No.199
いかがわしさとバーバリアンの体臭?がプンプン臭ったFMW「第1回総合格闘技オープントーナメント」


FMW「第1回総合格闘技オープントーナメント」
1990(平成2)年1月7日 後楽園ホール 
同行者=千里眼(他にいたかもしれない)

まったく奇天烈な興行であった。
トーナメントは当初空手の青柳政司、柔道の徳田光輝もエントリーされていたが負傷による(?)欠場。
代わってテコンドーのリー・ガクスー(韓国)、柔道の今泉敏が出場。
トーナメントのルールは、打撃系選手がからむ試合
(つまり打撃系同士、あるいは打撃系対グラップリング系)は3分5R、
グラップリング系同士の試合は30分1本勝負で行われる、というルール。
でも大仁田対ザ・シューターがラウンド制で行われているところをみると、
この団体はシューティングを打撃系と認識したのか?
もっともザ・シューターってのはマスクしていてシューティングだかなんだか全然わからなったが
(そういう意味では旗揚げ第2戦に登場した、サンボが出来ない覆面サンビスト・サンボ・キッドのようでもある)。

でトーナメントの第一試合、栗栖はいきなりテコンドーの元選手(素手)を場外に落っこどして
椅子でバンバンぶん殴るわけ、テコンドー選手の頭を。
もうこれだけで元選手の戦意は喪失しちゃって、2Rあっけなく逆エビにギブアップ。
1回戦第1試合からたまげました、トーナメントとはいえこれってプロレス対テコンドーの異種格闘技戦でしょ?
それが場外椅子攻撃だかんね。
もっともFMW旗揚げ前の「’89格闘技の祭典」(これも生観戦しました)で
当時まだフリーだった大仁田は空手家の青柳と異種格闘技戦で対戦したんだけど、
その時も椅子で殴ってたから、大仁田の側の流儀ということも言えますが、ハイ。
それとも当時全盛を誇った新UWFが大会場で行っていた「異種格闘技戦」へのあてこすりでしたか。
近年は全日本で行われた「馬場対ラジャ・ライオン」もこの「あてこすり」の範疇に入る、とする意見が多いようで。

そのあとトーナメント第2試合、空手の松永(素手)対キックボクシングの上田(グローブ着用)。
松永は誠心会館師匠の青柳と共にパイオニア戦志に参戦した後のFMW登場。
前年の史上初の「ノーロープ有刺鉄線マッチ」では大仁田、後藤組を追い詰めた。
のちW☆INGでデスマッチ王の称号を得ることになる男も、この時点ではまだ金髪でもヒゲ面でもなく、
素面で白い空手着を着た何のそっけもない空手ファイターだった。
上田は初期日本系キックに出場していた選手で、いろいろな伝説がある。
1Rは静かな攻防。
2R、いきなり松永がダウン。
判定は「上田の膝蹴りが急所に入ったため、上田の反則負け」。
おいっ!!!
一発ヒザが急所に入って反則負けなら、前の試合の栗栖の椅子攻撃は反則じゃないのか!
この時点でものすごーく胡散臭い雰囲気が後楽園ホールの空気を支配した・・・。

サンボ代表(?)の浅子の対戦相手は「韓国のブルース・リー」の雰囲気のリー・ガス・クー(素手)。
小柄だがスピードある蹴りと闘志を前面に押し出したファイトは好感が持て、この日1日でニュー・スターが誕生。
のちのFMW興行にも出場するようになる。
もっともこの日の浅子戦はキックがレフェリー誤爆で反則負けを喫したが。

ターザン後藤と対戦したのはごつい形相の柔道家、今泉敏。
しかし後藤がパンチ、キックで攻めると戦意を喪失して、変形の裸締め(っていうか、G馬場式背骨折り)でギブアップ。

1回戦最後の試合、大仁田対ザ・シューター(素手)。
シューターは覆面、だがかなり小さい。
スピーディーな蹴りで善戦したが、2R大仁田の逆片エビ固めでギブアップ。
これも佐山へのあてこすりだったのかどうか。

トーナメント2回戦、栗栖は空手家松永に対して1回戦と同じような椅子攻撃&ストンピング乱打でリングアウト勝ち。
松永なす術なし、この日の栗栖はとどまることなく攻撃しまくった。

トーナメント2回戦、後藤が浅子に勝った後だった。
何だか急に、場内に異臭が感じられた。
誰か漏らしたかと思うような、強烈なアンモニア臭、あるいは獣臭に似た臭い。
「うわ・・・何だこのにおい・・・」目から涙が出てきた、それぐらい強烈な臭いだった。
大仁田と、女性マネジャーを引き連れた(引き連れられた?)ビースト・ザ・バーバリアンが登場してきた。
ビースト・ザ・バーバリアンは毛皮のシューズといい、チェーンといい、小型ブロディといったおもむき。
あ、くさいのこいつだ・・・
なんとなくそう思った。
ところが面白いことに、試合が開始され程なく大仁田とバーバリアンの場外乱闘が始まったらにおいは全然感じなくなった。
おそらく乱闘で視覚的に興奮した自分は、嗅覚から来る刺激を忘れてしまったのではないかと。
場外戦はとめどなく続けられ、試合はノーコンテストに。
しかし本部席にいた立会人(レッド・バスチェン?)に大仁田が何かいうと、リングアナウンサーが
「バーバリアンのブラスナックル王座をかけて再戦を行います!」と場内アナウンスを、ヒステリックに。
えー!!!
トーナメント2回戦がいきなりタイトルマッチとして再戦!?
王座を賭ける必然性はないんじゃない!
普通こういうトーナメントでノーコンテストになったら両者失格ではないの?
とか何とか思ってるうちに大仁田がバーバリアンを抱えあげてサンダーファイアー・パワーボムを決めてフォール勝ち。
大仁田、新チャンピオンになるも、ダメージが大きそう。
乱戦が終わると再びあの強烈な臭いが感じられるようになり、
それは女性マネジャーに付き添われてバーバリアンが退場した後もしばらく自分の嗅覚を悩ませた。
末期の国際に参戦したジ・エンフォーサーについていた女子マネジャー「バニー」が
エンフォーサーの奥さんだったことを思い出した。
この日の女子マネジャーがビースト・ザ・バーバリアンの奥さんだったら、夜の生活ってどうなんでしょ。
あの強烈な体臭じゃないと、満足できないお方なのでしょうか。

変則的な組み合わせの都合で、準決勝と命名された試合は一試合。
バーバリアン戦で痛んだ大仁田が、あっけなく後藤の逆十字に屈する
(この日は「格闘技トーナメント」を意識しているのか、各人ギブアップ技が多かった)。
だが後藤も浅子戦で脇腹を負傷したらしく、動きに精彩がない。
この試合は体が痛んだ両者が、傷を深めないようにやんわりと試合をしているような印象。

すぐさま栗栖と後藤の決勝戦が行われたが、ここまで殆どダメージがない栗栖は元気いっぱい。
再び椅子攻撃、ストンピングで攻めまくった栗栖が後藤に逆片エビ固めを決めて優勝。
優勝トロフィーを受け取る栗栖。
そこに大仁田が入ってきた。
「栗栖ーっ!」叫ぶ大仁田。
どうやら栗栖の優勝が気に入らない様子。
場外で乱戦が行われる、しかし体を痛めている?大仁田は栗栖の攻撃を受けて北側観客席前でダウン。
栗栖はトロフィーで大仁田に殴りかかる、全日本時代の大仁田がやはりトロフィーでチャボ・ゲレロに攻撃されたシーンを想起させる。
ガシャンガシャンという音がして、トロフィーが壊れる。
すると栗栖が観客に攻撃。どうやら客が、持っていた紙コップのビールを栗栖に向かってかけたらしい。
騒乱のうちに興行は幕、みると松永が客席で状況を聞いている。
結局格闘技より何より、椅子持ってぶん殴った栗栖が優勝という結果しか残らなかったお寒いトーナメント。
初期FMWの、騒乱と格闘技を巻き込んだカオス状態がマイナスの方向に作用した、と結論づけるべきか。

(2005.0429)

1990(平成2)年1月7日 後楽園ホール FMW「第1回総合格闘技オープントーナメント」
観衆2450人(超満員)

1.女子エキシビジョンマッチ5分1本勝負
○松田久美子(片エビ固め、2:41)里美和●

2.トーナメント1回戦(3分5R)
○栗栖正伸(プロレス)(逆エビ固め、2R1:38)元 璋淵(テコンドー)

3.トーナメント1回戦(3分5R)
○松永光弘(空手)(反則、2R0:21)上田勉(キックボクシング)
*上田が急所攻撃。

4.トーナメント1回戦(3分5R)
○浅子文晴(サンボ)(反則、3R0:29)リー・ガク・スー(テコンドー)
*リーがレフェリー誤爆。

5.トーナメント1回戦(30分1本勝負)
○ターザン後藤(プロレス)(変形裸締め、4:14)今泉敏(柔道)

6.トーナメント1回戦(3分5R)
○大仁田厚(プロレス)(逆片エビ固め、2R0:57)ザ・シューター(シューティング?)

7.トーナメント2回戦(3分5R)
○栗栖正伸(リングアウト、2R1:10)松永光弘●

8.トーナメント2回戦(30分1本勝負)
○ターザン後藤(片エビ固め、6:14)浅子文晴●

9.トーナメント2回戦(30分1本勝負)
大仁田厚(ノーコンテスト)ビースト・ザ・バーバリアン(プロレス)
*ノーコンテストに両者納得がいかず、ビーストの保持するWWAブラスナックル王座をかけた再戦が行われる。

◎トーナメント2回戦再戦&WWAブラスナックル選手権(時間無制限1本勝負)
○大仁田厚(体固め、14:56)ビースト・ザ・バーバリアン●
*大仁田がWWAブラスナックル王座新王者になると同時に準決勝進出、時間はランニングタイム。

10.トーナメント準決勝(30分1本勝負)
○ターザン後藤(腕ひしぎ逆十字固め、3:32)大仁田厚●

11.トーナメント決勝戦(30分1本勝負)
○栗栖正伸(逆片エビ固め、7:58)ターザン後藤●
*栗栖が優勝。

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