No.275
切鮫的新日本プロレス再生プラン



*この文章は2006年2月頃夕刊紙ナイガイの「新日本再生案」の読者募集に応じてメールで投稿した文に一部修正を加えたものです。

かつて「ストロングスタイル」「キング・オブ・スポーツ」を標榜しながらも
強さを見せるという点では総合格闘技の台頭を許し、
顧客を満足させるオーソドックスなプロレスという面ではノアに先んじられてしまった新日本プロレスの再生の手段は
「総合格闘技ではないリアルファイトのプロのレスリング」へのスタイル変更である。

そもそもは'89年のソ連戦士登場の時点でこの大幅なスタイルの変更を行なうべきだった、と思う。
さすれば総合格闘技の台頭後五輪メダリストが総合に流出する事態も防げたと思う。

総合は'93年UFCの開始当時は素手、時間無制限勝負など過激な要素が多く逆に禁じ手が少なく
各大会がこぞって「過激なルール」を売り文句にしていた時期があったが
現在ではテレビ放送コードの問題(バイオレンス性)や
安全性を重視したルールが普及して
グローブ着用、時間制限などでこれ以上過酷なルールが登場するとは考えにくい(ミャンマーラウエイなどは別として)。
もはや「ルールの過激性」を大会の売り文句にする時期は終わった、と思う。
そしてより禁じ手の少ないルールの勝利者イコール最強という図式も現在それほど評価されてないのではと感じる。
今後はルールを限定してそこからより「魅せる」ためのルールを作成してスペクテーター・スポーツを追及してゆくべきである。

さて、そこで「総合格闘技ではないリアルファイトのプロのレスリング」である。

台本なしのリアルファイト、シングルマッチ主体、厳正なレフェリング、反則・凶器攻撃・場外戦は厳禁。
反則を犯した場合はファイトマネーからの罰金の差し引きを徹底。
レスリング勝負であるから、レスリング系以外の技で仕掛ける側にリスクのない技は禁止。
したがって手、拳、ヒジによる打撃は反則。
また総合との差別化を図る上で足・ヒザによる打撃攻撃も禁止。
関節技・絞め技は有効、ロープブレークは1回まで。2回目のロープブレイクでTKO負け。
フォールカウントは2カウントで勝利。
その昔後楽園Hで見たJWPでの故P麻里子対D関西の2フォールマッチは大変スリリングだった。
スピーディーな試合、早期決着が見込まれる。
UWF系の団体はフォールという概念をおざなりにしていた感じが強いが、本来相手をフォールしてこそレスリング。
長時間ガード・ポジションにいて下から関節を狙っている相手は押さえ込んでフォールしてしまえばいい。
そして自分の頭越しに相手を投げて、相手の肩あるいは背中をマットにつけた場合は「一本勝ち」。
つまりスープレックス系の技が一回きちんと決まればダメージにかかわらず勝利。柔道の「一本」のイメージ。
リフトアップを軽く見せて何度も脳天から落とし合う試合は選手に多大なダメージを与えかねない。
そして観客の「大技連発→カウント2.9の応酬」を要求するインフレには終わりがない。
大技は美しく決まれば一試合一回でいい。決着が早い。
「簡単に決まっちゃったからもう一回」なんてシュツエーションはもちろんオミット。

UWFやリングスKOKの試合を想起させるルールではある。
これで客が集まるのか?といわれれば「予想はつかない」あるいは「集まらないかもしれない」と答えるしかない。
しかし冒頭に述べたように総合に参入するわけにも行かず(アルティメット・クラッシュの失敗)、
既存のプロレスではもはやノアに追いつけない現状を考えると、新しい道を切り開くしかないと考える。
「総合格闘技ではないリアルファイトのプロのレスリング」
ぜひコーチ&運営ディレクターに高円寺のB.ロビンソン氏を招聘するべきだ。
そして五輪メダリストらがプロ転向後にすんなり選べるリングを構築していくことである。
無論長い時間がかかることであろう。
しかしプライドだって最初の頃は観客が「膠着」や「ストップドントムーブ」を理解し我慢することが出来なかった。
「ストップドントムーブ」からのリング中央での再開に何度失笑がとんだことか。
だが次第に観客はそういう「つまらない時間」を乗り越えたノックアウト決着や関節技などによる一本勝ちに魅了されるように自ら学習した。
新日本も長く生きたいのなら、既存のスタイルから脱却した新しいスタイルの確立(もちろんリアルファイト)を考え、観客を育てていくことを考えるべきである。

(2006.0608)

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