No.306
前田激勝、猪木失笑「INOKI闘魂LIVEパート1」
新日本プロレス「INOKI闘魂LIVEパート1」
1986(昭和61)年10月9日 東京・両国国技館
同行者=千里眼(他にいたかもしれない)
最初から見ましたが前座はジミでした。
すごかったのが第5試合に登場したランス・フォン・エリック、裸足。
エリックを名乗っているが鉄の爪の子供たちではないにせエリック。
健吾がロープに飛ばして稲妻で攻撃しようとすると、健吾の攻撃をかわした。
技を受けようとしないから、全然プロレスの試合にならない。
健吾頭にきたか、ランスを場外に落としさらにフェンス外に吹っ飛ばして反則負け。
ランス全然プロレスの動きになってない、相手の攻撃を全く受けない。何でエリック名乗ってるの?
自分の中では若き日の前田にこてんぱんに蹴っ飛ばされた
やせっぽちのネイティブ・アメリカン、T.トゥールトゥリーと双璧のダメ外人レスラー。
藤波がジミにジャッカルを腕ひしぎ逆十字固めで料理、この技をチョイスしたのも格闘技戦がある日だからか?
この日のマットは新日のいつものブルーのマットではなくて格闘技戦用?のスプリングが利いてない白いマット。
スペース・ローンウルフ「610」武藤のお披露目などがあって、いよいよ2大格闘技戦。
エイジアの「ドント・クライ」が混ざってる入場曲でドン・ナカヤ・ニールセンが登場。
ガウンの背には「雷手」の文字が。
曲がキャプチュードに変わると場内がヒートアップ、前田が気合の入った表情で入場。
両者、鼻の頭がつかんとばかりの距離でにらみ合い。
前田、花束を客席にブン投げる!
それを見たニールセン、花束を客席に蹴り込む!
緊張感高まるリング上にカール・ゴッチが上がって前田と握手。巻き起こるゴッチコール。
ニールセン股割り、前田蹴り上げでウオーミングアップ、場内どよめき。
試合が始まる前からこんなに盛り上がっている試合ってのもすごい。
レフェリー山本小鉄、ゴング直後ニールセン前蹴り。
ニールセンのキックを前田キャッチして倒すがロープブレイク。
ニールセンのパンチが前田の顔面にヒット。
2R開始直後、両者飛んでの蹴り。
前田再三ニールセンの蹴り足を取って倒すが、その都度ロープブレイクで好機を逃す。
3R、キックの応酬から前田の正面タックルがリング中央で決まり
前田アームロックから腕ひしぎ逆十字狙い、しかし惜しくもロープ。
ニールセンのパンチで前田鼻血。
4R、前田のローでニールセンバランスを崩すシーンが目立つ。
もつれて倒れた後、前田が足を取ってアキレス腱固め狙い、ニールセン蹴りで必死のディフェンス。
前田、タックル崩れからリング中央で腕を取って回転、脇固め。
しかしここでラウンド終了のゴング。
5R、前田スタンドで両かんぬきに決めると後方に投げる。
そして腕狙いのグランド。
ロープブレイク後ニールセン疲れの見える表情ながらもパンチ、
前田パンチを食いながらも足にしがみついて倒す。
2度目の攻防で前田がアキレス腱固め、ニールセン残った足で蹴って抵抗するも
前田逆片エビ固めに移行、ニールセンたまらずギブアップ。
天に両の拳を突き上げて勝ち誇る前田に藤原、高田、シーザー、シンサックらが駆け寄り祝福。
敗者ニールセンの手をあげる前田。マイクを取ってしゃべるがよくわからない(パンチ食ったからか?)。
最後に「彼(ニールセン)にも拍手をお願いします」と言ってマイクをニールセンに渡す。
日系ハーフのニールセンは片言の日本語で「日本に来れて光栄です」と短く語り、四方に礼。
前田と握手、大歓声と鳴り止まない拍手。
緊張感溢れる熱戦の後の魂の交歓。
さて、こんなすごい試合の後に出てくる猪木は、もっとすごい試合をしてくれるのかな、と思っていましたが・・・。
猪木はなぜかグローブを首から下げて入場、グローブつけて試合するのか?
石松レフェリーがマイクをとってルール説明「猪木さんの、関節技は、ナシー」。ああ、前田の試合の感動がだんだん薄れていく・・・。
案の定猪木は赤いグローブをつけて試合開始、
しかしボクシングスタイルになればスピンクス断然有利、1Rからジャブ、ストレートで圧倒。
2R、猪木はグローブスタイル続行、しかしパンチは早くもスピンクスに見切られたか空を切る。
スピンクスのボディーブローで猪木ダウン。
3R、猪木グローブスタイル続行、しかしこの回何度もスピンクスのパンチでダウン。
4R、埒の明かない猪木がグローブをはずす。アリキックから延髄斬り、
しかしここまでの体力の消耗が激しいのか当たりが浅い。
5R、スピンクスがパンチの連打。猪木アリキック、足をつかんでのテイクダウン。
しかし終了間際猪木またもやパンチを受けてダウン。会場がだんだん白け気味になっていく。
6R、猪木が秘密兵器?骨法の浴びせ蹴り、スピンクスの頭部に当たる。
しかしスピンクス頭をクネクネと動かす奇怪な動きでダメージのないことをアピール。
浴びせ蹴りを連発する猪木だが、スピンクスには通じない!
スピンクスがすごいタフなのか、猪木が情けないのか。
猪木苦し紛れかグランドで禁じ手の腕ひしぎ逆十字。レフェリーの石松が反則カウントを取りながらほどこうとする。
7R、再び猪木浴びせ蹴り、しかしスピンクスフットワークで軽くかわす。
猪木足を取ってテイクダウンさせて腕ひしぎ逆十字、反則なので当然ブレーク。
猪木今度はスタンドでショルダー式のアームブリーカー。だから関節は反則だって。
猪木のなりふり構わずの関節技連発にスピンクスだんだんと戦意喪失。
8R、ロープ際でバックを取った猪木がバックドロップ狙い。
スピンクス、手をロープに伸ばして腰を落とすディフェンスで猪木の投げ技を阻止。
業を煮やしたか猪木、そのままグラウンドに持ち込んでボディシザースとアームロックの複合的体勢で押さえ込み。
レフェリーの石松が5カウントを叩いて猪木のフォール勝ち。
しかし押さえ込んだ瞬間いつものような猪木の「見得」はなく
むしろ顔を見せるのがハズカシイといった感じで下を向いたままのフォール。
稀にみる凡戦。
猪木による、猪木のための闘魂LIVEだったはずなのに、終わってみれば前田対ニールセンの熱戦の記憶ばかり。
わざわざアメリカから招聘したリングアナウンサー、ジミー・レノンの「ウイナー、イーノキー」のコールも空しかった。
思うに、前田の相手を蹴りなしのボクサーにして、
猪木の相手を蹴りが派手なキックボクサーか空手家、というカードにすれば展開が変わっていたと思う。
(2007.0407)
新日本プロレス「INOKI闘魂LIVEパート1」
1986(昭和61)年10月9日 東京・両国国技館
観客1万1520人(札止め、当時会場レコード)=主催者発表
1.20分1本勝負
○橋本真也(チキンウイングアームロック、9:21)船木優治●
2.20分1本勝負
○後藤達俊(逆羽根折り固め、11:13)蝶野正洋●
3.20分1本勝負
○ドン荒川(逆十字固め、6:42)金秀洪●
4.20分1本勝負
△越中詩郎、G.高野(時間切れ引き分け)木戸修、高田伸彦△
5.30分1本勝負
○ランス・フォン・エリック(反則、5:23)木村健吾●
6.30分1本勝負
○藤波辰巳(逆十字固め、7:33)ジャッカル●
7.異種格闘技戦3分10R
○前田日明(逆片エビ固め、5R2:26)ドン・ナカヤ・ニールセン●
8.異種格闘技戦3分12R
○A.猪木(体固め、8R1:33)レオン・スピンクス●
*猪木‐スピンクス戦ルール(東京スポーツ86年10月10日付より)
3分12ラウンド、インタバルは1分、延長はなし
スピンクスは12オンスのグローブを装着、猪木は自由
KO、TKO、ギブアップ、レフェリー(ドクター)ストップのほか、
フォール(5カウント)で勝負を決める
引き分けはなく、レフェリーのガッツ石松が判定を下す
猪木の関節技は禁止、キック、投げの使用はOK、
ロープの使用もOK
グラウンド(寝て)の攻撃は10秒以内なら何度でもOK、
10秒を越えての攻撃を3度行なえばペナルティーとして5000jを相手に支払う。
3度を越えれば回数ごとに5000jずつ加算される
場外は10カウント、
攻撃を受けて場外に落ちた場合はカウントし、
故意に出したり出されたりした場合はノーカウントで警告を与える
場外での攻撃は一切禁止
ダウンした相手への攻撃は禁止
*前田‐ニールセン戦ルール(週刊プロレスNo.168緊急増刊号より)
1.3分1R 1分休み 10R(註1)
2.ニールセンは10オンスグローブを使用。前田選手はグローブを使用せず
3.ニールセンはマーシャル・アーツ衣およびシューズ
前田選手はレスリング用タイツおよびシューズ
4.1R中、何回倒れても試合は続行、ただし選手が戦闘不能と見た場合レフェリー権限でストップ
ノックアウトは10カウント
5.関節技、投げ、パンチはOK
6.ロープ・ブレイクは行なう。5カウント。
7.殴られたり、蹴られたりして場外に落ちた場合、10カウント
8.ヒジ(エルボー)は禁止
9.ヒザ(ニー)はOK
10.ジャッジは2人1組(註2)で行なう。採点は10点法
11.その他はレフェリー判断による
註1:東スポでは直前まで1R2分のルールだったが、前日に3分に変更された。
註2:J.トロスとH.マツダ組、M高橋と柴田勝久組。
なお、週刊プロレスNo.168緊急増刊号にも猪木‐スピンクス戦ルールは掲載されていたが
誤植か文章が途中からわかりづらくなっていたので、そのまま掲載するのは難解と判断し
東スポ掲載のルールを載せた次第。前田‐ニールセン戦ルールは註1の事項以外特に東スポに掲載なし。
参考:週刊プロレスNo.168緊急増刊号
東京スポーツ86年10月10日付
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