「コミック雑誌なんかいらない!」報道する立場、される立場。

NIKKATSU COLLECTION コミック雑誌なんかいらない! [DVD]

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<あらすじ>芸能レポーターの木滑(きなめり)はさまざまな芸能人への押しかけレポートや
風俗店の取材などをやらされる多忙な日々を送る。
しかし隣人のおじいさんが金先物取引に手を出したのをきっかけに、先物取引の会社を調査し出す。

公開時池袋で見てずっともう一度見たかったんだけど機会がなくて。
そしたら監督さんが「おくりびと」でアカデミー外国語映画賞取っちゃったもんだから?
銀座シネパトスさんがレイトショーでかけてくれました。

内田裕也が扮する芸能レポーターが様々な取材をやらされる。
「恐縮です」「一言お願いします」と言って芸能人にマイクを向ける。

「ロス疑惑」の三浦和義(本人出演!)に無断で店入って来てのインタビューで
怒られてコーラをぶっかけられる。
1985−86年ごろの世相が反映された出来になっていて、先のロス疑惑、
神戸の山口組と一和会のいわゆる山・一抗争、日航ジャンボ機墜落事故 、
松田聖子と神田正輝の結婚、おニャン子クラブ、豊田商事事件などが盛り込まれている。

ラスト、金先物取引でマンションの一室に立てこもった会長を取材中、
二人の暴漢が部屋に侵入して会長は刺殺されてしまう(豊田商事事件)。
この犯人の一人がビートたけし。狂気の役はうまい。

木滑はそのシーンを他の報道レポーターとともに窓越しに見ていたが、
突如部屋に入り込み、暴漢を止めようとする。
しかし木滑は失神し暴漢は勝ち誇ったように去ってしまう。
木滑の意識が戻り彼が部屋から出てくるとたちまち報道陣に囲まれ取材の嵐。
レポートする立場だった自分がマイクを突き付けられる今までと逆の状況。
そこで木滑は「T Can't Speak Fackin' Japanease」と一言いう。
これがこの作品の骨子か。

エピソードの合間合間で、客がいない球場(註1)で木滑がボールを投げ、
それを麻生祐未がバットで戯れたり、
プロデューサー役の原田芳夫がキャッチャーやってて捕球したりするシーンがあるが、
ラストで木滑が懐から取り出して投げたのはマイクだった。
投げたマイクが空中にあるままストップモーションになりクレジットが出るのだが、
ここでオープニングを振り返ってみると
何だかわからないピンボケした映像がだんだんとはっきりしていくんだけど
それはマイクのヘッド部分のアップだった。つまり終わりと始まりがつながってるという粋な演出。
立場を逆にされた木滑はマイクを投げ仕事を辞したか?しかし彼が辞めても芸能レポートは続くという意味か。

内容とは別に、何かこの映画をもう一度見たいという気にさせられていたものがあったように思えたが
見るまでわからなかった。
それは大野克夫による美しい印象的なテーマ曲だった。
E.L.Oの「トワイライト」のファンファーレ部分に似た、しかしもっとゆっくりとした曲。豪華な印象の名曲である。

(09.0322)

追記:オープニングで先に述べたマイクのアップのあと、
主演の内田裕也(すでに役の木滑?)が散髪するシーンがあるが
そのバックにかかるナレーションが「ただいまより、(途中略)「コミック雑誌なんかいらない!」を上映いたします。
なお、場内でのセックスは硬く禁じられておりますので(大意)」。
これは今までピンク映画畑で作品を作っていた
(「コミック雑誌なんかいらない!」が初の一般映画作品)滝田洋二郎監督の、
一般映画への進出を表現した決意だったのか、
それとも単なる自虐ネタか。

(09.0409)

註1:宝島社「昭和プロ野球を彩った『球場』物語」佐野正幸によるとこの球場は川崎球場だということ。

1986年日本・ニュー・センチュリー・プロデューサーズ
監督:滝田洋二郎
脚本:内田裕也、高木功
音楽:大野克夫
出演、配役:
内田裕也:木滑(東亜テレビの突撃芸能レポーター)
渡辺えり子:その妻でCMタレント
麻生祐未:少女(タレント?)
原田芳雄:プロデューサー
小松方正:番組の司会者
殿山泰司:木滑のマンションの隣部屋の老人
常田富士男:警察の担当者
ビートたけし:殺人犯
スティービー原田:殺人犯
郷ひろみ:トップホストのジョージ
片岡鶴太郎:ホスト
桑名正博:バーの客
安岡力也:バーの客
篠原勝之:バーの客
村上里佳子:バーのママ
片桐はいり:ホストクラブの客
三浦和義:本人役
逸見政孝:ニュースキャスター
横澤彪:番組会議の司会
螢雪次朗:情報屋
桃井かおり:本人役
おニャン子クラブ:本人役

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