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1970年アメリカ、メキシコ
監督、脚本、音楽、衣装、美術:アレハンドロ・ホドロフスキー
製作:アレン・クライン
出演・配役
アレハンドロ・ホドロフスキー:エル・トポ(ガンマン)
ブロンティス・ホドロフスキー:エル・トポの息子(子供時代)
マーラ・ロレンツィオ:エル・トポの彼女
ロバート・ジョン:エル・トポの息子(青年時代)
<あらすじ>一村を大量虐殺した“大佐”の一味を退治したエル・トポは
息子を教会に置き去りにし、女と旅に出る。
“最強のガンマンになって欲しい”と願う女のために、エル・トポは「砂漠の4人のガンマン」に次々と挑戦し、
彼らを卑怯な手で打ち破っていくが、最後の相手に勝てなかったためにエル・トポは苦悩する。
女は途中で道連れになった女ガンマンに、
エル・トポと自分のどちらを選ぶか選択を迫られ、女ガンマンを選ぶ。
エル・トポは女ガンマンに撃たれて倒れる。
20年以上の歳月が過ぎ、エル・トポは目覚める。
彼は山の洞窟で長年過ごす近親相姦で障害者ばかりの一族の神に祭られていた。
事情を知ったエル・トポは、洞窟を開けるトンネルを掘って一族を太陽の元に導くことを誓い、
彼の世話係だった小さい女とともに街へ出て大道芸、肉体労働などで金を稼ぎ始めた。
街に新しくやってきた宣教師は前任者の「拳銃ラシアン・ルーレットの奇跡」を看破し、教会の主となる。
しかし彼はエル・トポの息子の成長した姿だった。息子は捨てた恨みでエル・トポを殺そうとするが、
エル・トポは「トンネルが出来上がるまで待って欲しい」と息子に頼む。
早く決着をつけたい息子は、仕方なく?金集めとトンネル堀りを手伝い始める。
そしてトンネルが開通した・・・・・・・。
以後ショッキングな内容もありますので気をつけて閲覧してください。
'12年4月、渋谷シネマヴェーラの特集で見る。
実は2度目。最初いつ見たかは忘れました。でも家に1回目観たとき購入したパンフが残ってる。
エル・トポとは「もぐら」の意味だそう。
流血、残酷、リアルな障害者が次々と登場する濃厚な作品。
それらの多くが儀式的であり宗教的でありシンボリックなもののように感じるが
実際にどこまで意味があるものなのかは不明。
ビジュアルイメージの集約だけなのかも知れない。
後半、エル・トポが目覚めてから後は
弱者の救済、実世界と宗教社会の対立、輪廻転生などの宗教的なイメージの場面が多いが、
見せ場はやはりバイオレンス度・エロス度の高い前半だろう。
エル・トポは“大佐”を去勢して自決に追い込むと
大佐の所有物だった女を拾い、代わりに息子を捨てて旅に出る。
女は「この砂漠で最強の男になってもらいたい」とエル・トポに懇願したため
エル・トポは4人のガンマスターと対決するために砂漠を彷徨う。
最初のガンマスターはヨガの行者のよう。
盲目だが「弾を逃がす」ように体が反応する。なので被弾しても致命傷にならない。
気配を読むことが出来てお椀?の取りあいでもエル・トポより早く手が動く。
吹き替えが女性の声になっているようで妙にエロティック。
その従者もインパクトありすぎる人で、両腕のない人が両足のない人を背負ってる二人で一人のダブル・マン。
エル・トポとの対戦の前、マスターの髪を腕のない人が足の指で三つ編みに編む。この辺この人リアルに自分の「芸」を見せている。
エル・トポはガンマスターを卑劣な手で破る。マスターのそばにいた女ガンマンはダブル・マンを射殺する。
エル・トポは足のない男の遺体を手のない男の上に乗せてやる。ラストの「輪廻」にも結び付くような状況。
でもそもそも子のマスターは盲目なのに銃で強いのか?
エル・トポは続いて「ライオンを飼っていて、母親を絶対視する手が器用なガンマン」
「ウサギの群れと共に住んでいて、手製の単発銃で正確無比の射撃をするガンマン」らと戦い、
いずれも卑怯な手段でこれらに勝利する。
最後のマスターは仙人みたいな風情で、銃すらもっていない。
勝負は無駄だとエル・トポを諭そうとするが、銃を撃つエル・トポに
マスターは虫取り網で弾丸を跳ね返し、エル・トポは血を流す。
なおも勝負にこだわるエル・トポの前で、マスターは銃で自殺してしまう。
エル・トポは自分がやってきたことがいかに意味のないことであったかというように苦悩する。
個々の価値観、生産性ということを訴え、
女たちから捨てられたエル・トポをいずこからともなく現れた異形の者たちが山へ運んでゆくシーンで前半は終わる。
後半エル・トポが小さい女の人と大道芸を見せるシーンでは
アレハンドロ・ホドロフスキーのコメディアンとしての側面が見られる。非常に堂に行っている。
エル・トポの息子が約束通り「早くトンネルを完成させてエル・トポを殺す」ために
エル・トポのトンネルを掘るための資金稼ぎを手伝うようになり、
荷降ろしまでか大道芸まで参加するシーンは面白い。
血と死体、バイオレンス、異形者で溢れたこの映画の中で、この辺りだけが普通の世界のように感じられる。
さて、トンネルがいきなり開通してしまったもんで、中の異形者は喜び勇んで山から街へ下りてくる。
街の人達もいきなり山から異形者が大挙して降りてきたものだから驚き警戒し、銃を構える。
誰も何の説明もしないで睨み合っているものだから、街の人達は遂に異形者たちに発砲し、彼らは成すすべもなく死んでゆく。
・・・まあ、いきなり山から自分たちと違う姿の大勢が意味不明で降りてきたら
街の人達が驚くのも無理がないと思います。警戒して発砲するのも仕方がないと思います。
日常世界と非日常世界の間の見えない境界線を感じます。
山から戻ってきて惨状を見たエル・トポは怒る。街の人達はエル・トポにも発砲。
しかしエル・トポは胸に数発の銃弾を受けながらも前進して逆襲し、街を破壊し街の人達を殺し始める。
あまりのエル・トポの強さに生き残った街の人達は雲霞の如くに街から逃げ出す。
エル・トポは座禅のような形で道に座り、ランプの油で焼身自殺する。
小さい女の人はエル・トポの子供を身籠っていた。
生まれたエル・トポの第二の息子と、小さい女の人、エル・トポの息子は3人で馬に乗り旅立ってゆく。
エル・トポの伝説は次代に引き継がれたのか?3人の未来は?謎かけをしながら映画は終わる。
前半のエル・トポの彼女役の女はたびたびヌードを見せる。
腰はあんまりくびれてないけど肉感的。
(12.0708)
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