No.331
アンディ・フグがカカト落としで大暴れ 極真空手「第4回全世界選手権大会」
国際空手道連盟 極真会館
「第4回オープントーナメント 全世界空手道選手権大会」(3日目=最終日)
1987(昭和62)年11月8日 東京・日本武道館
同行者=千里眼他
2日間を勝ち進んだベスト32選手による最終・決勝。
しかし今見てみるとM.ウェーデル、A.コスタの2強豪に加えて外国勢にプロ転向者が多く、
非常に強力な海外勢力だったと感じる。
入場式では一番最初に段上に上がった長身選手をミッシェルと勘違いしたが、
それはジェラルド・ゴルドーだった。
ゴルドーは当時からキックボクシング、サバットなどのプロファイトに出場していたかも知れず、
日本では翌88年UWF有明での前田日明との異種格闘技戦に登場、
以後93年の第1回UFC、日本でのリングス、VTJなどに登場。
4回戦5試合目に登場した選手。
まったく知識がなく、パンフで名前を確認。
アンディ・フグ、フグ=河豚とか考えて客席で笑っていたんだが
試合が始まるとこのあまり大きくない選手が見たこともない足技を見せた。
足を大きく振り上げてカカトから相手の脳天あるいは肩・鎖骨あたりに落とす。
相手の木元はこの攻撃が刷り込まれたかうまく動けない。
木元、極端に距離を詰めて胸元への正拳連打。
アンディは距離をとってローキック。
微妙な判定だったがアンディの勝利。
始めてみるカカト落としは衝撃的だった。
のちにアンディについての文章で読んだが(出典不明)、
少年時代ブルース・リーに憧れて空手を始めたアンディ、
しかし家が道場から遠くてなかなか組手の稽古が出来なかった。
組手が少ないハンディを賄う為にアンディはあのカカト落としを考えたそう。
それも左右の足両方から、そして内側・外側両方から廻すヴァリエーション、
計4種類のカカト落としが出来るように独りの練習を続けたそうである。
結果、相手はカカトが来るのを警戒して動きに制限がおきる。
アンディはカカト落としによって試合をコントロールできるようになった。
欧州外国人勢の大将格、ミッシェル・ウェーデルは4回戦圧倒的な強さ、長身を利しての強烈な回し蹴り。
この選手はプロ転向しなかったが、もしその後にK-1に登場していたら歴史は変わっていたかもしれない。
5回戦、アンディは桑島相手に序盤カカト落とし連発。
そして延長に入ってから下段連発で一本勝ち。
トーナメントが進行するに連れてだんだんと存在感を増してゆくアンディ。
5回戦ではミッシェルとブラジルのアデミール・コスタの外国人頂上対戦が実現。
消耗戦になったが延長で下段連発でミッシェルの足を止めたコスタが辛くも勝利。
日本勢最大の脅威となっていた海外2強豪は潰し合いに終わってしまった、だが・・・。
5回戦、ローキックの達人黒沢とオランダのP.スミット(のちプロのキックに転向)。
黒沢のローとスミットの足技、突きがなかなか決着つかず、
結局延長3回、黒沢の判定勝ち、しかし黒沢足のダメージが大きく次の準々決勝を棄権。
準々決勝、ミッシェルを破ったブラジルのアデミール・コスタがアンディと対戦。
しかしミッシェルとの頂上対決を終えたコスタは消耗したか動きが鈍く、逆にアンディはフットワークが軽快。
追いかけるコスタにロー連発で技有り。さらに右中段廻しで合わせ一本。
あれよあれよという間に準決勝まで登りつめたアンディ。
さらにイギリスのマイケル・トンプソンが黒沢負傷のため不戦勝。
ベスト4に外国人が2人残った。場内に緊張が走る。
準決勝第一試合、増田がアンディに判定で敗れ、この瞬間初の外国人の決勝戦進出が決定。
であるばかりか、第二試合でトンプソンが松井を破れば、外国人同士の決勝戦となってしまう。
重苦しい異様な空気が場内を支配する、トンプソンは前の試合不戦勝でスタミナ的には有利。
松井対トンプソンは静かなる激戦。
松井、低い構えで足技、上段、下段。
トンプソンはフットワークを駆使してなかなか攻めさせない。
延長3、4回ではトンプソンに旗が2つ上がり場内緊張。
異例の延長5回、松井、トンプソン下段の打ち合い。
松井下段狙いの姿勢から前進、トンプソンの注意が下段に集中したところを突然右上段廻し蹴り!
これがトンプソンの左の顔面から首筋あたりに決まり、トンプソン崩れ松井の一本勝ち、場内総立ち、大歓声。
決勝戦、松井対アンディ、実は前回の世界大会でも両者は対戦していてこの時は松井の判定勝ち。
その存在をまったく知らなかったアンディ・フグが脅威の足技を駆使して外国人初の決勝進出!
試合は両者上段狙い、アンディフットワークでうまく相手の攻めのタイミングをずらす展開。
しかし延長2回、アンディの正拳があやまって松井の顔面に入ってしまい注意をもらう。
結局この反則が響いたか、判定は4-0で松井が優勝、空手日本の面目を守った。
しかし外国人勢の肩車で退場してゆくアンディ・フグ、その雰囲気は勝者のようでもあった。
前述のようにこの大会から続々とプロ転向を果たす選手が出て、松井対トンプソンの名勝負と共に今でも語られることの多い大会。
(2007.0819)
国際空手道連盟 極真会館
「第4回オープントーナメント 全世界空手道選手権大会」(3日目=最終日)
1987(昭和62)年11月8日 東京・日本武道館
観客数不明(但し見た目満員)
()内数字は大会通算の試合ナンバー。
【1 (176)】4回戦
○増田章(日本)(延長2回後体重判定・試し割り数)ヒエラルド・ゴルドー(オランダ)●
【2 (177)】4回戦
○ジェフリー・セベクル(アンゴラ)(延長4回判定4-0)三明広幸(日本)●
【3 (178)】4回戦
○西山芳隆(日本)(判定3-0)キャメロン・クイン(オーストラリア)●
【4 (179)】4回戦
○七戸康博(日本)(不戦勝)グラハム・ウォーデン(イギリス)●
*ウォーデン骨折のためドクター・ストップ。
【5 (180)】4回戦
○アンディ・フグ(スイス)(延長2回判定3-0)木元正資(日本)●
【6 (181)】4回戦
○桑島保浩(日本)(延長1回判定3-0)ズビグニウ・マタシ(スウェーデン)●
【7 (182)】4回戦
○アデミール・コスタ(ブラジル)(延長2回後体重判定・試し割り数)八巻健二(日本)●
【8 (183)】4回戦
○ミッシェル・ウェーデル(オランダ)(一本勝ち、1:16左中段廻し)ヤン・ビューロー(デンマーク)●
【9 (184)】4回戦
○緑健児(日本)(延長2回後体重判定・試し割り数)A.ゴンザルベス・シルバ(ブラジル)●
【10 (185)】4回戦
○マイケル・トンプソン(イギリス)(延長3回判定4-1)橋爪秀彦(日本)●
【11 (186)】4回戦
○黒沢浩樹(日本)(判定4−0)シャキール・アハメッド(パキスタン)●
【12 (187)】4回戦
○ピーター・スミット(オランダ)(延長2回合わせ一本勝ち)ジェームズ・H・キタムラ(ブラジル)●
技有り、右下段廻し
技有り、右下段廻し2:00
【13 (188)】4回戦
○小井義和(日本)(判定5−0)マルコ・A・イノストローザ(チリ)●
【14 (189)】4回戦
○ニコラス・コスタ(イギリス)(一本勝ち、1:53右後ろ廻し)奥村幸一(日本)●
【15 (190)】4回戦
○外舘慎一(日本)(不戦勝)ムニール・モーセン(クウェート)●
*モーセンがドクター・ストップ。
【16 (191)】4回戦
○松井章圭(日本)(判定5−0)パトリック・グットラック(トリニダート)●
【17 (192)】5回戦
○増田章(判定4−0)ジェフリー・セベクル●
【18 (193)】5回戦
○七戸康博(延長2回判定3-0)桑島保浩●
【19 (194)】5回戦
○アンディ・フグ(一本勝ち、延長1回0:36右下段廻し)桑島保浩●
【20 (195)】5回戦
○アデミール・コスタ(延長2回判定4-0)ミッシェル・ウェーデル●
【21 (196)】5回戦
○マイケル・トンプソン(判定4-0)緑健児●
【22 (197)】5回戦
○黒沢浩樹(延長3回判定4−1)ピーター・スミット●
【23 (198)】5回戦
○ニコラス・コスタ(延長2回後体重判定・試し割り数)小井義和●
【24 (199)】5回戦
○松井章圭(延長2回後体重判定・試し割り数)外舘慎一●
【25 (200)】準々決勝
○増田章(延長2回後体重判定・試し割り数)七戸康博●
【26 (201)】準々決勝
○アンディ・フグ(合わせ一本勝ち)アデミール・コスタ●
技有り、右下段廻し
技有り、右中段廻し2:28
【27 (202)】準々決勝
○マイケル・トンプソン(不戦勝)黒沢浩樹●
*黒沢、足を痛め歩行不能、ドクターストップで棄権。
【28 (203)】準々決勝
○松井章圭(判定5-0)ニコラス・コスタ●
【29 (204)】準決勝
○アンディ・フグ(延長3回判定5-0)増田章●
【30 (205)】準決勝
○松井章圭(一本勝ち、延長5回0:30右上段廻し)マイケル・トンプソン●
【31 (206)】3位決定戦
○増田章(合わせ一本勝ち)マイケル・トンプソン●
技有り、右下段廻し
一本、右下段廻し1:00
【32 (207)】決勝戦
○松井章圭(延長2回判定4-0)アンディ・フグ●
*松井章圭が初優勝。
生観戦記1987に戻る
SAMEDASU扉に戻る