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2001年東宝映画
監督:金子修介
音楽:大谷幸
出演:宇崎竜童、新山千春、天本英世
<あらすじ>
平和ボケした日本を50年ぶりにゴジラが襲撃。
防衛軍准将立花はテレビレポーターの娘由里との心の交流を深めながら、
復活した護国聖獣との共同作戦でゴジラに立ち向かう。
「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」におけるゴジラは、
古代の恐竜の生き残りが放射能の影響で怪獣化しただけではなく
「戦争によって無念の死を遂げた人々の残留思念の集合体」であるという。
そのため砲弾などの物理的な攻撃で倒すことができない。
本栖警察署で立花由里(新山千春)と接見した伊佐山教授と思しき人物(天本英世)も
由里に「ギドラを呼べ」と指示したもののゴジラの退治方法までは伝えていない。
ではどうして由里の父である立花准将(宇崎竜童)はゴジラを倒すことができたのか。
「残留思念の集合体」であるGMKでのゴジラはいわば霊的な存在だ。
そのため物理的な攻撃で多少の傷をつけることはできても倒すまでは到らない。
立花准将はゴジラの口から体内に侵入し、体内から削岩弾付きの魚雷で攻撃した。
魚雷は地上でゴジラと対峙する娘・由里の眼前でゴジラの左肩口あたりから突き抜けた。
見た目だけではゴジラの体内から攻撃しただけの「物理的な攻撃」であるはずだ。
特殊潜航艇「さつま」もろともゴジラに飲み込まれ艇内で気を失っている立花准将。
「お父さん・・・おとうさん・・・」彼を呼ぶ声が聞こえる。
顔を上げるとそこにはいる筈のない由里が立っていた。
「由里・・・」
驚く立花。
「お父さん、最後まであきらめないで」
父を励ます由里。なにか冷静で、印象が違っている。
特別な力を持っているかのような、力強い口調。
実際の由里はその頃レインボーブリッジから海上に転落して失神していた。
彼女の魂だけがその時ゴジラの体内の、「さつま」艇内の父の元に現出したのだろうか。
霊的な存在であるゴジラの体内はいわば地上と遮断されていて生者と死者の区別があいまいな冥界だ。
立花准将がゴジラの体内が冥界であると考えて体内に突入したのかどうかまでは定かではないが
(飲み込まれたのが偶然ではないのは直前に広瀬中佐が
「准将、駄目です!」と立花准将の行為を止めさせようとするシーンで窺われる)
外部からの攻撃は通じないから体内から、と考えたのは間違いないだろう。
しかしそれだけでは足りなかった。
「さつま」艇内で失神したままの立花はこのままでは死を待つだけだ。
しかしゴジラの体内の「さつま」艇内に幽体離脱した由里が現れた。
冥界では肉体を持った立花は逆に無力なのかもしれない。
しかし幽体だけの由里に励まされたことで立花准将は何らかの「霊的な力」を授かったのではないだろうか。
夢か現か、再び目覚めた立花の前に由里の姿はなかった。
しかし立花は「ありがとう、由里」と娘に礼を言い削岩弾付き魚雷を発射させる。
この攻撃は魂だけの由里から「霊的な力」を授かった立花准将がスイッチを入れたことにより
冥界からの、生者と死者のはざまにいる者たちからの、残留思念の集合体たるゴジラへの「霊的な攻撃」となりえたのではないか。
サイエンスライター武田に介抱された由里が蘇生すると、眼前の海面が大きく盛り上がりゴジラが出現する。
と、ゴジラの左肩口に穴があく、体内から突き抜けた魚雷が爆発する。苦悶するゴジラ。
「お父さんが撃ったんだわ」由里が言う。
幽体として「さつま」艇内で父と逢った事を由里は記憶していたのか。
そして、ゴジラは由里が幽体として自分の体内を通過してきたことを明らかに理解している。
ゴジラはその白眼で由里だけを見ている。その傍らの武田には関心がない。
つまり自分に対しての「霊的な攻撃」に加担した由里に対して敵意を持っているのだ。
ゴジラは由里に向けて熱線を発射しようとする。
逃れられないと覚悟を決めたか、目をつぶる由里。
しかし熱線はゴジラの口腔から発射されることなく魚雷での「霊的な攻撃」が肩口にあけた穴から空に向けて放出された。
苦悶する黒い巨体、二度目の熱戦放出も同様に肩口の穴から放出され、ゴジラは大きな波を立てて海上に倒れこんだ。
ゴジラの体内から脱出する「さつま」艇の立花准将。
モニター画面のゴジラと目が合う。
ゴジラは海中を朱に染めながら怒りの表情だ。
「さつま」に向けて熱線を吐くゴジラ。
しかし傷口が過熱されるような描写の後、ゴジラは大爆発する。
図らずもチームワークとなった立花親子の「霊的な攻撃」によってゴジラは消滅する。
ここからは余談。
帰還して歩いてくる立花准将は最高にかっこいい。
「お父さん―!」そこに駆け寄る由里。
遮る立花准将、「そこまでだ、残留放射能を確認していない」
「お父さん・・・」
「念のためだ」
ここで由里が泣き顔で父に敬礼。
「よせよ、由里、照れるぜ」
この敬礼、物語冒頭で酔っ払って自宅マンションに帰ってきた由里が父にふざけてした敬礼の逆となる構造になっている。
「俺だけじゃない。仲間たちと、ヤマトの聖獣たちに」
そういって海に向かって敬礼する父と娘。
感動のラスト。
(2003.6.1)
【見どころ?】
大桶谷で前進するバラゴンをバックに記念撮影をする男女のシーンで、
カメラを構えて写真を取ろうとする男の右側にいるエキストラ?の三波伸介風の男性、かなり動きが挙動不審。
序盤、テレビのリポートでモニターに映る新山千春のモノクロのアップ、
ぞくっ、とするほど美しい。
【四神獣】
金子修介作品は伝奇的な要素を含む作品が多いがこの映画での「護国聖獣」という設定は秀逸だ。
ギドラ、モスラ、バラゴンの三怪獣をもし、東西南北を守る四神獣「青龍」「白虎」「朱雀」「玄武」にあてはめたとしたら・・・
四神獣まずは青龍、青き龍。龍のイメージはもちろんギドラ。
少し強引な持って行き方をするならば、
昭和39年「三大怪獣地球最大の決戦」キングギドラ初登場作品では
着ぐるみの没テイクで全身がメタリック・ブルーに塗られたギドラの写真が存在する。
白虎、白い虎のイメージは・・・白地に虎の模様の黄―オレンジ、と黒。
この色が揃えばそれはすなわちモスラ。
朱雀、紅蓮の巨鳥は本来ならファイアーラドンを推したいところだが
翼を広げたイメージが耳を広げたところに見えれば、赤い怪獣バラゴン。
さて護国聖獣が全て四神獣に当てはまるとするなら、4頭のうち3頭はゴジラにやられてしまったのだから
金子監督のGMK続編があるとするなら四神獣最後の1頭がゴジラを迎え撃つストーリーになりはしないか。
四神獣最後の1頭・・・それは「玄武」。
・・・大蛇を纏う様に従えた、巨大な亀のように見える神獣だ。
(2005.0103、追記2010.0119)
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