No.366
女子プロのリングで男子が試合、ジャパン女子乗っ取られ寸前。

ジャパン女子プロレス「ファイティング・スクランブル追撃戦第2弾」
1988(昭和63)年12月3日 東京・後楽園ホール
同行者=千里眼他



【いきさつ】
10月28日ジャパン女子後楽園大会において
自称デビル雅美のファンと称する元全日本プロレスの大仁田厚が
私服姿でデビル側のセコンドにつく。
試合はデビルの木刀攻撃がレフェリーのG.浜田の頭部を誤爆、
浜田はデビルの反則負けを宣告したが
「男子レスラーが女子レスラーに殴られただけで反則負けかよ」という論点で
判定に納得しない大仁田が浜田レフェリーに抗議。
大仁田の抗議を受け入れない浜田レフェリーが大仁田を突き飛ばして場外に落とすと
逆上した大仁田が浜田を襲撃。浜田も反撃して流血の事態に。
この日元新日本プロレスの新間寿氏がメキシコのプロモーター、カルロス・マイネスの代理人という立場でリング上から挨拶。

11月7日後楽園大会では再び大仁田がデビルの自称セコンドとして登場、
レフェリーの浜田を挑発。
新間氏は11月1日付けでジャパン企画プロモーションの最高顧問に就任していた。
反発する女子勢。
メイン終了後再び大仁田が登場してアジテーション。
神取は「ここはジャパン女子のリングなんだ、覚えておけよ」とマイクで怒り。
ハレー斉藤はマイクで「こんな状態が続いてゆくんだったら悪いけど辞めさせてもらいます」
新間氏がリングインして斉藤からマイクを奪い「浜田と大仁田を戦わせる。
女子の試合が終わってからリングを片付けて、それから男子の試合をやってもいい」
と男子の試合を強行する構え。
この頃新間氏は前田らの新UWFに対抗するために大仁田、士道館などと格闘技連合なる集合体を結成、
ジャパン女子をその母体化するつもりでいたのかも知れなかったが、肝心の女子選手、そしてファンが猛反発。
リングに風間が登場してマイクアピール。
「私たちは男子と一緒に試合をするためにジャパン女子に入ったのではありません」
と涙のアピール。これをエプロンから見ていたヒール側の尾崎と沢井がリングに入って風間と握手、女子側の強調をアピール。

【そんなこんなで行なわれた12月3日後楽園大会】
第一部は女子の試合6試合、第二部は士道館プロ空手2試合のあと、浜田と大仁田の決着戦が行なわれることとなった。
しかしこの日、試合前のカード発表の際、リングアナの山本氏が
「ジャパン女子はあくまでも女子プロレスの団体です。
以後、男女合同興行を行うことはありません」と新間路線との決別を宣言。
不穏な雰囲気の中試合が行なわれる。

女子の試合は好試合が多く、プラム麻里子はビクトル投げからの関節技を披露。
ソチ浜田は村のラフファイトにリングアウト負けを喫したが
「今度やったら、お前、これだ!」と両手で折るようなゼスチャーをしてのマイクアピール。

女子メイン終了後、伊藤がマイクでこの日欠場した神取を呼ぶ。
「神取さん、何で逃げるんですか、一緒に戦ってください!」
奥から私服の神取が登場、それをこの日はだしで試合したデビルが挑発。
もう観客には意味不明連発のカオス状態。

士道館プロ空手マッチは1試合目がやたらプロレス寄りのコミカルな試合で
ドロップキックに近い飛び蹴り、自らロープに飛んで跳ね返っての蹴り、
抱え上げてのボディスラムみたいな投げも披露。
2試合目は普通に打撃中心の、まあ空手のような試合でした。

大仁田が登場すると、やたら大きさを感じる。
大仁田は膝の怪我で全日本プロレスを引退してから約4年振りのリング。
浜田も国内では3年10ヶ月振りの選手としてのリング。
大仁田ショルダースルーで浜田を投げようとするが
浜田空中で体を切り返して足で着地してのドロップキック、マリポーサ殺法健在!
さらに大仁田を場外に落としてトペ。
しかし大仁田場外戦で鉄柱・椅子攻撃。浜田も逆襲して両者流血、
かなりエキサイティングな内容になったが、一部のリングサイドの観客は試合内容そっちのけで「やめちまえ」みたいな猛抗議。
両者リング内に戻ってパンチ、キック、頭突き。
大仁田がラリアート、レフェリー誤爆。レフェリーは大仁田の反則負け、と判定したように見えたが試合は続行され
浜田が大仁田をエビ固めで抑えたところレフェリーが3カウントを入れ、浜田の勝利。
浜田対大仁田の試合は大変迫力があり面白かったがなぜか場内の客は不満だったようで
あまり歓声が沸かない。何が何だかわからないまま終了。

この頃は女子は女子のファン、男子は男子のファンという住み分けがされていて
アレルギー的に異性のリング登場を嫌悪していたフシも感じられる。
冬木の試合、天龍対神取、J.ローラーの新日本登場などが行われた現代からすると隔世の感もあるが・・・
新しいプランは常に受け入れられるかそうでないかという五分五分の勝負。

また新間氏の格闘技連合のプランにはこの年行なわれた「’88格闘技の祭典」が大きなヒントになっていたとも思える。
ジャパン女子、そして士道館も出場していたし。
この復帰戦でマットの感触を確かめた大仁田は翌年の「’89格闘技の祭典」では
空手家の青柳政司と異種格闘技戦を行い、さらにパイオニア戦志旗揚げ戦にも登場。
インディでも観客が入ることを確かめた上その後FMWをスタートさせる。
この「’88格闘技の祭典」→「12月3日ジャパン女子」→「’89格闘技の祭典」→「パイオニア戦志旗揚げ戦」
という流れが大仁田のプロレス界復帰・異種格闘技戦をベースにしてFMWを誕生させ
さらに格闘技戦からデスマッチ路線がスタートしたというように考えると
この日のジャパン女子は日本プロレス史に特筆されるべき興行ではなかったかと考える。
しかしながら浜田-大仁田戦がなぜか低評価であるのと合わせて
この日の興行の知名度は低い。

【再戦】
試合後のインタビューで浜田、大仁田とも再戦をアピールしていたが
12月11日、メキシコ・エル・トレオ・クアトロ・カミノスでのジャパン女子遠征試合でタッグマッチながら実現。
○浜田、ビジャノV、アニバル(2-1)大仁田、ランボー、アンヘル・ブランコ●(詳細不明)
日本で再戦が行われた様子はない。どこかで絡んだらしい。

(08.0928)

ジャパン女子プロレス「ファイティング・スクランブル追撃戦第2弾」
1988(昭和63)年12月3日 東京・後楽園ホール
観客2000人(満員)

◎30分1本勝負
○E.沢井、尾崎(回転エビ固め、14:49)風間、H.斉藤●

◎30分1本勝負
○C.鈴木、P.麻里子(エビ固め、13:27)スマイリー、オスカル●

◎45分1本勝負
○村(リングアウト、11:23)ソチ浜田●

◎60分1本勝負
○デビル雅美、剣舞子、ムーン章子(エビ固め、18:39)ミスA、伊藤勇気、ユウ山崎●
*女子は全6試合行なわれた様子。

◎士道館プロ空手マッチ2分3R
梅沢武(勝敗不明)影浦章

◎士道館プロ空手マッチ2分3R
上村龍(おそらく村上竜司)(勝敗不明)ダイナマイト・マハタビ(おそらくシマアク・マハタビ)

◎時間無制限1本勝負
○グラン浜田(エビ固め、11:51)大仁田厚●

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