No.232
衝撃の新世界誕生「K-1GRAND PRIX’93」第一回大会はシカティック優勝。


正道会館「K-1GRAND PRIX’93」
1993(平成5)年4月30日 東京・国立代々木第一体育館
同行者=千里眼他1名

佐竹、角田のリングス登場後、独自の興行を開催していた正道会館が開催した立ち技打撃系によるワンナイトトーナメント。
モーリス・スミス、ピーター・アーツ、佐竹、チャンプアなど有名選手8人が1日で覇を競う画期的な大会。
当時の週刊ファイトで読んだ記憶だと、藤原組に参戦していたプロレスラー、W.シャムロックとB.ベイルも出場選手のリストに入っていたらしい。
ルールは3分3R、ダウンカウント5、1Rに2度のダウンでTKOというハイスパートルール。
キックルール5Rに慣れた目からすると3Rでは物足りない気もするが、場合によっては1日3試合もやる選手の健康面も考慮してのものか。
或いは主催団体がトーナメント慣れしている空手の団体だからという発想も。
初期の開催はフジテレビの「LIVE UFO」というイベントに組み込まれてのものだった、放送もこの第一回大会は深夜。

第1試合、早くも日本期待の佐竹登場。
現役プロフットボウラーでありプロボクシングヘビー級ホワイトホープのトミー・モリソンの
スパーリング・パートナーでもあるとの触れ込みの巨漢ヘイズにローキックの集中砲火でKO勝ち。

第2試合、ブランコ・シカティックは日本初登場、この時点で日本ではほぼ無名。
月刊ゴング昭和58年2月号に掲載されているマーシャルアーツ・ランキング(「オフィシャル・カラテ」誌11号12月度発表分)の
ライト・ヘビー級(167.1ポンド〜175ポンド)第3位に「ブランミール・シカチク(ユーゴスラビア)」の名が確認されるが、彼のことなのか。
34歳という事だが眼光は鋭く、乗れない音楽での入場は不気味。
チャンプアとの体格差は身長で14センチ、体重で何と16キロ。
チャンプアの左ミドルも難なくブロックして見せる。
チャンプアも果敢にパンチを出すが体重差はいかんともしがたい、
シカティック前に出て左フックから右ストレートでチャンプアをロープ際までふっ飛ばしKO勝ち。
シカティックはノー・モーションに近く一見手打ちに見えるパンチが強烈、
無駄な動きが少なく体重移動がうまいのか底の知れない強さを見せた。

第3試合、モーリス・スミスは負傷欠場のスタン・ザ・マンの代打、正道会館の後川から3Rダウンを奪って判定で一蹴。
第4試合、そのスミス、8年間無敗の当時最強だったキックボクサーに土をつけたオランダの怪童P.アーツが登場、優勝候補筆頭だ。
相手はこちらも日本初登場、オランダのアーネスト・ホースト。細身で長身の黒人選手。
すでにリングスのマットでアダム・ワットを相手に圧勝の日本デビューを果たしていたアーツ。
しかし試合が始まるとローと顔面へのワンツーの打ち分けがうまいホーストの前に、アーツ手が出ずズルズルと時間が経過してゆく。
判定は文句なし(実際は2-0)でホースト、またも日本で無名の選手が勝利、優勝候補のアーツが1回戦で消えた!
どよめきに包まれる館内。しかし大会はまだ1回戦が終わったばかりなのだ。
準決勝は佐竹-シカティック、スミス-ホーストの組み合わせとなった。

準決勝、アーツが消えて優勝の期待がかかる佐竹、しかし緊張からか待ちに回って手数が少ない。
シカティックも決して手数が多いほうではないが、それでも重いパンチ、時折繰り出すバックキックで佐竹にプレッシャーを掛ける。
3R、両者のパンチが交錯したがシカティックの左フックがヒット、佐竹腰から崩れ落ちて初のKO負け、残念!

もう一つの準決勝、残った大物スミスが勝ち上がるか、しかしホーストのローキックの前にスミス動きがよくない。
3R突如の衝撃、ホーストのハイキックがスミスの首筋を捕らえ落ちるようにスミスがダウン、すかさず試合を止めるレフェリー。
全日本キックで無敵だったモーリス・スミスが衝撃のKO負け!
総立ちの観客の見つめる中、クネクネと勝利のダンスを踊るホースト!アナウンスの声が伝わる。
「この結果、決勝戦はブランコ・シカティックとアーネスト・ホーストの間で行われることが決定しました」
場内異様な興奮、日本では全く無名の選手同士で決勝が争われることになった。
しかし決勝が日本で知名度のない2選手によって行われることになっても場内は白けた雰囲気がない。
むしろ異様な興奮と熱気が支配している。
準決勝の強烈なKOシーンが観客を酔わせたのか。

決勝戦、第1Rでシカティックのモーションの少ない右ストレートが炸裂、
足が揃ったホーストは尻からマットに落ちあおむけで失神KO!
この瞬間クロアチアのB.シカティックが3試合ともノックアウト勝ちの圧勝で世界最強の座を射止めた。
トーナメント7試合中5試合がKO決着という壮絶さ、また日本での知名度の高い選手が次々敗北してゆき決勝は(日本で)無名同士の対戦という意外性。
何もかもが衝撃の大会だった、世界はまだまだ広い。無名でも強い選手がまだまだ存在する、そう思った。
そういった選手を次々と登場させて毎年のトーナメントを定着させていったK-1は次第に怪物化してゆき
僅か4年後の97年、スポンサー付きの冠大会を東京ドームで開催するまでの巨大産業に成長し、プロ格闘技の市民権を獲得するまでに至る。
恐るべし、恐るべしK-1。

【アンディ・フグの空手マッチ】
決勝戦の前にアンディ・フグ対角田の空手マッチが行なわれ、角田はフグのかかと落としを2度かわすうまい動きを見せたが
2度の膝蹴りによる技有りを取られ合わせ1本でフグの勝ち。
試合後フグは次年グローブマッチを行なうことを表明、トーナメント王者とのワンマッチ対戦を希望。

【産経新聞】
翌日の産経新聞(サンケイスポーツではない一般紙)の運動面には
「格闘技世界最強トーナメント シカティック優勝」との記事が。
一般の人、いきなり「シカティック」って載っててもわかんないよなあ(笑)。
まあ「LIVE UFO」はフジサンケイグループのイベントだし結果が掲載されているのはおかしくないだろうけど。

(2005.1023)

正道会館
「LIVE UFO’93 SPORTS SPECIAL
K-1 GRAND PRIX’93
10万ドル争奪格闘技世界最強トーナメント」
1993(平成5)年4月30日 東京・国立代々木第一体育館
観衆1万2000人(超満員)=主催者発表

1.トーナメント1回戦(3分3R)
○佐竹雅昭(KO、2R0:45)トド・ハリウッド・ヘイズ●
*右ローキック。

2.トーナメント1回戦(3分3R)
○ブランコ・シカティック(KO、1R2:35)チャンプア・ゲッソンリット●
*右ストレート。

3.トーナメント1回戦(3分3R)
○モーリス・スミス(判定3-0)後川聡之●
*後川は負傷欠場のスタン・ザ・マンの代打。

4.トーナメント1回戦(3分3R)
○アーネスト・ホースト(判定2-0)ピーター・アーツ●

5.エキシビジョンマッチ・総合格闘技ルール5分(顔面攻撃なし)
△平直行(時間切れドロー)内田弥△

6.スペシャルワンマッチ・フルコンタクト空手ルール(3分3R)
○金泰永(再延長判定、2−0)マイケル・トンプソン●

7.トーナメント準決勝(3分3R)
○B.シカティック(KO、3R0:45)佐竹雅昭●
*左フック。

8.トーナメント準決勝(3分3R)
○E.ホースト(KO、3R1:18)M.スミス●
*左ハイキック。

9.スペシャルワンマッチ・フルコンタクト空手ルール(3分3R)
○アンディ・フグ(合わせ1本勝ち、2R1:26)角田信朗●

10.トーナメント決勝戦(3分3R・決勝のみダウンカウント10)
○B.シカティック(KO、1R2:49)E.ホースト●
*右ストレート。シカティックが第一回大会優勝。


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