No.3
国際プロレス第6回IWAワールドシリーズ、M井上への謎の冷遇


↑別冊ゴング昭和52年3月号より
井上対G.ジョー


まず説明。国際プロレスの「第6回IWAワールドシリーズ」は昭和52年2月27日開幕の同名のシリーズ第1戦(東京・後楽園ホール)
〜最終第22戦(同年3月26日、東京・蔵前国技館)の間でIWAタッグトーナメントとともに争われた。
タッグトーナメントには当時王者組だったG草津、M井上組が返上したIWA世界タッグ王座がかけられたが
同チームは開幕戦1回戦のM・バション、G・ジョー組戦で敗退、第21戦の横浜文化体育館で決勝戦が行われ
クルト・フォン・ヘス、B・J・クイン組がA浜口、寺西組を破って優勝と同時に新王座奪取。
ワールドシリーズ優勝戦はR・木村とM・バションとのあいだで最終戦の蔵前で行われ、木村がバションを逆エビ固めで下し2度目の優勝を果たした。
また同日急遽IWA世界タッグ王座の防衛戦が行われG草津、A浜口の新コンビが王座奪取、ベルト海外流出を水際で防いだ。

千里眼
「複雑だ。あまりにも複雑なストーリーだ。当時、わかっているひとはどのくらいいるんだろうか。
結局やることは木村対バションの流血戦じゃないですか。もっと簡単なストーリーでいいんじゃなかったのか。
共倒れになるのはバションとジョーじゃないのかな。なんで井上なの?」

切鮫
「まったくその通り。決勝戦当日に井上のブロックだけ公式戦があるのはあまりにも木村に有利。
では前言を撤回してこんな説はどう?
実は裏話があったのではないかと思われる。
その主役は井上ではないかと思っている。
井上はこの後しばらく海外へ行くんですよ。
まずタッグトーナメントで当時タッグ王者組だった草津と井上が王座返上して一回戦
から参加して優勝チームが新チャンピオンになることになった。
まあ現役王者がトーナメント開催に際してタイトルを返上して優勝者が新王者にな
る、っていうのはままあるパターンだわなあ。
で草津-井上組はバション-ジョー組に負けてしまう。
バション-ジョー組っていえば全日でいうとブッチャー-シーク組ぐらいのインパクト
ありますよね。当然決勝に出れば盛り上がりますよねえ。
それが次の試合で仲間割れして負けちゃうんだよこれが。
でも日本人チームが優勝すればなんでもないですよねえ。
ところが優勝はクイン-ヘス組。
このままではベルト海外流出の大ピンチ!
で急遽決勝の蔵前大会でクイン-ヘス組のタッグ初防衛戦が執り行われることとな る。
でも井上は公式戦を消化しなければならないのでタッグ戦には出られない。
いや出られないこともない。公式戦消化したんだけど敗退して決勝戦出場の権利を
失ったということになれば。なればっていうかすれば。
でも公式戦最終の相手はジョー、流血ファイターでーす!当然、流血戦必至でーす!
で案の定公式戦最終戦は大流血戦になりました。この試合自分結構好きなんです。
テ レビで見ましたが解説者が「こうなったら金網がないだけでデスマッチと同じですね !」
と言ったのをよく憶えています。たしか菊地さん。
お互い膝をついたまま向き合ってボコボコにぶん殴ってました。
最後タックルで同時ダウン、両者KO。
で井上は負けはしませんでしたけどドクターストップで決勝進出はなりませんでし た。
タッグ戦は草津-浜口の新コンビがタイトル奪取でベルト海外流出を阻止、めでたし
めでたし。
で井上が海外流出しちゃった。

総合すると
1・草津と井上の仲が悪くなった?
2・会社としては凱旋帰国した浜口を売り出したかった(井上と浜口の入れ替えとい うのも成り立つなあ)。
3・仮説だが、何らかの理由で井上に日本にいてもらいたくない状況が生じた。
4・仮説だが、井上向きのテクニシャン系の外国人大物レスラーが呼びづらくなって きた(木村向きの流血ファイターばっかりになってきた)。

そういうことで会社としては井上を海外に追い出すための用意周到な作戦を練った。
そのためにはまず井上に丸腰になってもらう必要があった。
でまず王座はひとまず返上して新チャンピオンを決定することになる。
でタイトル戦には井上が出られない状況を作る。
でバションとジョーには井上戦(タッグトーナメント一回戦を含む)で頑張ってくれ たらボーナスが出るように配慮する。
ジョーはカチドン大盛二つで済むから超安上が り。
無冠になればいいにくい話もしやすいってことですよ。
つまりは第6回ワールドシリーズは井上対バション、ジョー、草津、吉原社長という
一方通行のルーザー・リープ・タウン・マッチという図式だったのではないかと。
社長室でかなりもめたんじゃないだろうかね。
何かワールドリーグ戦で猪木を優勝させない包囲網があった時を思い出した。
以上、勝手な想像です。」

(2002・7・24〜25の千里眼氏へのメールを元に再構成、2003・0806)

文中の主な試合の記録(月刊ゴングより)

「第6回IWAワールドシリーズ」
第1戦 昭和52年2月27日 東京・後楽園ホール

10.IWAタッグトーナメント1回戦(30分1本勝負)
○ジョー、バション(体固め、10:26)草津、井上●

第21戦 3月25日 横浜文化体育館
7.IWAワールドシリーズBブロック公式戦(30分1本勝負)
○バション(リングアウト、9:54)井上●

8.同Aブロック公式戦(30分1本勝負)
○木村(体固め、18:11)草津●
*この結果Aブロックの決勝進出者は公式戦全勝の木村に決定。

9.IWAタッグトーナメント決勝戦(60分1本勝負)
○クイン、ヘス(アルゼンチン式背骨折り、16:45)浜口、寺西●
*クイン、ヘス組が優勝と世界タッグ王座奪取。

第22戦(最終戦) 3月26日 東京・蔵前国技館
7.IWAワールドシリーズBブロック公式戦(30分1本勝負)
井上(両者カウントアウト、15:20)ジョー
*この結果Bブロックは1位ジョー、2位バションと井上、となったが
ジョー、井上が負傷により試合出場不可能のためバションが決勝進出。

8.IWA世界タッグ選手権(61分3本勝負)
○草津、浜口(2-1)クイン、ヘス●
1.○ヘス(体固め、12:56)浜口●
2.○日本組(反則、3:05)外人組●
3.○浜口(体固め、2:34)ヘス●
*草津、浜口組が王座獲得。

9.IWAワールドシリーズ決勝戦(60分1本勝負)
○木村(逆エビ固め、16:09)バション●
*木村が2度目の優勝。


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