キサラギはトイレでマリアの夢を見たか。
「べクシル 2077日本鎖国」

「ベクシル-2077日本鎖国-」通常版 [DVD]

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監督:曽利文彦
声の出演:黒木メイサ(べクシル・セラ)、谷原章介(レオン・フェイデン)、松雪泰子(マリア)
配給:松竹
2007年べクシル製作委員会

<あらすじ>2067年、ハイテク産業の世界最先端を行く日本は
国際協定に反する人体延命パーツやアンドロイド製作などを行い国際連合を脱退。
さらに日本全体をバリアーで遮断するハイテク鎖国を敢行、情報の完全遮断をしてロボットの輸出のみを行なうようになる。
10年後の2077年、日本を支配する大和(だいわ)重鋼株式会社の総務局長、サイトウが世界各地で暗躍。
アメリカの特殊部隊「SWORD」は独自に調査を開始し、日本に潜入するミッションを進める。
しかし日本潜入に成功したSWORDの女戦士べクシル・セラが見た日本は想像を絶する地に変貌していた。
べクシルはレジスタンスのリーダー、マリアとともに大和重鋼の本社にアタックを敢行する。

9月10日、新宿で2回目を見る。
3DCGとモーション・キャプチャーによるフルCGアニメーション。
オープニングの雪中の館に車が向かうシーン、積もる雪と反射する光が実写とも見紛う出来。
その後の館での自動ロボットやファイタースーツでも戦闘シーンも圧巻。
サンペトロ港でのバイク追走シーンもスピード感たっぷり、ダンス・ミュージック系のサウンドトラックも世界観とよくマッチしている(註1)。
3DCGは人間ではない部分ではとてもよく出来ているが、人間のアップとなると少し不気味の谷が沸くのか自分には少々違和感が生じた
(引きの人間のシーンでは実写みたいなシーンもあって味がある)。
もう少し画面を濁らせばそういう部分はクリアされると思うのだが。まあこれは好みの問題だろう。
声の出演ではマリア役の松雪泰子が、感情抑え気味の出来でこれが素晴しい。

主人公のべクシルはSWORDの女戦士。ショートカットに青い眼、顔立ちは可愛い。
前半は強気のシーンが多く直情的な感情に走るキャラだが、
潜入した東京でレジスタンスと行動を共にする頃から人間的な優しさなどの感情が頭をもたげてくる。
特にレジスタンスの少年(実年齢は少年ではないんだが)タカシとの交流によるものが多い。
アメリカでのハイテクに囲まれた生活、同居している彼氏のレオンともちょっとした諍いがあって不安定な感情だった?べクシルは
東京の、第二次世界大戦後のドヤ街のような、しかし活気に溢れた人々の生きる様を見て人間の暖かみを感じる。
しかし実はそれも「造られた街」だった。

東京以外の日本中は砂漠と化し、ジャグと呼ばれる巨大なモンスターが多数蠢く。
東京は開閉可能な巨大な壁(おそらくセラミック製)で周辺をジャグからガードしている。
ジャグは大和重鋼によって不完全に生体アンドロイド化された人間たちの亡霊のような集合体。地底から出現する。
もはや人間の意志はなく金属に反応し、それを取り込むために猛スピードで前進する。
映像的には「砂の惑星」のサンドワームのイメージ。
円筒状の巨大な虫のような形態でよく見ると多数の金属のガラクタがつかず離れずの状態で回転しながら集合しているよう。
デザイン的には「ゲゲゲの鬼太郎」の「ひでりがみ」の話に登場した「野槌(のづち)」。
「アンドロイド化された人間たちの亡霊」と妖怪の収斂進化の例か(笑)。
ジャグが登場するシーンは特撮巨大怪獣映画のような出来で迫力満点。
このジャグが大和重鋼に特攻するレジスタンス側の切り札となるはずだった。

日本人すべてが生体アンドロイド化された中で、
実は大和重鋼の社長、キサラギだけが生身の人間だったことが
捕らえられ鎖につながれたべクシルの些細な反撃から明らかになる。
実はキサラギが自身を生体アンドロイド化していないという伏線が二つあって
1.SWORD本部でのモニターでの、大和重鋼からの生体反応が二つ。もう一つは捕らえられたレオン。
2.大和重鋼本社でサイトウと会話するキサラギが、ペットのように水槽で飼う小型のジャグに素手で触れるシーンがある。
キサラギが自身を生体アンドロイド化していたら金属を取り込むジャグが反応しているはず(サイトウは退室してこのシーンを見ていない)。

「キサラギ」こそが「べクシル・ワールド」最大の謎ではないか。
なぜ研究畑だった彼が大和重鋼の社長となりえたか。
日本中に謎のウイルス発生の報道を仕掛けて、ワクチン注射を義務付け、
そしてサイバーウイルスを日本全国民に注射したのは彼の戦略ではなかったのか。
そしてワクチン注射にかこつけて当時の会社の上のクラスを全員抹殺して、自分が社長になった。
しかしなぜそんなことを?
なぜ自分以外の日本の全国民を生体アンドロイド化する必要があったのだろうか。
日本人の女とはセックスも出来なくなってしまう。キサラギは外国人好み?それとも不能者?
マリアとは旧知の仲だったようだが、マリア一人を手に入れるために起こした行動でもなさそう。

また生身なら食事もするしトイレにも行くだろう。
側近のサイトウは大和重鋼の社内に台所や食料やトイレを発見できなかったのか?
キサラギが生身と知ったサイトウは、フランケンシュタインのモンスターが博士を憎悪するように創造主に手を掛ける。
だがキサラギは蘇生し脱出を図る。
最後、マリアがキサラギをネックロックに押さえつけて何かを言うが、
「これでもう離れないよ」の後の言葉は聞こえない・・・。

日本人が全滅するラストシーンに爽快感はない。自分が日本人だからか。
海外の目から見たハイテク日本の未来・・・。
パンフレットには世界50カ国での公開が決まっているという。
日本人が見るといい感情が起きないラストも、外国人が見ればどうということもないのかも。
日本より海外で受けそうな映画か。

また「2」があるとするならば、
どこかの島に生き残っていた日本人が帰って来て、
その後アメリカが統括していた日本列島でひと波乱起きる話か、
あるいは日本の所有権を巡って新たな敵との戦いか。
「べクシル・ワールド」はまだ続くかも知れない。

(07.0910)

註1:ただサントラ買って帰って家で聞いてもそんなに感動しないし、あまり場面も思い出せないのは何でだ?

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