No.392
元横綱・双葉山が警官相手に大暴れ、璽光尊事件

    
戦前の大横綱・不滅の69連勝を記録した双葉山(当時は引退して時津風親方)が、
宗教を信仰し立てこもり、石川県警の警官隊と乱闘になった事件。

1947(昭和22)年1月21日、金沢で石川県警は新宗教・璽宇(じう)を「世人を惑わす」として取り締まりを敢行。
表向きの手入れ理由は「刀剣所持禁止令」「主食移動禁止令」「詐欺罪」によるものだったが
実際は璽宇教祖の璽光尊こと長岡良子(ながおか ながこ)が「皇位の正当な後継者」を称し
超国家主義としての新宗教(独自の貨幣まで発行していた)が力を持つことに対しての政治的弾圧だった、との説が強い。

「双葉山は蓄膿症の手術をしたころから熱心な日蓮宗の信者であったというが、
このときなぜ璽宇に帰依していたのかについては謎も多く、
日本の敗戦による虚脱感から、
璽光尊の奸計にはまったから、などの説があるが、
いずにれせよ双葉山の求道的な性格が裏目に出たものと言われている」(参考資料1より)

元双葉山の時津風親方の大立ち回り。参考資料2掲載の1月23日付朝日新聞より。
「(前略)そのなかに双葉山関は国民服の上にジャンパー、巻ゲートル、防空ずきんというものものしいいでたちで、
階上の神前で鏑木隊長と押問答していたが、ラチがあかずと見るや一尺六寸余の太鼓のバチであばれ始めたので殺気立ち、
柔道四段の鏑木隊長はヤニワに天下の横綱にいどんで左四つ、
むんずと組み付きよってたかってようやく組み伏せ、大力をくじかれたころ警官隊に抱きかかえられて
消防車に運び込まれそのまま玉川署にもっていかれた(後略)」
公務執行妨害で時津風親方は逮捕されたそう。

横綱に挑んで横綱得意の左四つになった柔道四段の鏑木隊長って方もすごいが、
不思議なのはこの報道、昭和22年といえばとっくに双葉山は引退('45=昭和20年)して親方になっていたのに
「双葉山関」とあり、まるで現役の関取のような呼び方で報道されていること。

その後双葉山は知己の新聞記者(註1)が身柄引き受け人として奔走
(不世出の大横綱の名誉失墜を嘆いての行動だそう)
したことで釈放、璽宇からも脱退した。

平成になってからも
22回の優勝を誇る横綱・貴乃花の洗脳騒ぎ、
「円天」によるニセ電子マネー事件があった。
求道者は時として道を踏み外すこともあるようだし、
「歴史は繰り返す」というか何というか。

参考資料:
1.ウイキペディア
2.読本 犯罪の昭和史2 1984年作品社

註1:この記者の方はその後第1次南極越冬隊の報道担当となり、
テレビ局の社長まで登りつめたそう。=資料2による。

(2006.0504)

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