No.218
技:ドリー・ファンク・ジュニアの「アマリロ・スルー」


DVDで発売されている日本プロレス時代の猪木対ドリー・ファンク・ジュニアの大阪・福岡2試合を見た。
意外と大技が少なく、ドリーの足殺しと猪木の腕攻めがグラウンドで静かな火花を散らす攻防。
しかし後半になって見せたドリーのロープ際での動き、大阪・福岡とも各1回ずつ。
自らロープを背にして猪木を誘い込むドリー。
猪木の首を左手で抱え込むようにすると右手でロープを握って後方にジャンプ、ロープの一番上にちょこんと座るような体勢になってから
自ら後ろの場外に落ち同体で相手も場外へ落とす。
技と呼べるのかこの技。

名前も無いようなのでとりあえず「アマリロ・スルー」と命名。
ドリー式としないでアマリロ式としたのは、米中西部地区でファンクスと似たようなスタイルのD.マードックが
昭和50年の全日本プロレスオープン選手権において同じムーブを披露した写真が残っていて
必ずしもドリーしかこのムーブを使わなかったと言うことではなかったようなので
(もっともドリー以外の選手が使った形跡は筆者の確認では今のところこれだけである)。
この技のポイントは右手でロープを離さない限り自分は場外に落ちずエプロンに残れるという点である。
従って両者ともに1回転するものの自分は右手の命綱によりダメージが少なくリングへの生還が早い、つまりリスクが少ない。
ロープを掴む右手は逆手。手首の内側がリング内を向く掴み方、試してみれば理解できるが逆の掴み方ではうまく回転できない。結構高度な技である。
さてこの技、1990年11月全日本の帯広大会の世界最強タッグリーグ戦の公式戦で
G馬場、アンドレ・ザ・ジャイアント組と対戦したファンクスのドリーが馬場に仕掛け、
場外に落ちた馬場が左大腿骨亀裂骨折の重傷を負い長期欠場に追い込まれている。

攻守のスタンスを切り替える一瞬の技、と思っていたら実はかなり危険な技だったのである。

(2005.0730)

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