「第9地区」良質のノンストップSFスラムムービー。

第9地区 Blu-ray&DVDセット(初回限定生産)

新品価格
¥2,880から
(2010/9/19 11:08時点)


2009年アメリカ(カラ―111分)
原題:District 9
監督:二―ル・ブロムカンプ
脚本:二―ル・ブロムカンプ&テリー・タッチェル
製作:ピーター・ジャクソン&キャロリン・カニンガム
音楽:クリントン・ショーター

出演・配役
シャルト・コプリ―:ヴィガス(エイリアン移住計画責任者)
デヴィッド・ジェームズ:ク―パス大佐(軍人)
ジェイソン・コープ:地球名「クリストファー・ジョンソン」(エイリアン)
ヴァネッサ・ハイウッド:タニア(ヴィガスの妻)

<あらすじ>1982年、南アフリカ・ヨハネスブルグ上空に宇宙から飛来した巨大円盤が現れる。
一向に動きを見せない円盤に、南ア政府は強硬に円盤内に侵入。
円盤は故障しているため動かないらしく、機内には多数のエイリアンが劣悪な環境で暮らしていた。
南ア政府は円盤の直下の「第9地区」に難民キャンプを営巣。
しかし粗野でゴミ捨て場を漁り、盗みを働くエイリアンに手を焼き、
遂には近隣住民からエイリアン排他のデモが行われる。
またナイジェリア人オべサンジョー率いるギャング団が
エイリアンの好物・猫缶と彼らの超兵器を不法取引するなど犯罪の芽も。
円盤飛来から数えて20数年後、南ア政府からエイリアンの管理を委託されていた民間会社MNUは
エイリアンを別の場所「第10地区」に移住させる計画を立ち上げ、
その責任者にヴィガスが選ばれる。
しかしヴィガスは職務中謎のウイルスに感染し、体に変化が現れる。

4月24日、有楽町で見る。
下北沢での「THE LEFT STAFF」観劇以来、また電車の乱れに遭遇して
振替輸送でぎりぎり予告編がやってる場内へ飛び込む(これで4月は2週間ちょいで3回振替輸送に遭遇した)。
南アの過去の悪政「アパルトヘイト」を人種間ではなく地球人と宇宙人との関係で構築させたと受け取れる作品。
なのでSF映画では群を抜くメッセージ性の高さがまずある。

エイリアンはヒューマノイドのエビ、って感じの姿で(実際字幕でも「エビ」と呼ばれている)
われわれ哺乳類から見ると嫌悪感たっぷりのデザイン。
腰の部分がすごく細く、足は一部逆関節。
口の周辺がわさわさと触角みたいな器官で動いてる。
でも眼は中に入ってる人の関係とかあるのか複眼ではなく、虹彩のある人間と同じ構造。
んで車のタイヤのゴムが好物で、停車してる車のタイヤをかじったりするんだけど、
何と言っても一番の好物はキャットフード(猫缶、字幕でも「猫缶」と表現)。
実際キャットフードは獣肉主体のドッグフードに比べると海産物の比重が高く、
リアルにエビの好物らしきもので作られているらしい。
エビ・エイリアンは粗野でゴミ捨て場を漁り、盗みを働く。
暴力も平気。頭のいい個体もいるが全体的に知的水準が低い。
が、保有している兵器は小さくても超破壊力。モビルスーツまである。
しかし遺伝子情報が組み込まれているせいか、人間には動かせない。
彼らには土地保有の概念がないから移住の説明をしに行き、移住承諾のサインをもらわなければならない。
その移住計画の責任者ヴィガスが主人公。

かなり特異な設定。
序盤や最後はヴィガスの周辺の人物、元同僚とか家族とかのインタビューや
監視カメラ・ハンディカメラでの映像などが使われ
セミドキュメンタリータッチの出来。
仕事に誠実なヴィガスはエイリアンの住む各家を回って承諾書にサインをもらい続ける。
が、エイリアンの暴力で左腕を負傷。さらに押収した透明のケースに入っていた黒い液体を誤って顔に浴びてしまう。
ヴィガスの体に段々と変化が起こり、彼の受難が始まる。
ヴィガスはエイリアンの遺伝子を体内に取り込んでしまった。
爪がはがれ、歯が抜ける(この辺「ザ・フライ」を連想)。
ヴィガスは強引に輸送され、兵器の実験現場へ。MNUは軍事工業会社でもあった。
そこでエイリアンの作った武器の試写をやらされる。
遺伝子情報の関係か人間には動かせない武器だったが、変容しているヴィガスには撃てた。
ヴィガスはエイリアンの超兵器を動かすことのできる世界で唯一の人類となったのだった。
MNU幹部(ヴィガスの妻の父親もいる)はヴィガスの生体解剖を決めるが、ヴィガスは脱走する。
テレビで「エイリアンとセックスした男」と恥辱的な合成画像により指名手配されたヴィガスは仕方なく第9地区へ逃げ込む。
妻から携帯電話がかかってくるが、テレビ映像を信じてしまっていて電話を切られる。切ない。

ヴィガスはやがて子連れのエイリアン、「クリストファー・ジョンソン」と遭遇するが、
彼こそがあの液体の入ったケースの持ち主であり、20年かけてあの量を集めたのだと言う。
彼は他のエイリアンと違い、理知的で家の中はコンピュータで一杯だった。
ケースは自分の星へ帰還するために必要なものだったらしい。
そしてケースがあればヴィガスを元の体に戻せると言う。
だがケースは会社のラボの地下の部屋。
ヴィガスはギャング団のボス・オべサンジョーの元へ行きエイリアンの武器を調達(ここでも一悶着ある)、
クリストファーとともにケースを奪回するためラボを襲撃する。

共通の目的のため、ついに結託する二人。少ーしギャグっぽいが流れを変えないいい展開。
んで戦闘の末ケースを奪回した二人だったが、クリストファーはヴィガスを治すには「3年」かかると言う。
円盤に行けば治せると思っていたヴィガスは怒るが、
どうやら母星に帰ってそれなりの設備を持ってこないと治せないらしい。その期間が3年。
この辺二人のギャップにまたしても笑ってしまう。

んで脱出にまた一悶着あるが、今度はオべサンジョー配下のギャング団が乱入してMNU側の軍隊とヴィガスの争奪戦。
オべサンジョーはヴィガスの体を食えば自分がヴィガスの能力を持てる(つまり超兵器を使える)と信じていた。
しかしヴィガス脱出してモビルスーツに搭乗。
オべサンジョー一味を全滅させると、クリストファー親子を円盤に乗せるためにMNU側と決戦!
クリストファー親子の操作で、20年以上空中で停止していた円盤が動き出す・・・。

ノンストップでこのテンションが続く。
中だるみが全くなく、その意味で編集も見事。
エビ・エイリアンの複雑なデザインは嫌悪感あるがリアルな映像。
終始宙に浮いている円盤のデザインもあちこちから突起が飛び出ていて非シンメトリーでイカす。
ラスト、ヴィガスは妻との交流が出来たのか?切ない。
3年後クリストファーは帰ってくるのか、そんな想像をしてしまう。

宇宙難民が飛来する作品といえば、「エイリアン・ネイション」がある。
腐った牛乳で酔っ払い、海水につけられると溶けてしまうエイリアンの刑事と人間の刑事が組む話。
だがあの映画のエイリアンは白い肌で人間っぽかった。
エビ・エイリアンは直立2足歩行ではあるがもろ甲殻類に見えるし結局完全な共存は難しそうな感じ。

まあ何しろすごい映画でした。人種問題は勿論、虐待、差別などいろいろな要素があると感じた。
予算がアメリカの映画にしては少なめというのが信じられないぐらいの出来。
そういや2010年って、南アでサッカーのワールドカップやるんだよなあ。
続編「第10地区」ができてその辺も盛り込んだらどんな作品になるか。
南アの代表チームにエビが入っていたりして(笑)。

(2010.0425)


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