対象とならない障害者対策として作られてきたのが授産施設や小規模作業所であるが、精神薄弱者授産施設「こぶしの森」、精神障害者小規模作業所「さわらび」は満員、障害者地域デイケア施設「けやきの家」「くるみの木」もほぽ定員に近い状態である。
「こぶしの森」の授産訓練の理念は訓練によって」般就労へつなげることであるが、その展望はなかなか開けず、このような福祉施設を作り続けるだけではどうにもならないということで、市で「障書者自立対策研究会議」を設け今年度その報告があったところである。
福祉的就労から一般就労への道筋の困難さは本市に限らず全国的に見られる現象であるが、国際障害者年を契機に世界的なノーマライゼーションの流れの中、地城で共に学び・働くことを求める新しい動きも出てきている。学校卒業後受けとめてくれる職場がないなら、自分達で作ろうと、地域の人々と一緒に「共に働く場」を次々に立ちあげてきている。
本市では、自然食品店「よろづや」、病院売店「てまや」、「かくの木薬局」、喫茶「ココ」、ケーキエ房「あい」などもその努力の一つである。
それらの場で働く障害者はすでに50名以上となっている。「共に働く場」は働く場であると同時に地域の人々との貴重な接点ともなっている。これらの場は多くの地域住民とつながりながら、全体として緩やかなネットワークを作りつつある。しかし障害者が集中することにより、「共に働く場」そのものが地域の特別な場になっていく逆流的な現象も指摘され、改めて地域の様々な、普通の職場(働く場)への関わりを模索しはじめたグループも出てきている。
ここ1〜2年、授産施設や作業所でも施設内作業の限界を超えるべく、市役所での紙資源ごみ回収作業や、地域での古紙・空缶回収、市内企業での職場実習など積極的に社会へ出る努力をはじめている。また地域デイケア施設を「作業所」ではなく、最初から「障害者地域活動センター」として位置付けた「ふらっと」も今後の「地域デイケア施設」の試みの一つである。

(3)障害者憂用推進のための提言

@広報・啓発活動の充実(事業主や社会一般の理解と協力の促進)
障害者に雇用の場を直接提供することができる事業主自らが、障害者の福祉の向上を社会全体の課題としてとらえ、社会連帯という理念に立って障害者の雇用に積極的に取り組むことができるよう、啓蒙・啓発に努める。また、障害者も他の一般市民と同様に社会の一員として種々の分野で活動できるというノーマライゼーションの理念のもとで、障害者も経済社会を構成する労働者の一員として社会参加することは極めて自然のことであり、障害のある人もない人も同じ職場で一緒に働く伸間として、また、サービスの提供者であり、また同時に受給者として共にかかわることができるよう、障害者の社会参加や就労に対する社会全体の理解促進に努める必要がある。

A職業リハビリテーション実施体制と社会環境の整備

「訓練を受けて一人前になったら就労」という図式がこれまでのやり方であったが、授産施設や作業所で10年も15年も訓練を受けても就労に結びつくのは難しく、障害’者だけに適応を求めるこれまでの職業リハビリテーシヨンの考え方を変えない限り、重度障害者の働く道は闘かれない。「埼玉県障害者雇用推進基本計画」にも「障害者の福祉の向上を社会全体の課題としてとらえ」と示されているように、障害者が職場に入り働くことを、障害者だけの課題とせずに職場全体、社会全体の相互の問題としてとらえ、働く環境を整えていくことが必要である。

B障害者就労援助センター(仮称)設立の研究・検討

重度障害者が職場生活を考えるとき、体力的にも、通勤の便を考えたときにも職住隣接を求めざるを得ず、実際に働いている障害者の多くは市内の中小企業を職場としている。ところが現行の労働行政は、公共職業安定所を中心にした広域行政であり、極めて地域性の濃い障害者雇用をきめ細かく進めるのは困難である。特に本市には障害者雇用促進法の雇用率対象外である63人未満の企業が圧倒的に多く、雇用率達成を進める公共職業安定所の指導の効果が少ないともいわれている。また職業リハビリテーションの専門機関である埼玉障害者職業センターでも、最近では職域開発援助事業による現場実習を重視してきているが、センターが県内1か所ということもあり地域からかけはなれてしまっている。就労を希望する障害者に対しては、公共職業安定所を紹介するか、福祉的就労の場を措置する方法しかないのが現状である。つまり地域の職場を細かくあたり、実習をコーディネートし、就労を援助する機関がどこにもないということが大きな問題である。福祉と労働の谷間を埋めるために実際に行動する機関(就労援助の窓口)を本市に設立することが強く求められている。市や公共職業安定所、市内の福祉施設等との密接な連絡をとりつつ運営にあたる障害者就労援助センター(仮称)設立の研究・検討が望まれる。

C全市的な取り組みに(協力者の拡大とネットワーク)

次々に学校を卒業してくる障害者を地域社会で受け入れていく場は一部の関係者の思いや努力だけでは限界もあり、家庭や福祉施設関係者だけのつきあいしかない重度障害者の現状を超えていくことは、「福祉のまちづくり」を目指している本市にとっても、福枇の中身を問われる重点課題といえる。障害者のための特別の場を作り続けるのではなく、広く市民の理解・協力を求め、市内の様々な職場での障害者の社会参加へと流れを変えていく必要がある。直接就労・雇用ができなくても、職場体験・職域拡大・就労支援方法などは実際に働いている現場の人たちに、障害者とつきあいながら考えてもらうことが一番現実的で効果的な方法である。実習から雇用まで簡単ではないが、パートやアルパイトなど多様な勤務形態、また介助付き就労やグループ就労など働き方の工夫、支援方法も試行錨誤の過程で十分に研究・模索されていき、様々な職場参加の可能性が見えてくると思われる。

D市役所等公共施設での職場実習の実施
広く市民・市内事業所に協力要請していくためには、行政が率先して職場参加へ向けた取り組みをしていく必要がある。大企業の少ない本市では市役所から職場実習を積んでいくことは、様々な民閥事業所等へ実習要請するための貴重な体験となる。障害者や家族にとっては、公共施設は人的にも施設的にも安心であり、初期実習の場として、一方市職員にとっても、これまで障害者との接点が少なかったことを考えれば、職場でのつきあいは「福祉の表ちづくり」を進めることにもなる。

E就労支援策の研究と実施
福祉的就労から一般就労へ移行できないのは、福祉と労働の谷間を埋める制度がないことであり、障害者の職場開拓、実習から就労へつなぐために、必要な制度を研究していく必要があり、障害者就労援助センター(仮称)や職場実習(体験)事業、雇用助成金事業など現行制度でも使えるものは活用し、不十分な部分は新規事業化していくことが必要であり、そのためには国や県にも市の立場から積極的に働きかける必要がある。
F就職後の総合支援体制の強化
これまでの学校進路指導や労働行政においては、就労させることに重点がおかれ、就労後の取り組みは遅れており、「働くことができても働き続けることはできない」という実態を生み出している。離職したあと在宅生活を余儀なくされている障害者も多く、そのことが福祉的就労の場にある本人や家族にとっては、就労意欲の低下にもっながっている。福祉的就労と一般就労を二者択一的に選択するのではなく、福祉施設に在籍しながら、実習から就労という具合に広げていける柔軟さが求められている。重度障害者の就労を考えたとき、一律な働き方を押しつけることではなく、福祉も労働も必要なのであり、その人なりの働き方、働くことを含めた暮らし方を本人が模索しているときには、それに共につきあっていく姿勢が求められている。そのためには生活と労働を密接な連携のもとに援助できる行政を含めた幅広い地域のネットワークを作っていく必要がある。

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