「ラブ&ピース」ロックンローラーは亀と女のどちらを選ぶのか。

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<あらすじ>ミュージシャンの夢破れた鈴木良一は、
楽器の部品の会社でサラリーマンとして働いていたが社内外のパワハラに苦しむ毎日。
そんな中、デパートの屋上で妙に目が合っちゃったミドリガメを購入。
亀に「ピカドン」と命名し再びミュージシャンを目指す夢を語り
人生ゲームのコースをを歩かせたりしていたが、
会社に亀を持ってきていたところを発見され、
プレッシャーから愛する亀を水洗トイレに流してしまう。
亀が流れ着いた先には、下水道の下で捨てられた人形やペットとともに謎の老人が暮らしていた。

8月、横浜長者町の横浜シネマリンで見る。
「映画秘宝」などで監督の次回作が怪獣が出現する特撮映画になるという記事があったので見ましたが
満足度の高い作品でした。

地下のシーンの出来は、いろいろなところで書かれているが
ティム・バートンのバットマン作品風の出来。
人形のマリアが地上に出て前の持ち主と遭遇するシーンは
捨てられた人形の悲哀を感じます。
良一のマンションに侵入してきた人間ぐらいに巨大化した亀・ピカドン(のちのLOVE)によって
二曲目のヒット曲が作られるシーンはすごく笑ってしまう。

亀の怪獣といえば、
おそらく世界一有名と言ってもいい怪獣が日本にいますね。そう、ガメラです。
亀の怪獣を成立させるに当たっての成功への到達点は「ガメラとの差別化」ではないかと考えます。
この映画でのLOVEは、四足歩行(亀だから当然、むしろガメラの方がニ足歩行で無防備な腹を晒している方が不思議)、
目を丸くして可愛らしさを出したという点でその課題に成功しています。
まあガメラにも「トト」っていうヴァージョンがありますが。
ミドリガメってよく見るとけっこう怖い顔しているんですよ。外来種で大きくなったら迫力あるし。
あと鳴き声も可愛い。担当の声優の方はポケモンのピカチュウを演っている方だそうですね。

LOVEの日スタへの進撃と、第九をバックにしての(さすがクリスマスという設定)都庁破壊は
ミニチュア特撮ということですが、なかなか迫力があります。

亀と女(裕子)が、同じ場面に出るシーンは日本スタジアムを含めると3回あるが、
亀も女もお互い良一に好感があるのに
亀と女は相容れない。
これって、女(愛もしくはセックス)と男の友情(社会的成功?)、
どっちを取るかという問題を提起しているのだろうなあ。
亀っていうのがもろ象徴的だし。

普通は、そういうところうまくやって、
彼女と結婚して、男友達ともうまくやって
そうやって人生うまく泳いで行くのだろうけど。

ラストにも、日スタで消えたはずのLOVEが小さい姿に戻って良一のアパートに戻ってくるが
アパートに向かっている裕子の姿も映し出される。
良一と亀と女は共存できるのか?

歌う場面で使われる曲も聴いてていい感じで、
またラスト近くRCサクセションの「スローバラード」もすごくいいタイミングでかかるし
これは恋愛映画でありロック映画であり
大怪獣による都市破壊がある特撮映画という希有な作品に出来上がっている。
地下の人形ファンタジーがあって、対して死体、流血など残酷なシーンがないから子供だって見ることができる。
愛を語り、音楽を聞き、相手を慈しむ心を考え、そして特撮に興奮する。
良一のストーリーと、西田敏行演じる謎の老人のストーリーのニ軸が最後に結び付く展開になっていて
老若男女問わず楽しめる大変いい作品だと思います。

個人的には地味な服装でメガネかけていて、
白髪混じりで肩が固まったような
麻生久美子演じる寺島裕子のメーク&ファッションになぜかぐっと来た。


ただ宣伝とかどうだったのか。都内で上映している期間が短くて
やっとこさ横浜まで行って見れたとさ。

(2015.1004)

2015年日本「ラブ&ピース」製作委員会 
監督、脚本:園子温
特技監督:田口清隆
音楽:福田裕彦
主題歌:RCサクセション「スローバラード」

出演:配役
長谷川博己:鈴木良一(会社員/ロックンローラー「ワイルド・リョウ」)
麻生久美子:寺島裕子(良一の会社の同僚)
渋川清彦:マネージャー
マキタスポーツ:良一の会社の課長
手塚とおる:科学者
西田敏行:謎の老人
神楽坂恵:ユリの母
松田美由紀:レコード会社のプロデューサー/松井
田原総一朗:司会者
水道橋博士:コメンテーター
茂木健一郎:コメンテーター
中川翔子:マリアの声
大谷育江:ピカドン/LOVEの声

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