No.57
NWF・WWWFダブルタイトル戦、野次に顔を上げる猪木。新日本プロレス「第1回MSGシリーズ第35戦(最終戦)」


↑別冊ゴング昭和53年7月号より 新日本プロレス「第1回MSGシリーズ第35戦(最終戦)」
1978(昭和53)年6月1日 東京・日本武道館
同行者=元同級生数名

特筆すべきは藤波と長州のコンビを見たこと。
のち長州の造反で「名勝負数え歌」として有名になるライバル関係の二人も、
この頃は新日本プロレスの次代を荷うヤングコンビだった。
この日初めて生で見た藤波辰巳という選手はレスラーとしては痩せ型の肉体をフルに使って空中殺法を披露し、
悲壮感の漂う迫力といったようなものが全身にみなぎる独特のムードの選手だった。
長州はこの試合脇役に徹していたようで印象が薄い。
やはり革命以前の長州はときおり力感あふれる試合もあったが徹底して地味だったよう。
それからやはり初めて生で見たアンドレ・ザ・ジャイアント、このレスラーの巨大さには本当に驚いた。坂口が小さく見えた。

メインはNWF・WWWF(註1)のダブルタイトル戦、猪木対ボブ・バックランド。
WWWF王者のボブ・バックランドは新日本初登場。
来日第一戦のテレビ生中継ではタッグマッチで木戸修を開始わずか36秒、ジャーマンスープレックスで沈めていた。
この若き王者に猪木はレスリングで対抗。
珍しい力技のフルネルソンで締め上げ、キーロック。
かと思うと喧嘩レスリングも披露。顔面をちょっと蹴り上げるとバックランドは鼻血。そして追い討ちの鼻っ柱への頭突き。
少しプロレスから逸脱した攻撃でした。
一本目は場外で猪木のバックドロップが決まりリングアウト勝ち。
二本目も猪木、弓矢固め、コブラツイスト、卍固めと一方的に攻め込んだが時間切れ。
スコア上では1-0で猪木の勝ちだがルールにより双方ベルト防衛。
この試合は三協映画「格闘技世界一・四角いジャングル」に収録されている。

なおこの試合前フィラデルフィアでの大会で猪木、坂口らと対戦した全米プロ空手(懐かしい響きだ)の
ザ・モンスターマンとザ・ランバージャックがリング上で紹介され、
このあと福岡で開催された「格闘技世界一決定戦」での猪木たち日本側との対戦をアピールしていた。
それから猪木がフルネルソンで攻撃していた時、上のほうの席から「やい猪木!それがプロレスか!」という野次が飛んだ。
ちょうど場内が静かになっていたのですごく良く聞こえた。猪木も一瞬顔を上げてその声が聞こえた方向を見たのが印象に残った。

(1984年6月頃のノートを元に再構成、2003・0830)

(註1)当然現WWE。

新日本プロレス「第1回MSGシリーズ第35戦(最終戦)」
1978(昭和53)年6月1日 東京・日本武道館
観衆:1万1千人(超満員)

1.15分1本勝負
○小林邦(逆さ押さえ込み、9:09)趙白山●

2.20分1本勝負
○藤原(体固め、12:08)R・スチール●

3.20分1本勝負
○B・シクルナ(片エビ固め、7:52)荒川●

4.20分1本勝負
○W.ルスカ(逆十字固め、8:30)木戸●

5.30分1本勝負
○B.アレン(体固め、7:03)B.マグロー●

6.45分1本勝負
○藤波、長州(回転エビ固め、12:45)T.ガレア、N.ボルコフ●

7.60分1本勝負
▲坂口(両者リングアウト、8:01)A.T.ジャイアント▲

8.NWF.WWWF両ヘビー級選手権(61分3本勝負)
○A猪木(1-0)B.バックランド●
1. ○猪木(リングアウト、40:08)バックランド●
2. 時間切れ

*猪木が1-0で勝利したが2フォールを奪っての勝利ではないため双方ベルト防衛。

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