No.114
NHK・BSで第3回アルティメット・トーナメントを見る

1994年4月13日、NHK・BSで何と第3回アルティメット・トーナメントが放送されて噂どおりの過激さを見せてもらった。
ホイス・グレイシーが93年の第1回、続く第2回大会を連覇して
今年の格闘技界の台風の目になるかと思われていたグレイシー柔術の一派だったが
この第3回大会ではホイスが1回戦の「謎の怪人」キモ戦でかなりのダメージを受け、勝つには勝ったが2回戦は棄権で不戦敗。
ホイス最大のライバルであったケン・シャムロックも棄権したので
優勝はリザーバーで出場し決勝で1回勝っただけの「代打」「忍者」「おまわりさん」のスティーブ・ジェナム!
何なんだこの展開。いきなり決勝出てきて1試合勝っただけで優勝?これはリザーバーのほうが有利ってことじゃん(笑)。
この放送を見た直後に千里眼に「やはりリザーバーも1試合予備戦でもやってから出場しないと
リザーバーのほうが有利になってしまう」
って話したら本当に次の第4回からそうなってしまった(笑)。

この第3回大会は「格闘技通信」に載っていた大会に関係した各人のコメントが秀逸で楽しめた。

K.ハワード
「シャムロックだけシードなんて、おかしいじゃないか」

ホリオン・グレイシー
「優勝できるのなら誰にでも勝つ自身があるはずだし、相手が誰だろうと関係ないじゃないか」

ケン・シャムロック
「一回戦で自分はUSナショナル大会の柔道チャンピオンという肩書きのある選手に勝った、
それに対しホイスはあんな無名の選手(キモのこと)に手こずった。
(自分は)疲れていたし、ひざも痛かったけど2試合目は一回戦を戦っていない選手とやってなおかつ勝った。
それに比べてホイスは(二回戦で)一回戦を戦った選手が相手だったにもかかわらず戦う前に試合を放棄した。
先に負けたのはホイスのほうだと思う。もう未練はない」

K.ハワード
「ホイスと戦えなかったことは残念だが、それでもリングに上がって相手に対して顔を見せたことに対して
俺は(ホイスを) 尊敬する。シャムロックは俺との決勝戦のとき、出ても来なかっただろ?」


特にシャムロックとハワードのコメントはお互いの価値観、対戦相手に対する意識の違いが現れていて面白い。
コメントを素直に読めば優勝することだけを狙っていたハワードと、
第1回大会で敗退したホイスへのリベンジが今大会参加の最大の目的であるシャムロックということになるだろう。
大会は組み合わせの有利不利、オクタゴンの床のスプリングの問題などホイスを有利にするためとも考えられなくもない 仕掛け?が横行しているようだが、
この第3回でのグレイシー側の誤算は明らかに謎の怪人・キモだったことだろう。
第1回、第2回とも柔術家であるホイスのトーナメントの組み合わせは比較的くみしやすい打撃系の選手が多いブロックだ。
だが今回は、キモのプロフィールが「テコンドー出身」とあったことにブラフをかまされたのではないか。
キモの格闘技バックボーンがテコンドーというか打撃系であったとは、試合内容から見ても無理がある。
キモのマネジャーだったジョー・サンが「あたかも打撃系の選手であるかのようなプロフィールを提出してホイス側を幻惑させ、
入場ではこけおどしのギミックで相手を油断させる。そして実際の試合でグラップリング勝負を仕掛ければ
相手は困惑するだろうから勝機が生まれるに違いない」といった戦略で望んだのかどうかまではわからない。
しかし今大会におけるホイスの敗北とジェナムの優勝は、
主催者側であるグレイシー一派が自分たちが作り出したアルティメット大会の作為的な部分と
システムそのものに敗北した結果だと思う。

(1994年末の「一年を振り返って」を元に再構成、2003・0802)

「ジ・アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップV」
1994年9月9日、アメリカ、ノースカロライナ州シャーロッテ
グレイディー・コール・センター
観衆1500人(超満員)
*全試合時間無制限1本勝負。

1.トーナメント1回戦
○キース・ハックニー(TKO、1:59)エマニュエル・ヤーブロー●
*マウントパンチによるレフェリーストップ。
ハックニーはこの試合で右手を骨折、準決勝を棄権。第一補欠ミッチェルが出場。

2.トーナメント1回戦
○ケン・ウェイン・シャムロック(タップ、4:49)クリストフ・レィニンガー●
*マウントパンチによる。

3.トーナメント1回戦
○ハロルド・ハワード(TKO、0:44)ローランド・ペイン●
*パンチによるレフェリーストップ。

4.トーナメント1回戦
○ホイス・グレイシー(裏十字固め、4:40)キモ●
*ギブアップ。

5.トーナメント準決勝第1試合
○K.W.シャムロック(足がらみチョークスリーパー、4:34)フィリックス・リー・ミッチェル(第一補欠)●
*ギブアップ。
シャムロックは決勝を棄権。第二補欠ジェナムが出場。

6.トーナメント準決勝第2試合
○H.ハワード(TKO、タイムなし)ホイス・グレイシー●
*セコンドのタオル投入。

7.トーナメント決勝戦
○スティーブ・ジェナム(第二補欠)(タップ、1:25)H.ハワード●
*マウントパンチによる。

*この結果スティーブ・ジェナムが初優勝。

参考(インタビュー部分、試合結果):ベースボールマガジン社「格闘技通信」1994年NO.119


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