No.206
「バリツ」名探偵S.ホームズは 柔術の達人だった?

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「バリツ」なる単語について千里眼に質問してみると・・・。

『「バリツ」とは
コナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズ・シリーズ中で
主人公ホームズが使うとされる武術、または柔術。
天神真楊流、らしい。これって何の流派だろう?
原作発表当時イギリスで紹介された日本の護身術bartitsu「バーティス」が
baritsu「バリツ」と書き換えられたのが始まりらしい。
それにしても現在の日本で該当する格闘技名がない。
一部では「相撲」説もあるらしい。ホームズが褌(ふんどし)しめて練習したのか。
頭文字がVじゃないから、バーリ・トゥードの書きまちがいではないらしい。
「音」で判断して千里眼は長いことバーリ・トゥードのことだと信じていたし、
格闘技のファンなら、その方がよさそうな気がするのだが。
伊吹秀明氏の作品「シャーロック・ホームズの決闘」では
棒術ラ・キャンを駆使する宿敵ルパンをスリーパーで絞め落とす、
というシーンがある。
現在出版されている新潮文庫では、「柔術」と訳されているようだ』


『』内は推理小説にも造詣が深い千里眼からのメールである。
ホームズが活躍する時代は19世紀であるから、
元講道館の前田光世が1914年にブラジルに渡り柔道を広め、
その弟子の一人だったガスタオン・グレイシーがいわゆるグレイシー柔術の開祖となる時期にはそぐわない。
ということで「バリツ」=「バーリ・トゥード」ではないのだろう(この説が一番夢があるような気もするのだが)。
天神真楊流というのは古式の柔術の流派で、現存する。
開祖は磯又右衛門正足。伊勢松坂に生まれた紀州藩士。
のち柔道の開祖になる嘉納治五郎も起倒流柔術の前に天神真楊流を習ったそうだ。
さて、「バリツ」をウィキペディア(ネットのフリー百科事典)で調べてみると、あるんですねこれが。


『バリツ(baritsu)は、シャーロック・ホームズシリーズに登場する東洋武術。
1894年の「最後の事件」でシャーロック・ホームズは宿敵・モリアーティー教授と揉合いになった末、
スイスのライヘンバッハの滝に2人とも落ちてしまったということになっていた。
アーサー・コナン・ドイルはファンの要望に応えて続篇を書くことになり、
ホームズは死んでいなかったことにする必要がでてきた。
そこで、ホームズには「バリツ」という日本式の格闘技(the Japanese system of wrestling)の心得があって、
それでモリアーティー教授を投げ飛ばしたのだ、と「空家の冒険」の中でワトソンはホームズに説明している。
バリツとは、柔道(または柔術)のことであるというのが通説となっている。
当時、バートン=ライト(E.W.Barton-Wright)という人が日本の柔術の技法を取り入れた護身術を
"bartitsu"と名付けてロンドンで教えており、雑誌に記事を掲載していた。
その雑誌にはドイルも小説を掲載していたので、ドイルがその記事を読んでいた可能性は高く、
"baritsu"とは"bartitsu"の誤記であるとする説が有力である』(『』内ウィキペディアより引用)
「天神真楊流」は伊吹秀明氏の前掲書に記述がある。

ここからは切鮫の推理など。
まず名称だが
"bartitsu"バーティスは「バートン・スタイル・ジュウジュツ(柔術)」の短縮形ではないでしょうかね。
バートンBartonの前半の「bart-」と柔術jyu-jyutsuの後尾「-jyutsu」がジツjitsuに音変化して接合したら・・・。
ほら、"bartitsu"バーティスになり?そうでしょ?ならない?・・・
でその"bartitsu"がタイプのミスプリントで t が一つ抜けてしまい"baritsu"バリツになった。
確かミスター・ポーゴの「ポーゴ」も「トーゴー」TOGOのTがミスプリントでPになってしまい、そのままポーゴになってしまった、とか。
さらに一説にはグレート・ムタの「ムタ」も「ムトー」MUTOの最後のO(オー)がAになってムタと読まれたとも。
うーん、外国の連中はミスプリに大らかでいいよなあ、おいらは頭にきたぞー。

技術面では、ホームズはバリツだけではなく19世紀当時のボクシングでも相当の達人であったようだ。
ホームズ探偵が活躍したとされる19世紀当時はまだボクシングはベアナックルの時代である。
最後のベアナックル試合は1889年7月8日、ミシシッピー州リッチバーグで行われた、
ジョン・L・サリバン対ジェイク・キルレインの一戦(註1)。
ホームズが戦うシーンがある映画などの映像を見ると、背筋を伸ばして顔を後ろに引いて腕を前に出す、
明らかに近代のグローブボクシングのクラウチングスタイルとは違った構え。
このブリティッシュ・ベアナックルたる19世紀ボクシングと、古式柔術(天神真楊流か?)をベースにしたバリツを駆使して戦う名探偵ホームズ、ということだ
(ついでに言えばホームズはフェンシングも達人の域とか)。
となれば蹴りこそないが手による打撃と投げ、関節技を使えるホームズ式「バリツ」こそ19世紀当時ヨーロッパ唯一の実戦的総合格闘技たりえたのかも知れない。
そして一時期天神真楊流に学んだ柔道の開祖嘉納治五郎の、弟子の前田光世がブラジルに渡り教えた技術がブラジリアン柔術へと進化し、
その過程のなかで流派間での打撃ありの決闘ルールが「バーリ・トゥード(ポルトガル語で全てが有効)」と呼称された事を考えれば
バリツとバーリ・トゥードはルーツを同じ天神真楊流に求めることのできる、遠い親戚のような関係とも言えなくもない。
さすればバーティス、バリツ、シャーロック・ホームズ、天神真楊流、嘉納治五郎、前田光世、グレイシー柔術、バーリ・トゥード・・・世紀を渡るこの流れ、まさに格闘ロマンと呼べるのではないだろうか。

(2005.0605)

註1:現行グラブ着用のクインズベリー・ルールも同時期混用され、
サリバンは1885年D.マカフニーで同ルールを経験した模様。

参考:伊吹秀明「シャーロック・ホームズの決闘」
凄くて愉快な拳豪たち 1986年ベースボールマガジン社
サイト古武道
引用:ウィキペディア



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