「ダークナイト」恐るべし史上最凶の悪役・ジョーカーこと故ヒース・レジャー

ダークナイト 特別版 [DVD]

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<あらすじ>怪人ジョーカーの一味がゴッサム・シティで犯罪を重ねる。
またマフィア撲滅のため地方検事ハービー・デントが活躍。
バットマンはデントを支援し自分は引退を考えるが
ジョーカーは「バットマンの正体暴き」をマフィア組織から請け負う。
狡猾なジョーカーの「二重の罠」に苦しめられるバットマン・・・。

バットマンシリーズの新シリーズ2作目。
旧シリーズはT.バートン監督のダークなワールドを展開しながら
大物俳優のコスプレ大会的雰囲気を醸し出すややコミカルな出来だったが、新シリーズは超ハードだ。
本作はあえてタイトルに「バットマン」を入れないところに意気込みを感じる。
ってかこの映画はジョーカー役のヒース・レジャーが最高に気の狂った、濃いー、恐るべき存在感を持っての演技。
だがレジャーはこの映画の後1本を撮影中だったようだが08年1月に死去。
「死ぬ直前の作品」っていう先入観を持っておいらが見ているのかもしれないが、もの凄い出来のジョーカーです。

同じ境遇の作品、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」、松田優作の「ブラック・レイン」の彼らの鬼気迫る演技も史上に残るが
本作品のジョーカー/ヒース・レジャーはこれら伝説的作品に比肩しうるかあるいは超えてしまったかもしれない。

薬剤の事故で漂白された白い肌を持つ過去のジョーカーと違って
この作品のジョーカーの白い顔は単純なメークだ。
それもところどころ剥げていて、きったない。
眼の周りは黒いくまどり。
しかし・・・口の両側にはあの裂けた傷がある。
それをルージュで強調。
なぜこの傷がついたかをみずから説明するシーンが2回あるが、いずれも違う話で真実は不明。
不明、不明・・・最初に逮捕された時、指紋もDNAも警察の記録にはなかった。
原色を多用した服も実は安物で、どこから購入したかアシが掴めない。
全く正体不明、謎の男が本作のジョーカー。

レジャーのジョーカーは流暢に喋りまた意外な美声でもある。
相手を聞き入らせる悪魔のささやきか。

通常犯罪には動機があり、基本的には計画的なものは、まず一攫千金。
あるいは復讐の達成、また自分の嗜好というか歪んだ欲望を満たすため。
ヒース・レジャーのジョーカーは「どちらかというと」3番目に近い。
ジョーカーには犯罪の動機がない。
芸術作品を造るがごとく犯罪をやり遂げ、バットマンの正体暴きをマフィアから請け負って
マフィアの蓄えの半分を受け取っても平然と報酬の札束にガソリンをぶちまけ、火をつける狂人。
金儲けのために犯罪をしているのではない、彼の言葉を引用すれば「全てがジョーク」ということだ。

話術でゴッサムシティの「光の戦士」ともいわれた検事のハービー・デントを悪のトゥー・フェイスへと誘う(いざなう)魔力!
「悪は伝播する」レクター博士が「レッド・ドラゴン」で逢ったこともないダラハイドを誘導しグレアム刑事を襲わせた一件、
或いは日本のあの未成年の事件(以下略)
同じことをジョーカーはやってのける。

「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター博士(A.ホプキンス)も
「ケープ・フィアー」のマックス・ケイディ(R.デニーロ)も
ヒース・レジャーのジョーカーには勝てないかもしれない。
なぜなら「ヒース・レジャーのジョーカー」には哀願、慈悲、交渉などはひとかけらもないからだ。
レクター博士はクラリスに好意を持ち、
マックスは復讐が成就したら普通の人間に戻ったかもしれない。
しかしジョーカーは・・・。

音楽も、重厚でどろどろした地味なリズムを刻むばかりで
そこにはヒーローが登場するファンファーレなど存在しない。
主張があまり感じられないのに存在感を感じる音楽。
地味だが重い。
そして二転三転するストーリーは先が読めず緊迫する。
「ジョーカーの策には屈しない、自分が泥をかぶってでもゴッサムの平和は守る」ダークナイト宣言がラスト
バットマンは活躍するが、この映画に爽快感はない。
何しろ劇中の最後、ジョーカーは死なないのだ
しかしヒース・レジャーは、もういない
彼のジョーカーはもはやこれっきりだ

世間と対峙し抗うように生きる
ヒース・レジャーの「ジョーカー」の圧倒的存在感を、
畏敬の念を込めて観よ!


(08.0831)

2008年アメリカ
監督:クリストファー・ノーラン
キャラクター創造:ボブ・ケイン
音楽:ハンス・ジマー、ジェームズ・ニュートン・ハワード

出演・配役
クリスチャン・ベール:ブルース・ウェイン(ウェイン社会長)/バットマン
ヒース・レジャー:ジョーカー
アーロン・エッカート:ハービー・デント(地方検事)/トゥーフェイス
マギー・ギレンホール:レイチェル
マイケル・ケイン:アルフレッド(執事)
ゲイリー・オールドマン:ジェームズ・ゴードン(市警)
モーガン・フリーマン:ルーシャス・フォックス(ウェイン社社長)
ネスター・カーボネル:ガルシア(ゴッサム市市長)

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