No.159
初代タイガーマスク衝撃のデビュー戦。
新日本プロレス「WWFビッグファイトシリーズ第2弾第17戦(最終戦)」
新日本プロレス
WWFビッグファイトシリーズ第2弾第17戦(最終戦)
1981年4月23日 東京・蔵前国技館
同行者=当時付き合っていた女
前田の空手気味の蹴りはこの頃から印象に残っている。
第4試合、木村健吾は日本初公開のタイミングで物議をかもした(註1)雪崩式ブレンバスターで勝利。
第6試合の藤波対カネックから、両コーナー入場口付近の桟敷席をつぶして造った特設ステージからの
バンドの生演奏での入場となった。バンド名は「外道」と「ブレイン・ウオッシュ・バンド」。
生演奏での入場はレーザー光線やスモークなどの効果と相乗してなかなか楽しめた。
【藤波-カネック】
藤波の凱旋帰国当初にテレビ中継で見たWWWFジュニアヘビー級戦前哨戦の両者ノックアウトの名勝負を再現。
藤波は流血、カネックは覆面を破られと同じパターンの踏襲だったが面白かった、最後は藤波が逆上の反則負け。
【タイガーマスク-D.キッド】
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タイガーマスクは前週のテレビ生中継で突如その出場が予告された謎のマスクマン。
しかもセミファイナルで強豪ダイナマイト・キッドとの一騎打ち。
入場してきた「タイガーマスク」は覆面こそ急造の感じがあったが、
虎柄のマント、ロングタイツのコスチュームはなるほど劇画やアニメのそれの雰囲気。
しかし身長が随分小さい印象、不安がよぎった。
対するダイナマイト・キッドは小走りに入場してきて気合充分、セコンドに蹴りのポーズで威嚇。
劇画「タイガーマスク」原作の梶原一騎氏がリングに登場、タイガーを激励と共にマイクを持つ。
「彼は実力者です、絶対に期待は裏切らせません!」
しかしこの時期梶原氏は猪木対ウイリーの格闘技戦などで
新日本ファンからは極真空手側の人間と思われていたようで、場内に梶原氏に対する罵声が飛んだ。
加えてタイガーも反新日本側の選手と受け取られた雰囲気が漂い、梶原氏激励のマイクが逆にファンの反感を買ったよう。
試合が開始された。
タイガーは細かいステップでキッドの周りを回って様子を伺う。その動きに場内がざわめく。
と、すばやい動きでタイガーがジャンピングしての後ろ回し蹴り連発。
空振りに終わったが客席からは驚いたような歓声。
ヘッドロックに取ったタイガーが自分の脚を起点にしてクルクルッと回転、すばやい動きでキッドの脚を取る。
スピーディーでトリッキーな動きに再び客席からどよめきが。
試合開始数秒でこの無名のマスクマンは会場の観客全員を魅了した!
キッドも負けずに反撃して一進一退の攻防が続いたが
コーナーのキッドに突進したタイガーはキッドの胸板あたりをステップにして大きくジャンプ、空中に舞い上がると1回転して脚から着地。
サマーソルト!こんなの見たことない!
タイガーの空振り気味のドロップキックから場外戦、
フェンス際でキッドに鋭いキックを打ち込むタイガー、キッドの足を取ると逆にキッドがはさみこむような延髄斬り。
ダウンしたタイガーを尻目に先にリングに上がったキッドがロープ越しのブレンバスター狙い、危うしタイガー!
しかし空中で反転したタイガーはキッドの背後に着地してバックを制すると、大きく持ち上げてのジャーマン・スープレックス炸裂!
ピンと立った両足のつま先、完璧な人間橋で3カウント奪取、謎のマスクマンが脅威のピンフォール勝ち!!
場内は物凄い歓声、変身以前のキャリアがあるとはいえ全く予備知識がない選手のデビュー戦としてはおそらく史上最高の試合ではないか。
いま思い出しても鳥肌が立ちます。
試合開始前の罵声とは逆の暖かい歓声を受けて、タイガーマスクは控室へ。
おそらく観客の大半が「あれは誰?(註2)」「もっと見たい」と考えたに違いない。
伝説の始まりを、たっぷり見せてもらった。
【猪木-ハンセン】
生演奏も「イノキ・ブンバイエ」でド迫力。
ハンセンの曲はバンドのオリジナル?で蛇がニョロニョロ進んでいるような曲(笑)。
4月17日の鹿児島大会での同カードのNWF戦が両者フェンスアウトで王座預かりとなった上での、王座決定戦による再戦。
そのうえに猪木はガウン、ハンセンはテンガロン・ハットとお互いのコスチュームを賭けた一戦となった。
前年より本格化して徐々に手がつけられない怪物と化しつつあったハンセンを相手に、この日は猪木が好調。
ハンセンはカウンターの重爆ドロップキック、ブレンバスター、ウエスタン・ラリアート。
猪木はコブラツイスト、延髄斬りの連発で反撃。
終盤猪木が、立っているハンセンの頭部へコーナー最上段から奇襲のニーアタック。
ダウンしたハンセンにコーナー最上段からのニードロップをボディに決めてピンフォール勝ち。
猪木がNWF王座とテンガロン・ハットを手に入れた。
イメージの問題からか猪木がテンガロン・ハットをかぶらなかったのはさすがといわざるを得ない。
試合終了後猪木とハンセンが握手するという珍しい光景も。
後半3試合はいずれも好勝負、大満足の観戦。
帰りの話題は「タイガーマスクの正体は?」で持ちきり。
(1984年6月頃のノートを元に再構成、2004.0905)
(註1)この年凱旋帰国した国際プロレスの阿修羅原が道場の公開練習で雪崩式ブレンバスターを日本初公開。
その写真が載った東スポを専門誌(紙?)の記者が木村健吾に見せて「こんな技出来ますか」と談笑したところ
猪木-ハンセンのNWF戦が行われた4月17日の鹿児島での藤波戦で何と健吾が雪崩式を実戦初披露!
(試合は健吾の雪崩式を土壇場で切り返した藤波のフォール勝ち)。
掟破りの何とやら、どころの騒ぎではないですよねこの話(笑)。
そういうわけで雪崩式ブレンバスターを日本で初公開したのは阿修羅原、試合で初公開したのは木村健吾、ただし自爆。
(註2)自分も梶原氏の登場、タイガーの鋭い蹴りを見て初めは極真関係の空手選手が正体かなあ、などと最初考えました。
しかし最後のジャーマンは綺麗に決まって空手の選手の付け焼刃じゃ出来ない技だったし、やっぱりレスラーだなあと思いました。
新日本プロレス
「WWFビッグファイトシリーズ第2弾第17戦(最終戦)」
1981(昭和56)年4月23日 東京・蔵前国技館
観衆8500人=主催者発表
1.15分1本勝負
○ジョージ高野(片エビ固め、10:56)斉藤弘幸●
2.20分1本勝負
○藤原喜明(体固め、11:13)前田明●
3.20分1本勝負
▲星野勘太郎、永源遙(両軍リングアウト、11:12)木戸修、クロネコ▲
4.30分1本勝負
○木村健吾(体固め、8:15)ザイール・ビコ●
5.30分1本勝負
○坂口征二、長州力(体固め、8:45)ケン・パテラ、バクジー・マグロー●
6.45分1本勝負
○カネック(反則、9:18)藤波辰巳●
7.60分1本勝負
○タイガーマスク(原爆固め、9:29)ダイナマイト・キッド●
8.NWFヘビー級選手権王座決定戦(60分1本勝負)
○アントニオ猪木(体固め、12:56)スタン・ハンセン●
*猪木が第19代王者となると同時に王座を返上、封印。
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