No.262
人間対猛獣8.大正6年、力士燧洋対イノシシ



プロレス アンド ボクシング誌に掲載されていた鳴子六平氏の「ニッポン力豪伝」
第16回「猛獣も一コロ篇」に掲載されていた話。

大正6年、大横綱太刀山の一行が三重県から和歌山県下を巡業。
当時は交通機関が現在ほど発達しておらず、奥熊野の山中を巨体の一行が徒歩で移動。
小休止中に藪の中から現れたイノシシ。
力士一同イノシシを取り囲む。大岩に腰を掛けてみていた横綱太刀山が声を掛ける。
「そんなもの誰か一人でひねっちまえ」

その声に「よーし」と登場したのは太刀山の秘蔵っ子、怪力の燧洋(ひうちなだ)。
燧洋は浴衣を脱ぐと六尺褌一つの姿になりイノシシともみ合う。
しばらくもみ合った後燧洋はイノシシを2度投げつけ、裏返しにして4本の足を手でまとめ上げた。
紐で四肢を縛り上げられたイノシシは生け捕りとされ次の巡業先にと運ばれた。

勧進元は木戸の表に
「横綱太刀山一行が熊野山中にて生け捕りし大猪」の立て札と並べてそのイノシシをぶら下げた。
そのおかげで人気が出て、勧進元はえらく儲けたそうである。

(2006.0211)
参考:プロレス アンド ボクシング 昭和33年 ベースボールマガジン社

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