「パシフィック・リム」「KAIJU(怪獣)」は世界標準に成り得るか。

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'13年8月9日、西新井のレイトショーで見る。

ストーリーの冒頭はニュース映像みたいな回顧シーンで足早に語られ
すでに作品世界は「KAIJU(怪獣)」の襲撃に対する人類が
イェーガーと称する搭乗型巨大ロボットで応戦している世界。

なのでアメリカ版ゴジラや「クローバーフィールド」で描かれた「出現時の恐怖」はそれほど描かれない。
ここはちょっと惜しいと思う。
怪獣は作品世界内でも「モンスター」とかではなくKAIJU-怪獣と呼称され
ハリウッド映画で俳優がセリフで「カイジュウ、カイジュウ」って言っている。
これはちょっと違和感ある。
ただ、この映画を機に日本独特のカルチャーとしての「怪獣」が認知され
後続の映画がこれに倣う可能性は十分あると思う。

日本の「怪獣」の多くはただの恐竜など古代生物の生き残りや実在の生物の巨大化ではなく、
通常兵器が通用せず、多くが自身も特殊な武器を持っている存在である。
常識の範囲を越えて巨大であり、強い。
アメリカの映画で「クローバーフィールド」を例外にしてかつてこのような強大な敵が登場する映画はなかった。
殆どがアメリカ軍によって退治されていたと思う。
そういう意味で本作は巨大怪獣対ロボットの肉弾戦をハリウッド映画が実写で実現させたという革命的作品である。

怪獣のデザインは頭部が鮫や深海魚っぽくてなかなかいいですが
何頭も出てくるせいでか個性と言うか印象が薄い。怪獣軍団って言う感じで受け取られる。
まあこの映画の怪獣は「異世界からの侵略者」が送り込んだ「生物兵器」であるのが「軍団」という部分に拍車をかけます(この辺後述)
命名も「ナイフヘッド」「レザーバック」という外見を示したものや
「オオダチ(大太刀?)」「オニババ」という和風のものが混在する。
まあアメリカの命名のセンスはこんなもんか?「バキシム」などを理解するのは難しいのだろう。
もしかしたら「宗教的意味」を意図的に避けている、という部分はあるかもしれない。

巨大ロボットと怪獣のバトルシーンは迫力がありました。
イェーガーの攻撃の主力が肉弾戦によるパンチ攻撃というのも好感が持てます。
ただちょっと動きが速すぎて目で追い切れないのと、速すぎるために巨大感に欠けます。
アニメ的なのかもしれませんが。
カット割りも細かい。
この辺はハリウッド映画らしくて、日本映画とは異質です。

あと怪獣が見栄を切るシーンの時間が少なかったりなかったりで
怪獣の顔と言うか「表情」があまり伺えない。
この辺はハリウッド映画もまだ研究の余地ありで
怪獣を「役者」と捕える部分が必要ではないかと思った。

ただ、人間側のストーリーはいまいちです。
東宝の怪獣映画ではしばしば「ゴジラ」の芹沢博士(平田昭彦)、「キングコングの逆襲」のドクター・フー(天本英世)
など、存在が怪獣に匹敵するほどの濃いー役者の演技というものがあったのですが、
まあこの映画では怪獣に対抗する博士二人と、怪獣の死体を商売にする謎の商人がそういう役柄を狙ったと思われる存在ですが
どうもこの連中が出てくると「笑えないギャク」になってしまい緊張感が損なわれるような気がします。

映像をもってしてもとても説明が難しいシーンがあります。
博士が怪獣の脳と接続して情報を得ようとするシーンですが
怪獣が通る異世界とつながった「裂け目」は入る時は怪獣のDNAがないと通れない
のでこのままでは爆破計画が失敗するという部分で
言語でもなくどうしてこんな複雑な情報が得られるのか、謎です(笑)

また「裂け目」を通って登場した怪獣は必ず倒されているらしくて怪獣が帰還した描写はないのに
(つまり、怪獣が人間側の情報を持って異世界に帰還した描写はないのに)
怪獣はどんどん強大になって行き、防護壁を破壊し、次第にイェーガーを圧倒するようになる
ここは怪獣の個性を強調するためにも特定の怪獣だけ攻撃されても死なないで 帰還して情報を持って帰る
そして複数回登場する
そういう存在があればDNAがないと通れないうんぬんも解決できたし怪獣の認知度と言う点でも効果ありだと思います
何か入るときだけ怪獣のDNAが必要で出るときは問題ないというのはストーリー展開上のご都合主義のような感じで説得力がない

デル・トロ監督はインタビューで「他の作品と類似する部分がないように考えた」旨のコメントをしていますが
「異次元人が作成した生体兵器」はそのまま「ウルトラマンA」のヤプールと超獣ですよね
「何万年も前から侵略の種を植えておいた」というのは「宇宙戦争」に似てますし
ジプシー・デンジャーのデザインと戦い方は鉄人28号を思わせます
比較的近年のネタになりますが、神経接続はエヴァンゲリオンですし
防壁はゼクシル、あるいは「進撃の巨人」に似通っています

イェーガーの最後の基地が香港にあって
パシフィック・リム(環太平洋地域)から、大陸・地域ごとにまんべんなく4体のイェーガーが代表されているというのはわかるが
(ジプシー=アメリカ、エウレカ=オーストラリア、アルファ=ロシア、クリムゾン=中国)
東アジア代表が中国というのはやはり中国の人口の多さから利益を考えた作りになっているのではないか。
巨大ロボ・怪獣の元祖的存在の日本の登場が女性パイロット(とその幼少の頃の怪獣東京襲撃シーン)に
押さえられているのはそういった側面とパワーバランスがあるのかも知れない。
中国のイェーガーであるクリムゾン・タイフーンが最も国を強調しわかりやすい名前になっているのも
そういう事情がからんでいるのかと考えた。
マコの記憶シーンで登場する日本製イェーガーの名前は「コヨーテ・タンゴ」らしいが
日本製だったらもっと漢字をカタカナにしたような名前がよかったのではないかと思う(でもそれじゃ目立ちすぎるか)。

戦闘シーン、怪獣のシーンを部分部分に見れば結構面白いです。
こういうバトルが見たかった、と思わせます。
子役の芦田愛菜が泣いて逃げるシーンはすごくいい出来です。
日本は大震災のあと、予算など色々な問題があると思うのですが
そろそろ頑張ってこういうのに負けない映画を作ってもらいたい。
元祖は日本です。

(2013.0814)

2013年アメリカ
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:トラヴィス・ビーチャム 、ギレルモ・デル・トロ
原案:トラヴィス・ビーチャム
音楽:ラミン・ジャヴァディ

出演:配役
チャーリー・ハナム:ローリー・ベケット(イェーガーパイロット)
イドリス・エルバ:スタッカー・ペンテコスト(イェーガー計画司令官)
菊地凛子:マコ・モリ (イェーガー計画スタッフ、パイロット)
チャーリー・デイ:ニュートン・ガイスラー博士
ロバート・カジンスキー:チャック・ハンセン(イェーガーパイロット)
マックス・マーティーニ:ハーク・ハンセン(イェーガーパイロット
ロン・パールマン:ハンニバル・ショー(怪獣の死体商人)
芦田愛菜:マコ・モリ(幼少時)


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