No.119
ネオ切鮫劇場2・帰国第一戦スペシャルタッグマッチ


*このコーナーはフィクションです。


アナ「リング上はスペシャル・タッグマッチ、『黒沢』帰国第一戦です。
タンパのカール・ゴッチのもとへ行って、どんな技を習得してきたか、『黒沢』!」
解説「ゴッチは技の種類では世界一といわれていますからねー、期待できますねー」

アナ「リング上では『敬礼』対『宇野』、淡々とグランドの攻防が続いておりますが、
カール・ゴッチはですねー、一説によりますとですねー、
リング上で見せますジャーマン・スープレックスなどの大技のほかにもー、
なんかこう裏技的な動きも多数習得している、ということをわたくし聞いているんですがー」
解説「そうですねー、私の聞いたところによりますとですねえー、
ゴッチがですねえー、あるグランドのうまい選手とスパーリングをしたことがあるんですよー」
アナ「はいー」
解説「で相手も強い選手だからお互いなかなか関節が取れなくて決着がつかない」
アナ「はいー」
解説「それでゴッチがどうしたかといいますとですねえ、相手のおしりにですねえ、
まあおしりって言ったら変ですけどね、
おしりの穴ですよね、そこに指をブッ刺したそうなんですよ」
アナ「はい」
解説「それで相手が痛くてびっくりしてしまうわけですよ」
アナ「はい」
解説「そこで関節を決めてしまうわけなんですね」
アナ「うーん・・・」
解説「プロだから、どうしても勝とうっていうか、そういう気持ちがあるんですねえ」
アナ「うーん・・・」
解説「多少汚い手を使ってでも勝たないとなめられる、って思いがあるんですねえー。」
アナ「うーん・・・まあそういった、そのう、『汚い手』ですかー」

解説「この間引退した木(ピー)がですねえ」
アナ「はい・・・」
解説「まだ若いころなんですけどね。アマレスからですねえ、長(ピー)が入ってきたんですよ」
アナ「はい・・・」
解説「それで道場でスパーリングやったんですね」
アナ「おーっと、リング上は、『敬礼』が、『敬礼』が『黒沢』とタッチ、『黒沢』が入りました!」
解説「アマレスやってましたからねえ、長(ピー)は自身満々なわけですよ」
アナ「はいー!さあ、『黒沢』と『宇野』という局面になったー!」

解説「それでですねえ、木(ピー)はゴッチの弟子ですからねえ!
師匠と同じ技を使うわけなんですよ!」
アナ「はいー、おーっと!激しいバックの取り合いからグランドの展開になった!
『黒沢』対『宇野』!注目の組み合わせ!
そういえばですねえ、『宇野』の師匠は長(ピー)ですねえ、何か因縁を感じさせる組み合わせであります」
解説「いいですよう!」

アナ「グランドでゴッチ直伝の関節技を見せるか、『黒沢』!
『宇野』は両手をついて堂々ディフェンスの構え・・・おっと、おーっと!『宇野』が!
『宇野』がリング下にエスケープ!」
解説「どうしたんですかね突然!」
アナ「『宇野』場外でうずくまっております!いったい何があったのでしょう!?」
解説「『えつなか』ですね!」
アナ「パートナーの『えつなか』、心配そうに『宇野』の元へ駆け寄ります。
それにしても『宇野』、なんとも不可解な状況。リング上では『黒沢』が仁王立ち!」

解説「『宇野』が何か言ってますよ!」
アナ「『宇野』があー、リング上の『黒沢』を指差してえー、何事かアピールう、
しかしレフェリーがあー、『宇野』にリングインをうながしております、『宇野』何とかリングイン」
解説「なんか『宇野』の様子がおかしいですね、表情が違いますよ!」
アナ「どうしたわけか、渋い表情の『宇野』。またグランドの展開からー、
再び『黒沢』がバックを取ったー、おーっと!」
解説「今大きい声でましたね!」
アナ「『宇野』が自分のコーナーに下がりました!しりのあたりを・・・」
解説「しり押さえてますね!」

アナ「いま『宇野』、『えつなか』にタッチ!『えつなか』入りました。『宇野』は自軍のコーナーでダウン、
『黒沢』はー、不気味な笑みをたたえております!」
解説「『宇野』苦しそうですねえ」
アナ「『黒沢』がいったい何を仕掛けたか、現段階では不明ですが、いったい、そのー」
解説「『えつなか』がいきましたよ!」
アナ「『えつなか』、キック!キックから、張り手!張り手、チョップ、張り手張り手張り手!
『黒沢』をロープに押し込み、ロープに振った!
ヒップアタック!ヒップアタック!『黒沢』ダウン!沸き起こる歓声!」
解説「いいですよ!『えつなか』いいですよ!」
アナ「『えつなか』なおも、『黒沢』を起こしてー、再度ロープに振ったー、
ヒップアタック!ヒップ、おーっ!おーっと!『えつなか』ダウン!技を仕掛けたはずの『えつなか』がダウン!」
解説「『えつなか』もしり押さえてますね!」
アナ「おーっと!ここで『黒沢』原始人ダンスー!これはー、もしかするとー、『黒沢』―」
解説「これは・・・ゴッチ直伝の『汚い手』を使ったのかもしれませんねえ!」
アナ「うーん、今私もそう思ったところであります、『黒沢』はですねえー」
解説「ええ」
アナ「『黒沢』はですねー、ゴッチにいったい何を教わってきたんでしょうかねえー!」
解説「うーん・・・」
アナ「『黒沢』、手を組んで、人差し指を立ててピストルのようなポーズ!」
解説「ピストルというよりは・・・」
アナ「おーっと、『敬礼』だ、『敬礼』がー、パートナーの『黒沢』に詰め寄るような状況です!」
解説「なんか仲間割れっぽい雰囲気ですねえ!」
アナ「『敬礼』が『黒沢』に何か言ってますが、おっと、『敬礼』が『黒沢』を張った!
やはり仲間割れかー、『黒沢』張り返す、バックを取った、持ち上げた、
ジャーマンか、『敬礼』こらえる!こらえる、『黒沢』手を離した、
ああーっと!勢いをつけてー!」
解説「突き刺しましたよ!」
アナ「『黒沢』うしろからー、『敬礼』のー、そのー、うしろの方をー、ゆびでー、
二本あわせたゆびでー、ダウンしております『敬礼』!場内は騒然とした雰囲気」
解説「レフリーがゴングを要請しましたよ!」
アナ「おーっと、ここでー、ゴングが打ち鳴らされましたあー、どうやらノーコンテストのようです!
『黒沢』勝ち誇ったように、また原始人ダンス!」
解説「困っちゃいました」
アナ「どうやらお別れの時間がやってまいりました、最後までお伝えできません、大変残念ですがー、この辺で失礼します、さ

(初出:旧演撃カフェ2002・0318、671)

*今回再録にあたり登場人物名、内容を一部変更しました。オリジナルを読みたい方は演劇カフェのバックナンバーをご覧ください。


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