スウォーズマン 女神伝説の章
原題:SwordsmanU 笑傲江湖 東方不敗
1992年香港
監督:程小東(チン・シュウタン)
製作:徐克(ツイ・ハーク)
原作:金庸(カム・ヨン)
音楽:袁卓凡(リチャード・イエン)
出演・配役
李連杰(リー・リン・チェイ=ジェット・リー):令狐沖(リン)
林青霞(ブリジット・リン):東方不敗
關之淋(ロザムンド・クァン):任盈盈(イン)
袁潔瑩(フェニー・ユン):藍鳳凰(ラン)
李嘉欣(ミシェル・リー):烏鴉嘴(ツァイツァイ)
任世官(ヤン・サイクーン):任我行(ヤン・ゴーハン)
劉洵(ラウ・シュン):向問天(ゼン左使)
李子雄(ワイズ・リー):服部(はっとり)
余安安(キャンディー・ユウ):楊詩詩(シイシイ)
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<あらすじ>
時代は明時代の中国、戦乱の世に嫌気がさした華山流の剣士リン(リー・リン・チェイ)は
妹弟子たちとともに隠遁生活の場所を探す旅を続けていたが
かつての恋人が宗主の娘たる苗族の日月教の宗主争いに巻き込まれる。
日月教を乗っ取り前宗主を幽閉した「東方不敗(ブリジット・リン)」は
「菱花宝典」に記されている奥義により超人的な力を身につけ
豊臣秀吉との覇権争いに敗れた織田軍の配下だった忍者たちと結束して勢力を拡大し
朝廷軍の武器をオランダ船から奪い朝廷に反旗を翻し日月教・苗族による明の支配をもくろんでいた。
東方不敗を倒すべく前宗主ヤン・ゴーハンを救出し決戦の地・黒木崖に集結したリン達だったが、
東方不敗の正体はリンが旅の途中で出逢った謎の美女だった。
この映画の見どころは主演女優ブリジット・リンの登場シーンに尽きる。
初登場のシーンでは赤を貴重にした服、軍配を持ち顔の下半分を仮面で覆った姿で登場、
空を飛び残虐にも明朝廷の使者の首をひと掴みでもぎ取ってしまう。
その後リー・リン・チェイ演ずる剣士リンと遭遇し交錯した拍子に彼の腰の徳利の酒をこぼしてしまい、
リンに抗議されるがお構いなしに空を飛んで去ってゆく。
その時小枝に触れて仮面がはずれてしまい顔が見えてしまう、
丸顔に意志の強そうな太目の眉。そして大きな瞳。
・・・・・・うわ、美人。
この頃はまだ秘術を会得して日が浅いのか声が男。
この映画の存在をはじめて知ったのは日本公開時の新聞広告で
ブリジット・リンが両手に糸の両端を持って中央を口にくわえている写真だったのだが
キャッチコピーが「極悪、残忍、超美人」だったと記憶している。
このときの写真は角度的に丸顔が強調されてはいなかったのだが
もうこの広告見ただけでノックアウトされ劇場行きを決意したものでした。
リンが馬で宿屋から単独で脱出すると突如湖が爆発して水しぶきが上がり
そのしぶきに当たった野鳥が次々と落ちてゆく。
湖の中から東方不敗がゆっくりと姿を見せ、水の粒を岸辺の森に向かって撃ち込む。
樹の幹や葉が水の弾丸によって穴があく破壊力。
東方が手を広げて疾風を上げて走るシーンもなかなか。
リンは呑気に湖で東方と酒を酌み交わすが
東方のテレパシーが彼の発しているものだと気づかず
テレパシーに対して返事をしている間に東方は徳利を岸辺に置いて姿を消す。
リンはすっかり東方を女だと思うが、実は東方は幽閉されている前宗主ヤン・ゴーハンの弟?ぐらいの存在である。男。
「菱花宝典」に書かれている秘術により超人的な能力を会得していた(秘術については後述)。
リンは顔半分を焼いて日本人側に潜伏していた日月教の元幹部・ゼン左使と合流してヤン・ゴーハンの居所を調べるが、
その途中で東方の住処に入り込んでしまい、東方を連れ出して月見としゃれこむ
(だがまだリンは東方の正体を知らず、どっかの娘だと勝手に思っている)。
二人は酒を飲み、意気投合する。
そこに東方の配下である日本の忍者・服部が現れ、リンは捕まってしまう。
しかし牢に入れられたリンはヤン・ゴーハンを見つけ、彼を脱出させる。
体力を蓄えたヤン・ゴーハンは東方への復讐を誓う。
しっかしヤン・ゴーハンって白髪の老人なんだけど、東方が弟だとしたら
全然似てないし、随分年の離れた弟だなあという感じ。
牛背山で隠遁生活をするべく旅立とうとしたリン以下華月流の剣士の面々だが
ヤン・ゴーハンに東方を倒す依頼をされヤンと戦い寸前となるが結局拒否し、リンは先に旅立つ。
ところで馬上で酒が切れたことに気づき、困ったリンはなんと「とっくりの娘」東方の元に酒をもらいに行く(まだ気づかない)。
その頃東方は愛妾シイシイに宝典の力で女性化していることに気づかれ、
もはや男としての機能を有しない東方にシイシイは逆上し
宝典が隠されている着物を焼こうとして東方の怒りを買う。
そこにリンがやって来る。東方はシイシイに命を懸けて自分の身代わりでリンと寝るように命令し
(暗いから身代わりとは気がつかない)、
ヤン・ゴーハンに宣戦布告をしに出てゆく。
ヤン・ゴーハンは服部と対決するが激戦の末
「吸精大法(両手の念力で目標を吸い寄せ、人間ならば精気を吸い取って殺してしまう)」で服部を倒す。
華山流の兄弟弟子は運悪く東方と遭遇してしまい、妹弟子以外は全員バラバラにされて殺されてしまう。
東方によって爆発され火の手が上がった宿屋を見てリンはシイシイを置いて様子を見にいくが
そこで見たものは東方に粉々にされた兄弟弟子たちの亡骸だった。
雨の中リンと妹弟子は兄弟弟子たちの墓をつくり、東方不敗に復讐を誓う。
また東方が住処に戻ると、命令を守れずリンを行かせてしまったシイシイは毒を盛って果てていた。
リンは結局ヤン・ゴーハンと手を組み「菱花宝典」の秘密を聞くが、東方は超人化するために局所を切り落としたという。
「宦官だ」ヤン・ゴーハン大笑いして「菱花宝典」を焚き火の中に放り込み、焼く。
そして黒木崖でリン、ヤン・ゴーハン、ゼン左使ら五人は東方不敗と対峙するが
そこで初めてリンは東方不敗の正体があの共に酒を飲んだ娘だと知る。
「お前、男と寝たのか」ヤン・ゴーハンまたしても大笑い。チームワークにひびが入りそう。
そして決戦へ。ヤンは自分を拘束していた鎖付きの鉄の爪、
対する東方不敗は刺繍針に七色の糸。これで互角に引っ張り合う。
最終決戦は荒唐無稽だが独特の迫力がありまた美しい香港ワイアー・アクション。ぜひ観てほしい。
リンに情を見せてしまった東方不敗は敗れ、崖の下に落ちてゆく。
リンは落ちてゆく東方を見て叫ぶ「シイシイー!」(まだ勘違いしてる)。
ヤン・ゴーハンは日月教の宗主に返り咲くが、東方についた裏切り者を次々と処刑しはじめ
遂には漢族のリンさえも処刑しようとする。
リンは宗主の娘の手引きで船により日本に逃げようとするが
波止場にヤン・ゴーハンの命を受けたゼン左使が登場し、リンを殺そうとする。
しかし・・・ここでゼン左使は男の心意気を見せる(最後の見せ場です)。
「服部」という日本の忍者?が登場するので日本語が多く飛び交うが
みんなあやしいカタコト棒読み(笑)。
服部はいろいろな剣技を持っていていちいち「飛び斬りだー」「連続斬りだー」「回転斬りだー」などと日本語で叫びながら攻撃。
刀を振るだけで当たらなくても前方にある物を真っ二つにしてしまう(劇中では「剣気」と呼ばれていた)。
部下の忍者もユニークで折りたたみ式の巨大な手裏剣を投げ、その上に飛び乗って空中を進む。
手裏剣はヘリコプターの翼のように回転しているのに上の忍者は回転してない、
日本でいえば安土・桃山時代だっちゅうのにどんな構造?(笑)
日本語って言えば、日本から来た侍や忍者たちが夜焚き火の周りを回って歌ってるのが
「あんたがたどこさ、肥後さ、肥後どこさ、熊本さ、熊本どこさ(以下略)」。
そりゃ童謡で大人が酒飲んで歌わないだろ・・・。
あとヘンな日本語。
服部が「リンは先生(東方)のことを想っているのですよ(大意)」というと
東方はかたことの日本語で笑いながら「おまいのためか、おまいのためか」と言う。
ここは普通なら「わたしのためか」の方が正しいのではないかと思うんだけど・・・。
まあ!とにかく日本語はヘンだし、ところどころ意味不明の部分もあるけど
ブリジット・リンの美しさとクライマックスの決戦の独特の迫力は魅せる。
それから豊臣秀吉が朝鮮半島を支配して明に進出してたら
東方不敗対秀吉軍、あるいは加藤清正なんていう夢のカードが見られたかもしれない(めちゃくちゃです)。
スウォーズマン 女神復活の章
原題:The East is Red 東方不敗 風雲再起
1993年香港
監督:程小東(チン・シュウタン)
製作:徐克(ツイ・ハーク)
音楽:胡儀立(ウイリアム・フー)
出演・配役
林青霞(ブリジット・リン):東方不敗
王祖賢(ジョイ・ウォン):雪千尋(スノー)
千榮光(ユ・ロングァン):顧長風(クー)
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<あらすじ>明朝政府の役人クー(ユ・ロングァン)は
死んだと思われていた東方不敗の生死を調べるため黒木崖にやって来る。
しかしそこに現れた墓守の白髪の老人こそ実は生きていた東方不敗だった。
密かに東方不敗の強さを崇拝していたクーは、東方不敗のニセ者が各地で出現していることを告げる。
東方不敗はクーとともにニセ者探しの旅に出る。
海上では日月教の旗を掲げた船・日月号と日本から乗り込んできた忍者・霧隠雷蔵の率いる潜水艦が戦いを繰り広げていた。
日月号を操るニセ東方不敗はかつての東方不敗の恋人だったスノー=雪千尋(ジョイ・ウォン)だった。
スノーは東方不敗の死が信じられず日月教の再建を願ってニセの東方不敗の名乗り戦艦で戦っていたのだった。
本物の東方不敗はニセ者についた日月教の集団に怒り、彼らを皆殺しにする。
その行為に耐えかねたクーは東方不敗と戦い負傷するが、スノーに助けられる。
暴れまくる東方不敗は、霧隠雷蔵を倒して彼にすり代わり、
さらにでスペイン軍をも配下にする。
船の帆に一瞬で「東西方不敗」と名前を縫いこんだ東方不敗はクーの秘孔を打ち
彼を一時的に東方不敗と同等程度の力のある超人に代え、対決する。
しかしその先頭に中スノーは死んでしまう。
東方不敗は彼女の亡骸を抱き、いずことなく消えてゆく。
クーは爆発炎上する戦艦をバックに戦死?・・・
前作「スウォーズマンU」で悪役が好評だったブリジット・リンの東方不敗を主人公に置き換えたスピンオフ作品だそう。
東方不敗の超人力は以前にも増し、大砲の弾を2発同時に両手で空中で受け止め
戦艦の甲板に着地したかと思うと逆に大砲に弾を押し込み爆発させてしまう。
だが潜水艦(この時代に!)など前作にも増して荒唐無稽なネタが多く
ストーリー展開が東方とスノーの確執が中心なので実際の絵よりも話の方がスケールが小さい。
またしても日本の忍者が出るというのも。
また東方不敗は前作であれだけ愛していたリンにはまったく触れず
(というか前作から継続して登場する人物は東方不敗以外いない)、
スノーも前作には登場していないことから
前作とはパラレルな世界でのストーリーなのかも知れない。
ところで邦題は両作とも「女神」がつくけど東方不敗は女じゃなくって男、
もう少し言えばニューハーフみたいなもんだって。
いくら強くっても。
ということで実は変でしょ?邦題。
ちなみに原作者の金庸はウィキによれば東方不敗を女性が演じることにはあまり賛成ではなかったそう。
(08.0704)
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