「羊たちの沈黙」レクター博士三部作ともう一つの「レッド・ドラゴン」

レクター博士シリーズ、とでも言っていいのかどうかわかりませんが、
アンソニー・ホプキンスがハンニバル・レクター博士を演ずる作品は2008年現在3作。
「羊たちの沈黙」
「ハンニバル」
「レッド・ドラゴン」

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サイコ・スリラーっていえばやっぱり「羊たちの沈黙」だと思います。
高い鼻つんつんのジョディ・フォスターはオーラがかかってる美しさだし、
アンソニー・ホプキンスのレクター博士もすごいオーラでもろ怪物だし。
みなさん普通の人間じゃありません(笑)。
鉄格子ごしのクラリスとレクター博士の連続殺人鬼「バッファロー・ヒル」(テッド・レヴィン)への謎解きはだんだんと深まっていき、
クラリスは今でも羊の夢を見る‐見てうなされる‐ことをレクター博士に告白する。
そしてレクター博士は真実を語ったクラリスに「ありがとう・・・」と言う。
ノートだったか絵だったかを鉄格子越しに手渡しするシーンで、
ちょっとだけクラリスとレクター博士の指が触れる、
あのシーンは両者の一瞬のスキンシップなんだけどあれがいいんだよ。
あれが鉄格子で拘束された現状のレクター博士がクラリスに示した抱擁あるいはKISSの代償、つまり愛情表現に見えた。
その後クラリスが去ると博士の食事が運ばれてくるんだけど、
それがラム(羊)なんだよなあ(笑)。警備員のセリフも「今日は血もしたたるラムだぞ」とか言う(字幕だけど)。
よく出来てるというか、次に血がしたたる姿になるのは自分だっていうのに・・・。
レクターが警備員を殺害して、その遺体をぶる下げて飾るシーンは
残忍ではあるが逆光とあいまって何故か神々しさを感じてしまうビジュアル。
でその直後の、博士が重傷の警備員に化けて厳重な警戒網を破って脱出するシーンは血も凍ります。
それから犯人の家にSWATが突入する、というところでドアを開けたら犯人は既に引越ししていなくて、
その引越し先をクラリスが訪ねてドアを開けるシーンと重なる、っていう演出が「そう来たか」って感じで意外性があってとてもよかった。
地下室でのクラリスと「バッファロー・ヒル」の暗闇での対決も恐怖感そそる出来。

「ハンニバル」はストーリー的には「羊」の後の話なんだけど、
フィレンツェの街並みの映像とか脳味噌丸出しのシーンとかが売りみたいで話がイマイチ盛り上がらない。
過去にレクターとつるんでいた金持ちメイスンがレクターの話術のせいで不具にされたとうらみを持って復讐する話。
金持ちの役はゲイリー・オールドマン。
この人はけっこう好きな役者です。
イノシシのような巨大な養殖殺人豚を飼い馴らしてレクターを縛り付けて足を食わせる、というリヴェンジの筋書き、
しかしレクターに逆転され、自分が豚の餌にされてしまう。
でクラリスも登場するんだけどジョディ・フォスターじゃなくて別の女優(ジュリアン・ムーア)。
最後に女に怪我させないために自分の腕を犠牲にするって、「ハンニバル」に「ガメラ3」の影響ありか?(そんなわけない)
監督はリドリー・スコットで、陰影のある街並の描写には監督らしさを感じたがラストとががなあ・・・。

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「レッド・ドラゴン」は逆に「羊」以前の話。
レクターがいかに逮捕されたか、っていう話がオープニング。
レクターと同等の推理力を持つ男、
グレアム刑事(エドワート・ノートン)が登場する。
話はグレアム刑事対レッド・ドラゴンたる犯人ダラハイド(レイフ・ファインズ)の対決が軸。
途中で犯人が目の見えない女性と接触するシーン
(目の見えない女性に、麻酔した虎を触らせる)
がいい出来。この盲目の女性役の人がうまい。
またこの辺、障害を持った不幸な犯人の屈折した愛が感じられる。

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チルトン博士は「羊」と同じ役者(アンソニー・ヒールド)が演じているんだけど、
のちにクラリスの上司になるクロフォード捜査官だけが、「羊」のスコット・グレンじゃなくてハーベイ・カイテルなのがちょっと不満。
でこの映画はラスト、チルトンがレクターに「もうすぐ女性の面会があるぞ」と告げるところで終わる。
もちろんその女性とはクラリスのことであり、「羊」の冒頭につながっているわけ。

じつは小説「レッド・ドラゴン」はそれ以前にも映画化されていて、
国営放送のBSで見たんだけど、
映画「羊たちの沈黙」がブレイクする以前だから当たり前なんだけど、
みんな別の役者がやってて、
特にレクター博士(ブライアン・コックス)は何か白衣着た猿みたいなビジュアルで、アンソニー・ホプキンスのような神秘的な雰囲気が感じられず
全体的に中途半端なアクション映画のようで退屈でした。
最後は犯人やっつけて平穏を取り戻したグレアム一家が
夕日のビーチサイドでダンスしておしまい、だったと記憶している。
犯人ダラハイド役の人だけは見たことがあって「ロボコップ2」でロボコップ2号に改造されてしまう麻薬中毒の犯罪者の役やってたトム・ヌーナン。
こっちの「レッド・ドラゴン」も今はDVDで発売されているけどお間違えのないように。
レクター博士の見せ場は殆どゼロです。



●羊たちの沈黙
原題:The Silence of the Lambs
監督:ジョナサン・デミ
製作総指揮:ゲイリー・ゲッツマン
製作:エドワード・サクソン、ケネス・ウット、ロン・ボズマン
脚本:トマス・ハリス(原作)
テッド・タリー(脚色)
出演:ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン、テッド・レヴィン、アンソニー・ヒールド
音楽:ハワード・ショア
1991年アメリカ

●ハンニバル
原題:Hannibal
監督:リドリー・スコット
製作総指揮:ブランコ・ラスティグ
製作:ディノ・デ・ラウレンティス、マーサ・デ・ラウレンティス
脚本:デヴィッド・マメット、スティーヴン・ザイリアン
出演:アンソニー・ホプキンス、ジュリアン・ムーア、ゲイリー・オールドマン
音楽:ハンス・ジマー
1999年アメリカ

●レッド・ドラゴン
原題:Red Dragon
監督:ブレット・ラトナー
製作総指揮:アンドリュー・Z・デイヴィス
製作:ディノ・デ・ラウレンティス、マーサ・デ・ラウレンティス
脚本:テッド・タリー
出演:エドワード・ノートン、アンソニー・ホプキンス、レイフ・ファインズ、ハーベイ・カイテル、アンソニー・ヒールド
音楽:ダニー・エルフマン
2001年アメリカ

●刑事グラハム/凍りついた欲望
原題:Manhunter
*日本国内DVD再発売時に●「レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙」と改題。

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監督:マイケル・マン
製作総指揮:バーナード・ウィリアムズ
製作:リチャード・ロス
脚本:マイケル・マン
出演:ウィリアム・L・ピーターセン、キム・グライスト、ブライアン・コックス、トム・ヌーナン
音楽:ザ・レッズ&ミシェル・ルビーニ、喜多郎
1986年アメリカ

(2006.0130-31のSAMEDASU掲示板の書き込みを再編集)

(080419)



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