No.268「PRIDE GP2000決勝戦」桜庭が90分の死闘でホイス・グレイシーに歴史的勝利!


DSE「PRIDE GP2000決勝戦」
2000(平成12)年5月1日 東京ドーム
同行者=なし

1回戦を勝利したホイスらグレイシー側は大会ルールの変更を要求。
15分1ラウンドのトーナメントルールを15分無制限ラウンドに、
しかも判定決着なしレフェリーストップなしの準デスマッチルール。
レフェリーストップなしという要求は、前年有明での桜庭-ホイラー戦が桜庭のアームロックが決まったあと
レフェリーがこれ以上は危険と判断してストップ、
桜庭の勝利としたことに対する不満の表れだろう。
結局、ホイスがらみの試合のみ、このルールを適用するということで合意。
アメリカサイドの選手もこのグレイシー側の要求には怒りを覚え桜庭側に同調、「対グレイシー」の包囲網が出来た。

【桜庭-ホイス】
グレイシー側は「ラスト・モヒカンのテーマ」にのってグレイシートレインでの入場、場内ブーイング。ホイスは道着にOFG着用といういでたち。
桜庭はストロング・マシンのマスク(ラメ入り)で登場、曲はおなじみ「スピード2」、二人の従者もマシンマスク着用で幻惑。
選手コールと同時にマスクを脱いだ桜庭の髪は赤く染められていた。
主審チェックのあとゴング、ついに時間無制限の決闘が開始された。
パンチで突っ込むホイス、桜庭タックルで倒して上になるとホイスがガードポジションからの引き込みを狙う。
下からパンチのホイス、桜庭付き合わず立ち上がってローキック、ホイスも立上がってロープに押し込んでもろ差し。
ホイス細かい膝蹴りを桜庭の腿に、しかし桜庭冷静。
自ら倒れて引き込みを狙うホイス、しかし失敗すると桜庭の足に絡みつく。
桜庭踏ん張るとホイス桜庭のバックを取る、しかし桜庭ホイスの右腕を取りコーナーで上半身をロープの外に出した状態でホイスを捕獲。
ホイスうしろから桜庭の腿に膝蹴り。桜庭膝蹴りをブロックすると同時に右腕をロックしてロープの外に。
動けないホイス、左手での打撃を試みるがさほど効果なし。
ロープブレイクがない総合のルールをうまく利用した攻撃、東京ドームのビジョンに桜庭の笑顔が大写し!
桜庭、ホイスの右腕をねじり上げる、ホイス桜庭の足を取ったりして抵抗、ロックが外れるとホイスが側頭部へのパンチを後ろから打つ。
スタンドで膠着したためドントムーブ後ロープ際同じような態勢で再開、ホイスが後ろからの引き込みを狙うが桜庭ホイスを押し倒してローキック。
ホイスが立ち上がっのでスタンドで向き合う両者。ホイスがハイキックからロー、空振り。
ホイスがパンチで突進、足取り失敗から組み合ってスタンド。後ろから組みついたホイスが足を踏みつけ。桜庭は再び腕狙いの様子。
ホイス後ろから引っぱって桜庭をテイクダウンさせるが桜庭がグランドでホイスの足を取る。
桜庭膝十字固め狙い、ホイス自分の足をロックして抵抗、第1ラウンド残り1分。
桜庭、ホイスの一瞬の体重移動の隙を突いて左足を取ることに成功。ホイス、パンチで抵抗。
桜庭がホイスの左足をロックしたまま身体を伸ばすと、膝十字固めが決まる。
大歓声の場内、だがここで1ラウンド終了のゴング、握手をして分かれる桜庭とホイス。

第2ラウンド、桜庭が前進してプレッシャーを掛ける。ホイス突進、ロープ際で組み合う。
ホイスが桜庭をコーナーに押し込む。桜庭、ホイスの道着を少しずつ引っぱって乱す。
桜庭ベアハッグの奇襲、ホイス飛びついての引き込みを狙うが桜庭踏ん張って倒れない。「風車吊り」あるいは「駅弁固め」のような体勢。
再びスタンドでコーナー。桜庭再度ホイスの上着の裾を持つ、たくし上げて道着をホイスの頭にかぶせようとする不思議ムーブ。
ホイス怒ったかパンチで応戦。桜庭道着を離さず膝蹴り。
桜庭今度はホイスの上着を脱がしにかかる、ホイス怒りの表情で桜庭にネックロック、自分の道着をつかんで固める。
すると桜庭道着の下を脱がそうとする構え、「何やってるんだこいつは」といったホイスの表情。
ホイスの膝蹴りを桜庭がキャッチして倒して上、しかしネックロックは決まったまま。
桜庭がこの体勢で粘って第2ラウンド終了。

第3ラウンド、ホイスがアリキック。突進したホイスがコーナー際で転倒、桜庭上になるがホイスがガード。
コーナーに桜庭を押し込んだホイスが足踏みつけ。ホイスがグランドでアリキック連打、桜庭も上からのローキックで応戦、猪木アリ状態。
桜庭のローがホイスの腿に命中、効いた感じでホイス立ち上がる。
スタンドで桜庭ローキック連打、ホイスが飛び込むと道着をつかんで腕を張って、組ませない。
ホイススライディングローから猪木アリ状態。スタンド再開、掴みに来るホイスに桜庭のローキックがびしびし当たる。
自分の型に持ち込めないホイスが焦りの表情。

第4ラウンド、キックに来たホイスの足を桜庭がキャッチして倒す。
グランドでの引き込みを狙うホイスにいっさいつきあわず立ち続ける桜庭。
第5ラウンド、ホイスが引き込んでグランド、桜庭が上。
ガードポジションから桜庭パンチ連打、そしてモンゴリアンチョップ!
さらに桜庭、ホイスの道着をつかんで体勢をひっくり返し「はずかし固め」からストレートを顔面に落とす。
同じ体勢で桜庭が珍しい顔面踏み付けに出たところでゴング。

第6ラウンド、ホイスの突進を桜庭キャッチしてグランド、桜庭が上。
ホイスが三角絞め狙いの動きをすると桜庭深追いせずにすっと立つ。
桜庭のローキック、ホイス効いたか大きく後退。
ホイスが突進→倒れて猪木アリ状態→桜庭のローキックがヒット、この展開が続く。
スタンドのローがヒットしてホイスが大きくバランスを崩すシーンも。
左足を痛めたようなホイス、あきらめずに何度も突進するがそのつど桜庭のパンチ、ローがヒット。
ホイス消耗が激しそう。グレイシー側のセコンドが緊迫した状況。
ホイスが何事かセコンドのホリオン・グレイシーに言葉をかける。
ホリオンがタオルを握り締める手がビジョンに映ると、場内大歓声!
再びホイスが突進、桜庭いなして倒れたホイスにパンチ、猪木アリ状態から桜庭腰に手を当てて仁王立ち!
桜庭豪快にジャンピングしてのパスガード。
猪木アリ状態での睨み合いから6ラウンド終了のゴング。

第7ラウンド開始前、ホイス側コーナーが不穏な雰囲気。
エリオ、ホリオンがホイスになにやら話しているが、セコンドアウトのコールに応じず。
島田レフェリーが話しかけると、ホリオンがタオルを投げた!
グレイシー側がギブアップ!桜庭の勝利!この瞬間、客、総立ち!
とどまることを知らないかのようなスタンディングオベーションが続く中、両手を挙げて応える桜庭。ホイスと握手、ホイス側のセコンドとも握手。
さらに長老エリオと桜庭の握手シーンも現出、ファンタジックなシーンだ。
総合格闘技のパイオニアたるホイス・グレイシーに
日本人レスラー桜庭が圧勝した事実は、日本格闘技界の大金字塔である。

桜庭の、ホイスの引き込んでのグランドに付き合わず自分のペースを守った試合が結実した。
長い長い試合だったが、桜庭のバリエーション豊かな攻撃パターンが随所に見られ、全く飽きることのない好勝負だった。


【藤田-M.ケアー】
当時「霊長類ヒト科最強」と呼ばれていたプライド無敗のケアーに相対した総合2戦目の藤田。
藤田は短い金髪、ケアーははじめて見るスキンヘッドで登場。
ケアーがタックルから藤田を抱え上げてテイクダウン、ケアーが上になる。ケアー上からパンチ。
立上がりざまケアーが顔面に膝蹴り連打。しかし藤田立ち上がってパンチ、ケアーのタックルを藤田ががぶってはずす。
藤田が足に絡みつくケアーの頭部を押さえてコントロール、倒れない。
藤田、片足タックルでケアーをテイクダウン、足を持ってコントロール、バックに回ってケアーの側頭部にパンチ連打。
ケアーの動きが止まる、藤田かまわず脇腹に4点膝攻撃。
藤田ケアーにスリーパー狙い、はずれると側頭部に鉄槌、脇腹にヒジ。攻めまくる。
藤田再びスリーパー狙うも失敗、しかし腰にしがみついてケアーを逃がさない粘りの攻撃。
藤田追い討ちの4点膝、判定は文句なく藤田、優勝候補を破った。


【桜庭-I.ボブチャンチン】
桜庭は前日記者会見で「ホイスに勝ったら準決勝には出ない」と公言していたが・・・
しかし「スピード2」は再び場内に鳴り渡った。
おそらく桜庭サイドは準決勝を出ないことにするとグレイシー側から
「桜庭も次の試合を欠場したからダメージを負った」と、ダメージでは同等との言い訳をされるのでは、と考えたのではないか。
桜庭片足タックルから上。桜庭立って横からパスガード、腕ひしぎ狙いも失敗、惜しい。
スタンドでボブがバックを取ってバックドロップから側頭部へのパンチ。
ドントムーブで再開、ボブ上から殴る、桜庭目尻から流血。
判定はドロー、延長戦へ。しかし体力の消耗が激しい桜庭を見てセコンドが決断、高田がタオル投入のゼスチャー、
ホイス戦90分、ボブ戦15分、計105分試合をした桜庭が棄権、しかしここまでの健闘は充分すぎる、感動を呼んだ。


【藤田-M.コールマン】
コールマンは2回戦で小路に上から殴りまくって判定ながら圧勝。
オーケストラ版「イノキブンバイエ」で入場してきた藤田だが、左足が包帯グルグルで足を引きずっている。
何だかいやな予感・・・。
ゴングと同時に藤田、コールマンに突進してタックルを仕掛ける。
しかし藤田のセコンドのB.ジョンストンがタオルを投げ入れる。
何だかわからないままに速攻で試合終了。
やはり藤田は足を怪我していたようだった。
試合時間2秒。っていうか試合になってない。
藤田はマイクで「前の試合で左足の靭帯が切れた」と説明。

プライド史上最大の謎の「試合」、ってもう忘れかけられているけど(笑)。
普通は藤田がそれほどの重傷ならドクターストップがかかるはずではないか。
それに試合開始後すぐタオル投入するなら、試合に出る意味がないのではないか。
前回の1回戦ではリザーバーがいたが(ヴァンダレイ・シウバ!)この日はいなかったのか?
敗者繰り上がりも、ケアーの体調が悪くて適わなかったか(その後ケアーは薬物関与が発覚する)。
契約の問題で試合をしなくてもリングに上がって「試合をしたことにする」必要があったのか。
さまざまな憶測をしてみたが。


【M.コールマン-I.ボブチャンチン】
決勝戦は20分無制限ラウンド、判定なし(ルールどおり)。
タックルでテイクダウンさせて上になりパンチ、アームロックで攻めるコールマン。
2ラウンド、コーナーで仰向けの状態でボブを固定したコールマンが4点膝攻撃を脳天に連打。
たまらずボブがタップ。UFC優勝経験者には失礼だが伏兵のコールマンがトーナメント優勝。
やはり藤田戦で2秒勝利、っていうか実質一試合少ない展開でスタミナ温存できたコールマンは圧倒的に有利だった。
試合終了は10時を過ぎた。日本勢は優勝できなかったが桜庭がホイス、藤田がケアーを破った試合は充分満足だった。

(2006.0422)
*当時のフジテレビの放送を録画したビデオを参考にしました。

DSE「PRIDE GP2000決勝戦」
2000(平成12)年5月1日 東京ドーム
観衆3万8429人

1.トーナメント準々決勝15分1R
○イゴール・ボブチャンチン(KO、10:14)ゲーリー・グッドリッジ●
*右フックからパウンド連打。

2.トーナメント準々決勝15分無制限ラウンド
○桜庭和志(TKO、6R終了)ホイス・グレイシー●
*セコンドのタオル投入。

3.トーナメント準々決勝15分1R
○マーク・コールマン(判定3-0)小路晃●

4.トーナメント準々決勝15分1R
○藤田和之(判定3-0)マーク・ケアー●

5.10分2R
○ガイ・メッツアー(判定3-0)佐竹雅昭●

6.トーナメント準々決勝15分1R
○イゴール・ボブチャンチン(TKO、1R終了)桜庭和志●
*セコンドのタオル投入。

7.トーナメント準々決勝15分1R
○マーク・コールマン(TKO、0:02)藤田和之●
*セコンドのタオル投入。

8.10分2R
○ケン・シャムロック(TKO、1R9:43)アレクサンダー大塚●
*左フック。

9.トーナメント決勝戦20分無制限ラウンド
○マーク・コールマン(TKO、2R3:09)イゴール・ボブチャンチン●
*頭部膝攻撃によるタップアウト、コールマンが第一回大会優勝。

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