権藤一佐こと峰岸徹追悼:「ゴジラVSビオランテ」

ゴジラVSビオランテ [DVD]

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<あらすじ>前作で新宿の市街に飛び散ったゴジラ細胞を巡って
米バイオメジャー、サラジア王国、日本が三つ巴の抗争を展開。
巻き込まれた白神博士は娘の英理加を失う。
ゴジラが復活する場合の備えとして、政府は白神博士に抗核バクテリアの開発を依頼するが
博士は桐島と対立するも条件付で開発をすることとなる。
抗核バクテリアの完成とともに研究室に巨大なツルが発生し、忍び込んだサラジア王国のエージェントを震撼させる。
ほどなく芦ノ湖に巨大な植物怪獣が出現する。白神博士は怪獣を「ビオランテ」と呼ぶ。
ビオランテは薔薇の細胞とゴジラ細胞と英理加の細胞とを白神博士が合成させて誕生した怪獣だった。
そして米バイオメジャーからは脅迫状が政府に届く。
抗核バクテリアの引渡しに応じない場合は三原山を時限爆弾で爆破して、
眠っているゴジラを復活させるというものだった。
しかし抗核バクテリアはサラジアに奪われ、三原山の時限爆弾は爆発してゴジラが復活する。
ゴジラは芦ノ湖に到達し、ビオランテと対決する・・・。

08年10月13日、俳優峰岸徹氏の訃報を知る。
この映画で峰岸氏の演ずる権藤一佐はまさにポイントゲッター。
5年以上眠っているゴジラの監視という自衛隊からの出向業務にあきあきしたセリフ。
それから抗核バクテリアの捜索のために車に乗るシーンで口ずさむ
「♪探し物は何ですか〜」(これは大阪城ホール避難のシーンの伏線か?)。
バイオメジャーの、ゴジラを復活させる時限爆弾がタイムオーバーになった時の「アーメン」。
その直後、サラジアのエージェントに抗核バクテリアを奪われての
「ゴジラは出るわ、抗核バクテリアは盗まれるわ、最悪の展開ですなあ」。
最後は大阪ツインタワーで決戦!
ツインタワー上階からゴジラの口腔へバズーカ砲で直接抗核バクテリアを打ち込む!
「クスリは注射より飲んだほうが効くぜ、ゴジラさん」
直後、怒りのゴジラがビルを破壊して権藤一佐戦死!
大変インパクトのある役でした。
改めて峰岸徹氏のご冥福をお祈りいたします。

映画のストーリーは「抗核バクテリア争奪戦」と「ゴジラ撃退(に抗核バクテリアは有効か?)」が主題。
人間側が抗核バクテリア、スーパー]U、
超能力少女三枝美希を使っての精神感応によるゴジラ足止め(このシーンはよく出来ていた!)、
さらに人工の落雷による抗核バクテリア活性化作戦などあらゆる手段を使ってゴジラを撃退しようと様々な策を講じる展開は面白い。

では看板のビオランテは?
実はストーリーはビオランテが登場しなくても全然とどこおらない。
ビオランテが登場しなくても話は成り立つ。
芦ノ湖の植物タイプはともかく、2度目の登場の巨大な口と牙を持つ形態はゴジラを凌駕する巨体で
造型的には大変見栄えがあったのに添え物的な存在で残念。
ゴジラはビオランテに倒されるのでなくて抗核バクテリアが効いて海に還る。
この辺の「人間によるゴジラ撃退」が主題で対戦怪獣がやや印象不足なのはのちの「xメガギラス」を連想させる
(だからといって映画として「xメガギラス」がつまらないということではないので念のため)。

ビオランテっていうのは白神博士が死んだ娘の英理加の細胞を密かにバラに移植させて生かせていたが
そのバラが弱っていったために抗核バクテリアの作成依頼を承諾し、
条件として一定期間ゴジラ細胞(抗核バクテリア作成に必要)を自分の研究所で預かることを提案し、
実はその間弱ったバラを活性化させるためにゴジラ細胞を融合させた、というのが誕生の由来。
バラと人間とゴジラの細胞が融合した怪獣。
・・・でも白神博士、ゴジラ細胞はバラの肥料じゃないんですよ・・・。

ビオランテが風化するシーンでは
芦ノ湖での1度目でかすかに第2形態の姿が映され
第2形態の風化では白神英理加の魂が昇華?してゆくのか沢口靖子の顔が昇天する映像、
この2箇所演出としてはとてもダサい。
第2形態のメディアへの露出は映画公開前あったが、
1度目の風化で第2形態の姿を見せる必要はないと思うし
クライマックスの出現への「期待感」「タメ」を漏らすような愚挙に思える。
むしろ芦ノ湖での風化のシーンで幻のように見えるのはゴジラそのものの方がよかったのでは。

この映画が初登場の超能力少女・三枝美希(!)は、口数が少なくて神秘的な部分もあってよかった。
VSシリーズの進行でレギュラーになったのはいいけど、
だんだんと神秘性と存在感が薄くなっていき、普通の女の子っぽくなって行ったのは残念。

それから音楽が物足りなかった。ゴジラのテーマ曲はオープニングとゴジラ初登場シーンで流されていたのだが。
スーパー]Uのライトモチーフとそれと同じメロディーのラストの曲はよかったが、
クライマックスでゴジラとビオランテが戦うシーンの曲は緊張感も迫力もなかった。
何でだろう・・・?とずーっと考えていた。
その謎は次回作「ゴジラVSキングギドラ」で明らかになった。

1989年東宝
制作:田中友幸
原案:小林晋一郎
監督・脚本:大森一樹
特技監督:河北紘一
音楽:すぎやまこういち
ゴジラテーマ曲:伊福部昭
出演・配役
三田村邦彦:桐島一人
田中好子:大河内明日香
小高恵美(第2回東宝シンデレラ):三枝美希
峰岸徹:権藤吾郎一佐
高嶋政伸:黒木翔特佐
高橋幸治:白神博士
沢口靖子:白神英理加
上田耕一:山地統幕議長
鈴木京香、豊原功補:スーパー]Uオペレーター

(08.1019)



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