No.226
若き将軍がミドル級天下盗り、ヘビー級選手権は氷の皇帝の勝利/
「PRIDE GRANDPRIX 2005 決勝大会」
「PRIDE GRANDPRIX 2005 決勝大会」
2005(平成17)年8月28日 さいたまスーパーアリーナ
同行者=なし
Pride Fc: Grand Prix 2005 (3pc) [DVD] [Import]
新品価格
¥2,644
から
(2010/9/13 02:34時点)
【シウバ-アローナ】
シウバは現在ブラジルのシュート・ボクセで練習している桜庭から託された阪神タイガーズの野球帽をかぶって入場。
両者見合う時間が長い、シウバがローで牽制。
じわじわ距離を詰める両者。
数回の打撃の交換があった後、アローナの右ローでシウバが倒れる、アローナ飛び込んで上になる。
ドントムーブから再開。
アローナ、上からシウバの脇腹にパンチ。ここで5分経過。
アローナ、上からパウンド、シウバ脱出できず苦しい展開。
アローナ、大きいモーションからの鉄槌打ち、シウバ防戦一方。
ブレイクしてスタンドから再開、シウバにイエロー1枚。
シウバがパンチで入ると、両者が膝蹴りで相打ち、しかし倒れるとまたアローナが上になる。
アローナの絶妙な体裁きがシウバに何もさせない。
アローナ、上から鉄槌打ち、パンチ、残り1分。
アローナ、上から大きく振りかぶっての鉄槌打ち、振りかぶると下になっている選手からは腕の位置が見えなくて防御が難しいか。
スタンドに戻ったところで1R終了、かなりアローナ優勢。
インターバル中もアローナは余裕の表情、逆にシウバはきつい表情。
2R、自分からポイントを取りに行かないとシウバは負ける。
そんなシウバのローキックを、まるであざ笑うかのようにかわすアローナ。
アローナ、大きく飛び込んでの左フックは不発、シウバが右ストレートで突進、アローナをコーナーに詰める、シウバ初めての優勢シーン。
場内シウバコール。桜庭に3タテを食らわしたブラジルのヒールが認知されている!
2R3分経過、シウバ攻め手なくタイムストップ、両者に消極性でイエローカード。
シウバ前に出てパンチ、しかしアローナタックル、シウバがタックルを切るもアローナ再度のタックルで倒して上になる、この攻防は素晴しかった。
ドントムーブからアローナ左右の鉄槌打ち、シウバ下になって攻め手なく。
そのまま判定へ。3-0でアローナ。
絶対王者シウバが同体重でのプライド初敗北。しかも殆ど何もさせてもらえずに負けた、アローナ恐るべし。
【ショーグン−アリスター】
アリスターはハンマーを携えての入場。先導のねーちゃんが持つ国旗はネーデルランドと日の丸のリバーシブル。
ショーグンとアリスターがレフェリーチェックで相対するとかなりの身長差。
190cm超と恵まれた体格のアリスターが一発大穴を出すか。ゴングが鳴った。
いきなり組み合う両者。
アリスターが倒して上に、早くもフロントチョークスリーパー狙い。
スタンドになってまた組み合う、アリスター膝蹴りからテイクダウンを取って上になる。
またスタンドに移行して膝蹴りの応酬。
ボディへの膝蹴りは長身のアリスターが優勢か。
アリスター、テイクダウンさせて頭部に4点膝攻撃。
ショーグン逃げるもアリスター再びフロントチョークスリーパー狙い。
ショーグンしつこくボディに絡み付いて逃げる。
アリスター、再度フロントチョークスリーパー、決まったかと思ったがショーグン決死の脱出。
立ち上がったショーグン、アリスターの顔面に蹴り、アリスターはショーグンの足にしがみついてのディフェンス。
フロントチョークスリーパー脱出から流れが変わったか、ショーグンの動きがよくなった。
グラウンドでサイドから左腕の関節狙い。
ショーグン、ニーオンザベリーで固定してのパンチ、立ち上がるとアリスターの頭部にキック。
アリスター足にしがみついてディフェンス。
スタンドからクリンチでショーグンが倒して上になる。
ショーグン、マウントを奪って顔面にパウンド。
ショーグン、アリスターの肩に膝を乗せて固定してのパンチ連打、これでKO。
前半はアリスターが優勢だったがフロントチョークスリーパーが抜けてからガラリと形勢が逆転し、ショーグンが勝利した。
ここでハンガリーで行われるレスリング世界選手権に出場する日本チームがリング上で紹介された。
男子より女子の方が声援が多い、一番声援が多かったのは最後に入場した浜口京子。
富山代表のスピーチの後、男子の代表と女子の代表(浜口京子)が挨拶。
最後は浜口京子の「気合だー!」で締め。
DSEがレスラーのプロ転向への受け皿としての存在をアピールしたデモンストレーションと感じた。
【吉田-アボット】
タンク・アボットを生で見るのは2回目。最初はUFC-Jの横浜アリーナ大会だった
(桜庭がトーナメントを制し「プロレスラーは強いんです」発言をした日!)。
体重の軽い吉田が4点ポジションを認めたためグラウンドでの打撃が有効のルール。
タンク左ジャブ、吉田左ハイキック、しかし空振り。タンクがタックルで倒して上になる。
吉田、タンクの腕をつかんでディフェンス。三角絞め狙い。
タンクは吉田のうまいディフェンスで腕を抑えられ、パウンドが打てない。
ドントムーブから再開。
タンクが上から押し込む、吉田グラウンドでずるずると後退、ロープ際で吉田が下から十字狙い。足がロープに引っかかる。
タンクがサイドから打撃狙い、再びドントムーブ、進展しない試合に客席からブーイング。
5分経過、両者にイエロー1枚、スタンドから再開。
スタンドで吉田のパンチが当たる。
タンクのタックルを吉田踏ん張って逆にフロントスリーパーから頭部に4点膝。
吉田、グランドでバックに回って片羽絞め、タンクがタップして決着。
試合後の吉田のマイク。
「・・・(相手が)重かったです。でも皆さんの声援があれば、重い方でも『できるかな?』」
暗にヘビー級へのチャレンジを示唆。
【ヒョードル-ミルコ】
試合前のVTRはいっさいのナレーションがなく、戦乱のクロアチアの状況を映す。
そのバックに映画「ターミネーター」のサウンドトラックが重苦しくのしかかる。
少年時代のミルコの写真、立ち並ぶ墓標、何事かを語る女性(ミルコの母親?)。
成長したミルコがプライドのファイターとなり、しかしノゲイラ、ランデルマンに敗北する場面。ミルコの挫折。
そのミルコが実弟アレキサンダーと対戦した試合の映像を見るヒョードル。
ミルコがハイキックでダウンしたアレキサンダーに追い討ちのパンチを撃つ残酷なシーン、
ヒョードル「やめろ」「もうやめろ」。
両者ののっぴきならない「怒り」の表現。
しかしどちらかというとミルコが主役の物語という仕上がり。
2年間待った世紀の一戦開始。
ミルコ、サウスポーの構え。
ヒョードルが前に出てプレッシャーをかける。
回るミルコ、追うヒョードルという展開になった。
これはおそらくミルコには意外な展開になったのでは。
前進してプレッシャーをかけるヒョードルの前に、下がるミルコは左ハイキックを打てない。
ヒョードル、長い右フックからクリンチ、これは離れる。
ミルコが左ミドル、ヒョードルこれをブロック。
ヒョードル、ロープに詰めてパンチ連打、スタンドでもヒョードルが分が悪いということがない。
ミルコ左ハイ!ヒョードルこれをキャッチして倒そうとするがリング下に落ちそうになる。
緊張したスタンドの睨み合いから時々打撃が交錯する展開、しかしヒョードルがスタンドの打撃で互角以上の戦い。
ヒョードル、長い左フック、ミルコ少しがくっとなる。
ミルコ左ハイ当てるもヒョードル倒れず、打点をずらしているのか。
絡み合ってグランドに、ヒョードル右のまぶたから出血。ミルコのパンチが当たったよう。
リングス時代の高阪戦といい、昨年のGPノゲイラ戦(8月)といい、ヒョードルは皮膚が切れやすい体質なのか。
ミルコ左を撃ちながら突進、ヒョードルぐらつく。しかしヒョードル右のフック1発でミルコを吹っ飛ばす。
追うヒョードルに体勢を立て直したミルコが左ハイ、しかし当たらずテイクダウン。
ここでヒョードルの出血をドクターチェック。
グラウンドの状態で再開後、ヒョードルが飛び込んでのパウンド。
立ち上がって少し距離をとりまたパウンドで飛び込む。
ヒョードルの流血がまたひどくなる、インターバルをとってチェック。グラウンドで再開。
ヒョードルが立ち上がって飛び込むパウンド。ミルコ下から蹴り上げる。
1R残り3分、グラウンドで上四方の体勢を取ったヒョードル、その後一瞬マウントを取るもミルコがガード。
ヒョードルの上からのパウンドを、ミルコ下から肩の回転運動で差し手を返してうまくディフェンス。
しかし徐々にヒョードルのパウンドがミルコの顔面に当たるようになってゆく。
2R開始、ヒョードルが右ハイキックを披露、右ハイからのパンチ。
ヒョードルの、スタンドでプッシャーをかける作戦か。
ミルコ左ミドルキック、ヒョードルが腕でブロック。
ミルコ今度は左ハイキック、ヒョードルかわす。
ヒョードル左ストレートから突進、ロープ際でクリンチ。
離れ際ヒョードルが左フック、当たる。
ミルコ右ハイキック出すが、疲れた表情。スタミナ切れした様子。
ヒョードル組み付いてボディに膝蹴り。
ミルコ、クリンチしての表情がビジョンに映る、弱々しい表情。
2R3分経過、ヒョードルがテイクダウンさせて上、ロープに近かったのでドントムーブで中央に。
ヒョードルが細かいパウンドをこつこつ当てるようになる。
最終ラウンド、ヒョードルは動きがまだいい。右フック。
クリンチになってミルコが一瞬バックを取って倒すもヒョードルが上。
ドントムーブ後再開、ヒョードルが鉄槌打ち連打、一瞬ミルコがタップしたように見えたが続行。
ブレイクでスタンドから再開、ミルコに膠着誘発のイエロー1枚。
またヒョードルが倒して上になってパウンド。
再びスタンドから再開、両者にイエロー1枚ずつ。
再度ヒョードルが倒して上になってのパウンド、という場面で試合終了、判定は3-0でヒョードル王座防衛に成功。
タフな試合だった。勝ったヒョードルも序盤ミルコのパンチで流血し顔面にダメージを負った、決して楽勝ではない。
ヒョードルのグランドでの攻撃をしのぎ、サブミッションなどを決めさせなかったミルコも、寝技のディフェンスの進歩が伺われる。
ミルコにしてはヒョードルがあれほどスタンドの打撃が出来るということが予想外だったのでは。
ヒョードルはオランダでのスタンド打撃練習が実ったか、
そして常に前へ出てプレッシャーをかけて、距離を潰してミルコ必殺の左ハイを封じた作戦は見事。
左ハイという必殺技があるミルコに対して、距離を潰すためとはいえ前に出続けたヒョードルの勇気は賞賛に値すると思う。
穴が見つからないヒョードルの次の挑戦者は・・・やはりハリトーノフでは。
【ショーグン-アローナ】
準決勝で敗北した王者・シウバが同門のショーグンを応援。
アローナは余裕の表情、リラックスしている感じがする。
ショーグンは小刻みに体を動かして闘志が爆発寸前といった感じ。
開始早々、ショーグンのド派手な回転バックキック。これはかわされるがその後すぐにショーグンがパンチの猛攻。
アローナが組みついての投げ、ショーグン崩してグランド、アローナの腕を逆にとって回転、面白い動き。
スタンドに移行してショーグンがパンチ、アローナしがみついてひきずり倒すがすぐスタンドに。
ショーグン、テイクダウンから上になる、ショーグン、アローナからサイドをとって脇腹に打撃、流れがショーグンのものになった。
ショーグン、上四方の体勢からアローナの頭部に4点膝攻撃。
ショーグンが立ち上がって猪木・アリ状態。しかしショーグンが飛び込んでのストンピング、これがいい感じでアローナの上を取れてショーグンが勢いに任せてのパウンド連打。
アローナ半失神状態でストップ、ショーグンが同門・シウバの仇をとってグランプリ制覇。
早い打撃攻撃で試合の流れを自分のものにしたショーグンが勝利を勝ち取った。
シウバとの同門対決(ミドル級タイトルマッチ)は実現するのか。
(2004.0828)
*その他の試合
【中村−ボブチャンチン】
試合前のプロモVTRが笑える。前回シウバ戦での中村の、試合途中で青い柔道着を脱ぎ捨てた件が追求される(本人のインタビューつき)。
入場曲はボブチャンチンがレッドブル軍団の曲「レッド・スペクタクル」、懐かしくあるが年月が経過してもインパクトが落ちない名曲だ。
中村の入場曲は三味線が入ったロック調、中村花道の途中で件の青い柔道着を脱ぎ去る。
中村牽制のハイキックからタックル、猪木・アリ状態からボブ強引に入る。
ボブ、中村の足を取って片エビの体勢からサイドに回ってパウンドを打ち降ろす。
中村、下から相手の腕を取って抵抗するもボブがマウントポジションを奪う。
ここでドントムーブ、中央に。ボブ、中村の脇腹に細かいパンチ。中村返して上を取る。ドントムーブ。
中村、立ち上がってから飛び込んでのパウンド、ボブ腕ひしぎ狙い、スタンドへ移行。
パンチの交錯からボブが胴に抱きついてテイクダウン、ボブが上。
ボブ膝での打撃、左ひじでのギロチン狙い。中村足関節狙い。
ボブ一旦立ち上がってから飛び込んでサイドを取る。中村これを返して上に、サイドを取り返す。
中村、左膝で頭部狙いもボブが右手で巧みなディフェンス。
中村がグランドから肩、腕の関節狙い。
残り1分で中村がマウント奪取、腕ひしぎ逆十字狙い、はずれてボブが上。
1R終了、やや中村優勢か。
2R、中村タックル失敗、ボブが上になるが中村が回転して脱出、逆に上になる。
この回転、一回背を見せながら回転した後に逆回転するという動き、印象に残った。
ドントムーブで中央から、中村上からサイドに移行、右腕にアームロック、しかし外れてボブが上。
残り1分、スタンドから再開(消極性で両者イエロー1枚)。
中村タックルすかされてボブが上、判定は3−0で中村。
三段論法はあまり好まないが1回戦でパンクラスの近藤に何もさせないで勝利したボブチャンチンを僅差ながら破った中村はかなり実力をつけているのでは。
【ヴェウドゥム-ゼンツォフ】
ヴェウドゥムはブラジルの柔術ファイターでミルコの寝技の師匠。ゼンツォフはヒョードルと同じレッド・デビル所属で影武者と呼ばれる選手、いわばヘビー級選手権の代理戦争。
ゼンツォフの入場曲は乗れない、ロマンチックな曲だなあ。
往々にして東欧圏の選手はもっと選曲のセンスを磨くべきではなかろうか、ミルコの「ワイルド・ボーイズ(デュラン・デュラン)」以外。
ゼンツォフ、左肩に宮本武蔵のタトゥー。ヴェウドゥムは耳がでかい。
試合開始、ヴェウドゥム大きく飛び込んでタックル、1度目は切られるも2度目成功、テイクダウン。
ヴェウドゥム、ゼンツォフをコーナーに押し付けて早くもマウントを取る、試合展開がうまい。
ドントムーブで中央へ、逃げようとするゼンツォフにヴェウドゥムがしつこくグランドでからむ。
ゼンツォフが上になってパウンド、ヴェウドゥム下から三角狙い。ゼンツォフ体勢を入れ替えて4点膝狙い。
スタンドに移行、ヴェウドゥムしがみついて右足を大きく刈り込んでゼンツォフをテイクダウンさせる。
ヴェウドゥム、サイドポジションから左腕をアームロック、さらにはずれて細かいパンチ。
いやがるゼンツォフ、後ろ向きになる。ヴェウドゥム絶好のポジション、体勢を入れ替えて腕ひしぎ逆十字でタップを奪う。
ヴェウドゥムはグランドが強い選手、ねちっこさはノゲイラの泥臭さとは違う何か科学的な印象。
プライドヘビー級トップ3(ヒョードル、ノゲイラ、ミルコ)&ハリトーノフに匹敵する実力者と見たが、スタンドの打撃はともかく。
今後楽しみな選手。
(2005.0903)
「PRIDE GRANDPRIX 2005 決勝大会」
2005(平成17)年8月28日 さいたまスーパーアリーナ
観衆4万7629人(超満員札止め、 さいたまSA史上最高タイ記録)
1.ミドル級GPリザーブマッチ2R制(1R10分、2R5分)
○中村和裕(判定3-0)イゴール・ボブチャンチン●
2.ミドル級GP 準決勝戦2R制(1R10分、2R5分)
○ヒカルド・アローナ(判定3-0)ヴァンダレイ・シウバ●
3.ミドル級GP 準決勝戦2R制(1R10分、2R5分)
○マウリシオ・ショーグン(KO、1R6:42)アリスター・オーフレイム●
*パウンド連打。
4.1R10分、2,3R5分
○ファブリシオ・ヴェウドゥム(腕ひしぎ逆十字固め、1R4:01)ローマン・ゼンツォフ●
5.1R10分、2,3R5分
○吉田秀彦(片羽絞め、1R7:12)タンク・アボット●
6.PRIDEヘビー級タイトルマッチ(1R10分、2,3R5分)
○エメリヤーエンコ・ヒョードル(判定3-0)ミルコ・クロコップ●
*ヒョードルが王座防衛。
7.ミドル級GP決勝戦2R制(1R10分、2R5分)
○マウリシオ・ショーグン(KO、1R2:53)ヒカルド・アローナ●
*踏み付けで飛び込んでのパウンド連打。ショーグンがミドル級GP初優勝。
生観戦記2005に戻る
SAMEDASU扉に戻る