「愛の嵐」甦る倒錯愛の日々。

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1973年イタリア（無修正ノーカット完全版は1994年）
原題：Il Portiere di notte（英題:The Night Porter)
監督：リリアーナ・カヴァーニ
脚本：リリアーナ・カヴァーニ、イタロ・モスカーティ
音楽：ダニエル・パリス

出演：配役　
ダーク・ボガード：マックス（元ナチス、現在はホテルの受付係）
シャーロット・ランプリング：ルチア（元収容所の少女、現在は世界的指揮者の夫人）
フィリップ・ルロワ
ガブリエレ・フェルゼッティ
イザ・ミランダ
アメディオ・アモディオ
マリノ・マーゼ

＜あらすじ＞元ナチスでにせ医者として捕虜を牛耳っていたマックスは
戦後地味なホテルの受付係として静かな暮らしを送っていた。
そのホテルに世界的な指揮者夫妻が宿泊するが、
指揮者の夫人はマックスが収容所時代に性技を教えて
特別に愛情を注ぎこんだ少女・ルチアの成長した姿だった。
一方、マックスのナチス時代の同僚で組織される「査問会」は
自分たちが戦犯として法廷で裁かれることを恐れ、
証人を次々に消す作業を繰り返していた。
再会したマックスとルチアは収容所時代での倒錯した性に目覚め、
マックスの自宅に住み始めたルチアらは、査問会との溝が深まり
やがて査問会はマックスとルチアを抹殺しようとする。

'11年8月、渋谷シネマヴェーラのナチス映画特集で見る。
以前NHKの衛星映画劇場で観た記憶があるのだが、
なぜか眠れないバレリーナ（男性）の尻にマックスが睡眠薬の注射を打ってやって
バレリーナが「痛くない」というシーンが一番印象に残っていて
どうなんでしょう、エロいシーンは大幅なカットでもあったのでしょうか？
ほとんど記憶にないのです。
で、再見。

シャーロット・ランプリングが指揮者夫人とナチの収容所での少女時代とを演じ分けています。
単なるメイクでこの差が出るのかと疑いたくなるような見事な演じ分けです。
収容所時代のシーンでは全裸でフラッシュを浴びて写真撮影されるシーンがあります。
このシーンの恥じらいの感じが悲惨さを増します。
それからあまりにも有名なナチ帽に上半身裸で乳房を晒してサスペンダーと手袋で踊りまわるシーン。
・・・ここ、足ははだしなんですね。ブーツ履いてる方がよりナチって感じが出てよかったのでは。

ルチアはマックスとの偶然の再会を甘受しているフシがあって、
夫の指揮者の次回公演地には同行せず、一人だけ滞在を伸ばす。
そのうちにマックスが部屋を訪れ、
最初は抵抗していたルチアに次第に収容所での思いが蘇り、マックスを受け入れます。

そうですね、ルチアはマックスによって性の奴隷にされていたんですね。
それで再会でスイッチが入ってしまった。
自分では制御できなくなってしまった。
マックスも同じで、査問会と反発し、職を辞してルチアとともに自宅に籠城する。
世間では｢世界的指揮者夫人が行方不明」とスキャンダル扱い。
しかし食糧が尽きると査問会の方が強く、
ルチアはだんだん口数が少なくなり｢ハングリー（腹減った)」としか言わなくなる。
精神的にも破綻、退行しているような感じが見受けられる。
観念したマックスはタンスに入れて置いたナチの制服に着替え、
ルチアには収容所時代のようなワンピースを着せる。
そして足には白のソックスをはかせる。
精神退行したルチアはただ｢アハハ」と笑うだけでマックスに従う。

先の収容所でカメラ撮影されたシーン、
ルチアは全裸で立っているように見えるが
足元をよく見ると、
画面から切れるか切れないかというところで
彼女が白のソックスをはいているのがわかる。
つまり二人は服装まであの収容所当時まで戻ったということ。
だが車で脱出した二人はラストを残酷な結末で迎える。

ナチ側が勝利する悲惨なラストで監督は何を言いたかったのか、
戦争はいまだ終わっていない、まだ苦しんでいる人たちが闇の中にいるはず、
そういうメッセージだったのか。

マックスとルチアが観念して警察に通報すれば命だけは助かったと思うのだが
そうしないところが不可解。
それは査問会の存在を公にして、自分たちの正体をも白日の下にさらす両刃の剣だが。
査問会を道連れにすることもできるし、査問会がのち報復することになっても
何日かの延命は期待できたと思うのだが。
マックスはルチアを警察に保護させ逃がし、自分だけ査問会の報復を受ける、という手もあったはず。
ところがマックスがそうはしないのは、
もしかしたら精神退行したルチアが元に戻ることはないと考えたのかもしれない。

見どころはやっぱりシャーロット・ランプリングのヌードのシーンですね。
だいぶスレンダーな方ですが。肉感的な方が好きな方はその辺注意。
見たのは｢無修正版」だったらしいのですがどこが違うかは不明。
たぶん密室で銃撃で脅されて逃げ回るシーンでヘアが出る部分でしょうか。
それから何だかんだ言って
倒錯的なナチ帽＆サスペンダーファッションで踊るシーンは名場面です。

（'11.0919）

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「愛の嵐 」甦る倒錯愛の日々。

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