No.335
幻の対戦3.力道山vs大山倍達の番外戦
日本プロレス黎明の父である力道山と、極真空手創始者の大山倍達が試合ではないが激突する寸前まで行ったという話。
まずは昭和29年12月22日の蔵前国技館、「プロレス日本選手権試合」力道山対木村政彦戦のリングサイド。
試合は力道山が木村の股間に軽く当たった蹴りを「急所攻撃」と判断したか激怒。
空手チョップ、張り手、蹴りで木村を戦闘不能に追い込んでの凄惨な勝利。
「遠くで見ていた人には、あまりにも豪快な、そして近くで見ていた人には、あまりにも無残なこの結末が、
力道山の二度目の右手があがってついたとき、リング下ではもう一つのトラブルが起こりかけていた。
これはほとんどの人が気がついていなかったろう。
木村サイドに"喧嘩空手"で鳴る大山倍達がいた。
大山は拓大で木村の後輩に当たる(註1)。同じ格闘技に生きる者として、木村に敬意を表していた。
『そんなバカな判定があるか。これはプロレスじゃない。喧嘩ではないか。喧嘩ならおれが買ってやる』
と、ぱっとオーバーをぬぎ捨て、上着もぬいだ。いまにも躍り上がらん気配に、立ノ海や大坪があわてて羽交締めにして、『よせ、よせ』ととめた。
もし、そのとき、大山が躍り上がり、もし力道山が、『よし、来い』と身構えたとしたら、おそらく別の血がマットの上に散っていただろう。
(中略)
どちらにしても、万余の観衆を、そしてテレビを茶の間で見ている何千万の目を覆わせたに違いない。
プロレスの道も、そこで大きく曲がってしまっていたかもしれないのだ」(「」参考資料1より)。
劇画「空手バカ一代」でも大きく取り扱われている有名なエピソードである。
ただ自分が以前千里眼氏から借りた力道山対木村のビデオを見た限りは、大山のリング下の様子は確認できなかった。
これ以前にも雑誌の対談で力道山と大山が腕相撲をやることになり、
両者の顔をたてて引き分けで終わるはずだったが
写真のシャッターが切られる瞬間、力道山が一気に力を入れて攻めて勝ってしまった、という文章を読んだ記憶がある。
これも「空手バカ一代」で同様のシーンがあるが劇画の中では引き分け。
参考資料2によるとこの対談は1954年7月特別号の「オール讀物」でのことで
大山が言うには、木村に奇襲を仕掛けたのもこの時の腕相撲と同じ手口だということ。
ということで大山は力道山に並々ならぬ怒りを持っていて、真剣に力道山への挑戦状をマスコミに配ったという。
しかしプロレス興行に関わる裏社会や民族団体などの仲介で両者は和解したそう。
この辺の話はこれら組織の暗躍がありこういう話はこのサイトにはふさわしくないと考えるのでここまでとし、
もっとこの件について知りたい方には参考資料2の購読をお勧めする。
最後に、資料3による両者に共通の友人だった現北朝鮮地方出身のアコーディオン奏者、清原稔氏の文章。
「2人の親友については、強く心に残るエピソードがあるという。
なんと力道山さんと大山倍達さんが戦ったというのだ。
『2人が成功し、銀座のクラブで飲めるようになったころだ。(中略)
お互いが好みのホステスを巡って『この女はオレにほれてる』から始まって
『オレのほうが強い』と言い合いになったんだ。で、ボトルをテーブルに叩きつけて戦うポーズをとったんだ』
まさに一触即発。もし2人がケンカしたら、この世に止めることのできる人間はいないだろう。
『ライオンとトラが向かい合ってるんだ。こりゃヤバイと思って、
『同じ民族なのに、なんで争うんだ。
気が済むならオレを殴れ。もうお前らとは二度と付き合わんぞ』
って言い続けたら、何とか止まった』
今となれば、2人の対決はぜひとも見ておきたかったという気持ちもあるというが、
当時は両方死ぬかもしれないという恐怖心で必死に止めたという」
>なんと力道山さんと大山倍達さんが戦ったというのだ。
戦ってないじゃん(笑)。
「戦う寸前」ですよね?
大山氏が成功したっていうのはいつ頃のことなんでしょうか。
思うに、アメリカ遠征後か、田園コロシアムでの牛との対戦後にギャラが入った頃だろうか。
しかし稀代の英雄2人が取り合ったホステスさんってどんな方だったのだろうか?
すごい美人だったのか?興味ある。
しかし
この話は事実なのか?だが裏社会がらみよりもより2人の生身の人間である部分が見えて
木村戦後や腕相撲の絡みよりもややユーモラスなエピソードではある。
(2007.0910)
註1:参考資料2によると大山が拓大に在籍した事実はないそうである。
但し早稲田には入学しているとのこと。
参考資料:1.ザ・格闘技 小島貞二 昭和51年朝日ソノラマ
2.大山倍達正伝 小島一志 塚本佳子 2006年7月新潮社
3.東京スポーツ2007年7月31日付け(30日発行)10面 清原稔の交遊録 構成・三浦伸治
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