No.162
魔人ローラン・ボック蔵前に登場。
新日本プロレス「サマーファイトシリーズ第30戦(最終戦)」
新日本プロレス
サマーファイトシリーズ第30戦(最終戦)
1981年8月6日 東京・蔵前国技館
同行者=なし
応募で招待券を入手しての観戦。
試合が始まる前に選手がリング上で練習していた。当時の新日本では時々見られる光景だった。
猪木はしきりにブリッジをやっていた。
終わって「よしっ!」といってリングを降りると、すでに入場していた観客から拍手が起きた。
【ボック、ナドール-長州、藤原】
このシリーズで初の日本での試合に出場した西ドイツのローラン・ボック。
初登場の生中継、7月31日大阪府臨海スポーツセンターでの木村健吾戦は衝撃的だった。
開始早々のバックを制してのバックドロップ、
リストを固めてからの力感十分のコーナーへのハンマー・スルー。
そして止めの人間風車、試合開始からのタイムは僅かに1分35秒。
この日の蔵前でも、禿げ上がった頭、その両脇から垂れるように生えているカールした栗毛の長髪、
そして猪木がヨーロッパ遠征した時のいかにも硬質なイメージを持った体よりは、
ふっくらと白い肉がついてまったくイメージが変わってしまったボックは
プロレスラーというよりは何だか冥界から来た魔人といった雰囲気で、それがまた既成のレスラーには見られないたたずまいを感じさせた。
しかしこの「凄味ある病人(「私、プロレスの味方です」村松友みより)」は
シュツッツガルトでのアンドレ戦だかで発症した血栓症やら交通事故での後遺症やらで
ベスト・コンディションではなく、今回の来日では猪木との対戦は見送られた。
しかし「コンディションはベストの20%以下」でもなおボックは凄味のある試合を見せてくれた。
厚みのある巨体は長州、藤原の攻撃を寄せ付けずかちあげるようなエルボーで攻め込み、
最後は剛腕で藤原をリバース・フルネルソンに決めると鋼鉄の人間風車炸裂、あっさりと3カウント。
【坂口-ブッチャー】
前週のテレビ生中継(前述の大阪臨海)でブッチャーに角材で殴られ大流血した遺恨を晴らすべく先に入場した坂口は、
新日本の練習用の、腕立て伏せに使用する木製の道具を持って入場してきたブッチャーに奇襲をかけ、道具で滅多打ち。
はては逃げるブッチャーを客席にまで追いかけて試合にならず。
しかし時々は怒る坂口を見たいと思っているので、それはそれでいい。
【猪木-スーパースター】
試合開始前の両者の間に、灰色のジャージを着たボックが登場して両者を激励。
猪木とは何やら言葉を交わして握手。
ボックが反対側コーナーのスーパースターに歩み寄り握手を求めると、スーパースターが「アッチヘイケ」握手拒否のゼスチャー。
するとボックは腕を振り上げ、わずかに応戦の構えを見せたがそのままリングを降りた。
アメリカのレスラーからすると、相手の技を受けないで危険な投げで叩きつけるボックの試合スタイルは受け入れられないものであろう。
ボックとアメリカのレスラーの、数少ない交錯のシーンだった。
猪木-スーパースターの試合は好調の猪木がスーパースターを圧倒。
序盤からコブラツイスト、インディアン・デスロックで締め上げ
最後は久々に見せたジャーマン・スープレックス・ホールドで完全フォール勝ち(註1)。
賞金3万ドルとマスクを賭けた試合だったのでスーパースターは覆面を取らなければならなかったが、
抵抗する中スーパースターのマスクは剥がされたが、
外人側のセコンドがすぐタオルをスーパースターの頭にかけて控室へ逃亡させてしまったので
(F.ブラッシーの自伝による、デストロイヤーと同じ逃げ方)彼の素顔はこのときは見ることが出来なかった(註2)。
(1984年6月頃のノートを元に再構成、2004.0923)
註1:ゴング昭和56年10月号によると猪木のジャーマンは昭和53年5月20日秋田での藤波戦(第1回MSGシリーズ公式戦)以来3年3ヶ月ぶり。
註2:録画したVTRをスローにしたらかすかにスーパースターの素顔が見えた。
新日本プロレス
「サマーファイトシリーズ第30戦(最終戦)」
1981(昭和56)年8月6日 東京・蔵前国技館
観衆9800人
1.15分1本勝負
△荒川真(時間切れ引き分け)B・キャット△
2.20分1本勝負
○剛竜馬(片エビ固め、10:37)前田明●
3.30分1本勝負
○レス・ソントン(片エビ固め、7:24)ジョージ高野●
4.30分1本勝負
○星野勘太郎、永源遙(首固め、11:24)B.アレン、F.サベージ●
5.45分1本勝負
○タイガーマスク(猛虎原爆固め、10:18)スコルピオ●
6.45分1本勝負
○ローラン・ボック、ミッシェル・ナドール(体固め、9:50)長州力、藤原喜明●
7.60分1本勝負
坂口征二(没収試合、2:52)A.T.ブッチャー
8.WWFジュニアヘビー級選手権(60分1本勝負)
○藤波辰己(アルゼンチン式背骨折り、15:04)スタン・レーン●
*藤波が26度目の王座防衛に成功。
9.賞金3万ドル&覆面剥ぎマッチ(60分1本勝負)
○アントニオ猪木(原爆固め、12:16)マスクド・スーパースター●
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