「蟹工船(1953年版)」大変悲惨な映画。

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

新品価格
¥420から
(2014/3/30 11:39時点)


1953(昭和28)年現代ぷろだくしょん
原作:小林多喜二
監督、脚本:山村聰
音楽:伊福部昭

出演:配役
山村聰:のんだくれの松木
中原早苗:夏ちや
河野秋武:箕面
森雅之:新船医・谷口
平田未喜三:監督・浅川
御橋公:工場長・藤野
山田巳之助: 船長

2014年3月22日、シネマヴェーラ渋谷の「山村聰特集」で見る。
有名なプロレタリア文学作品の映画化。

「蟹工船」とは、川崎船と呼ばれる小船で収穫したタラバガニを
改修して缶詰めに加工する工場のシステムを持った母船。
契約したとはいえ逃げられない船の上での過酷な労働、
ノルマを達成するための長時間の仕事、
病人、反抗者への体罰、リンチ、殺人など壮絶な場面が続く。
次第に監督・船員側と労働者側との対立が深刻になってゆく。

監督の浅川の存在感がすごい、解説によると演じた平田未喜三という方は本物の網元なんだそう。
ソ連領への領海侵犯しての漁や自分の船の成績が落ちるからと言ってSOS発した船を救助しなかったり(沈没して全員死亡)
「監督(責任者)」という地位を会社から与えられ自船の成績アップだけを考えて
労働者への虐待を繰り返す姿は
劇中で浅川の要求に、立ったまま凍ってしまったような表情を見せる船長と同様の気持ちを
見る側に与えて背筋を寒くさせます。

採ったカニを缶詰にするまでの一連の工程を丁寧に見せるシーンがあります。
採ったカニを網から剥がす→両手で脚部を持って胴体部を足で踏んづけて分解(足のみを使う)
脚を切り分け中身の肉部分を取り出す
(ここからベルトコンベア)足を並べる→缶詰に入れる→蓋をする・・・
単純作業を続ける労働者のつらさを増長する効果が出ていると思います。

原作は読んでませんでしたが映画を見た直後に文庫本を購入して読みました。
特定の主人公がいないという特異な展開。
原作では漂流した船員がカムチャツカの土地でロシア人、中国人と遭遇して共産主義について説明される部分がある。
また監督でもある山村聰演じる殺人逃亡犯は原作には登場しない。

映画はラストも原作とは違っていて1回目のストライキの失敗で終わる。
労働者側に死者まで出て原作より悲惨。
貧民や労働者が見ると社会への憤りを感じざるを得ない出来になっています。

映像的には船に乗る前の山村聰が女房殺すシーンは画面が斜めになっていて不安感が醸し出されているのが感心しました。
あと地元の彼女?の中原早苗演じる「夏ちや」の健康的な笑顔がよかったです。
回想シーンなので悲惨な労働現場とのギャップを感じさせます。

音楽が伊福部昭先生と言うことで注目しましたが
「鯨神」「ジャコ万と鉄」などを思い出すと
特撮だけではなく「海」という舞台も重厚な伊福部音楽に大変マッチすると感じました。
海も大きいからでしょうか。

(2014.0330)


偏食ムービーに戻る
目次に戻る
SAMEDASU扉に戻る

web拍手 by FC2