「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」ディレクターズ・カット版
ただのエロティシズムと思うなかれ。 病める現代社会の問題点を提起する骨太の映画。 であることと同時に佐藤寛子の極上ヌードを拝める大変お得感のある映画。


2010(平成21)年「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」製作委員会(角川映画、クロックワークス、ファムファタル)
監督:石井隆
脚本:石井隆
音楽:安川午朗

出演:配役
竹中直人:紅次郎(なんでも代行屋)
佐藤寛子:加藤れん
東風万智子:安斎ちひろ(女性刑事)
井上晴美:田中桃(れんの異父姉)
宍戸錠:山神直樹(れんの実父)
大竹しのぶ:加藤あゆみ(桃、れんの母親、「バー」あゆみの経営者)

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破壊、殺人、怒り、憎悪、狂気、裏切り、メタモルフォーゼ、愛、肉体、エロス、倫理・道徳観、
・・・そして生が複雑にいりくんだすごい映画です。

役者の緊張感、肉体のひしめき、感情の爆発。
ハリウッド然としない日本の土壌、空気にマッチした自然な情景。
それでいてチープさは全く感じさせないセット。
そして薄幸の少女を演じる佐藤寛子。
時には傷つきもろく、時には悪魔のように残忍―そんな儚さと高テンションを披露。
長時間のヘアヌードシーンあり。
グラビアアイドルの彼女をこれほどタフな演技に突き進ませたエネルギー、情念は一体何なのか。

・・・ですが残酷、殺人、扇情な過激シーンが多数ありまして通常版はR15、
追加シーンが19分多いディレクターズ・カット版はR18作品であります。

なのですみませんが18歳未満の年齢が低い方はこの辺で退場して下さい。
いろいろ意見はあろうかと思いますが、
あなた方はもっと他の勉強をして
美しいものをたくさん見て、恋を経験して、社会の勉強をして、
そして大人になってからこの映画にたどりついても
この映画の批評が出来るのではないかと思います。
また読み進めて行って具合が悪くなった方がおられましても一切の責任は持てませんので
自信のない方もこちらから引き返した方がよろしいと思います。


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<あらすじ>都会の外れのバー「あゆみ」は三人の母娘らが経営していた。
母あゆみ、姉の桃、末妹れん・・・。
しかし将来ビルを建てて裕福な暮らしを夢見る三人は
老い先短い老人と同居し、巨額の保険金を立てて時期が来たら事故に見せかけて殺す、という手段で金を稼いでいた。
ある老人はその企てに気づき、部屋で暴れ出した。
仕方なく桃は台所から包丁を持ってきて、老人を刺し殺す。

三人は風呂場で老人を解体し
ミンチを富士の樹海に運び放り捨てる
しかし老人がつけていたロレックスを一緒に遺棄したことから
「製造番号からアシがつく」ことを畏れはじめる

れんは街のなんでも代行屋・紅次郎(くれない じろう=偽名)の住む事務所兼住居に赴き、
「父を散骨した時誤って落としてしまった」と偽って紅にロレックス探しを依頼する。

仕事を依頼された紅次郎は、その前の依頼であるアパートの部屋に山積みされたゴミの処理のため
現場を確認しようとしてやってきたところを女刑事・ちひろ(東風)にぶん殴られる。
ちひろは見舞がてら紅の住まいの倉庫へ度々顔を出すようになる。

紅はロレックスを発見するが、それには血がこびりついていてさらに周囲には蟻や蛆が多く見られた
不審に思った紅はちひろの元にロレックスを持って行き、それは警察の鑑識で調べられることになる。
付着していたのは人間の血と肉、そして富士山麓周辺の土だった
やがて紅は母娘の完全犯罪計画に巻き込まれてゆく。

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'11年1月17日、銀座シネパトスのレイトショーで観る。
まず、大竹しのぶと井上晴美の鬼母娘の演技に驚かされる。
大竹しのぶ(あゆみ)は顔が大竹しのぶなのに中身に別の人格が憑依したような鬼嫁っぷり。
風呂場でユーモア漂わせながら血だらけになって解体してるところなんか
日常と非日常がごちゃ混ぜになったような出来でシュールです

井上晴美の桃(もも)は殺人鬼ってまではいかないが(吐くし)、
異父妹れんへのいじめっぷりとか母親と残酷ネタで心の底から笑ってる、って感じがもう残忍さを醸し出してます。

店のウリはれんのポールダンスで、このシーンで佐藤寛子の大開脚(パンティーはいてますが)
むっちりヒップなどが見られますが、この後の見せ場に比べたら序の口序の口、前相撲でした。

こんな鬼のような母姉と生活してるれんは、実の父親(山神)にレイプされ、
しかもそのビデオを父が売って金を儲けていた、という過去をしょって生きています


れんの可哀相な過去の描写を見ると、
病める現代社会の持つ少子虐待、DV、人と人とのつながりの希薄さなどの問題が浮び出してくるようです。
れんが切なくてなりません、この頃は。

母娘たちは山神を殺害して多額の金を得ようとするが、
その際紅を仲間に引き込もうとする。

山神の虐待から逃げてきた、と言って雨の日に紅の住居にれんがやってくる。
れんは濡れた服を脱ぎ、生まれたままの姿になり、吐き出すように過去を告白する。
純真な紅はれんを信じ、愛し、交わる。
そしてれんを地獄から救いだそうとするために、山神殺しに加担することになる。

この、紅の住居でれんがヌードになって紅と交わり、
れんが照明代わりに照らしたネオンサインの看板の周囲を歩くシーン。
佐藤寛子の大胆なヘアヌードが見られるが、
構図、カメラワークとまったく自然で、彼女の繁みを遮断する障壁も登場せず、
何と言いますか非常に調和のとれた穏やかな、それでいて裸体がエキサイティングな映像に仕上がっています。
繁みが隠されないで、されとてそればっかりが露骨に強調されるわけでもなく、
構図の中でシーンの展開に調和している。
ぼかし、の類はこの映画ゼロです。
さりげないようにも感じますがとても濃厚。
映画としてはすごく新鮮な映像。
しかもその絵の時間が長い。今までこんな場面を持つ映画あったのか?
もうこの辺りの映像、日本映画としては革命的とすら思う。
今までは「過剰に見せないことが美徳」「チラリズムこそ上品なエロスの表現」みたいな空気が少なからずあったと思う。
ところがこの大胆かつ自然な映像はどうだ。
リアルに、閉鎖した空間に男女が居るというシーンをまったく自然に描いている。
構図がカットや障壁などでヘアを遮断しないから流れが美しいし自然。
その上で佐藤寛子の極上のボディが鑑賞できるのだから。

紅の幻想のシーンでは雨の中駐車している車中で紅とれんのヌルヌルファック。
網タイツだけになった佐藤寛子の白い肌がここでもお目にかかれるが、
透けて見えるような脾腹、それに相反するような豊満な胸のふくらみと
「抜きん出たミューズ」のボディが堪能できます。

山神とその情婦をクスリで眠らせ運び、舞台は富士山麓の今は使われていない石切場だったトンネルに移る。
彼女らが「ドゥオーモ(イタリア語で教会の前の広場)」と呼ぶ処刑場、あるいはモルグ。
「熟成」と彼女らは呼ぶ。死体を自殺者に見せかけるため、骨になるまでここで隠す

山神の殺害には成功?したようだが、
その直後れんは吐き気を催した桃を、介抱するふりをしてスタンガン攻撃から絞殺
さらに桃の遺体と並んでデジカメでツーショット撮影、無機的な残忍さ
れんが憎んでいたのは山神だけではなかったそれとも金を一人占めしたかったれんの本性
れんの怒りはあゆみにも向かい、そして紅へと進む。

れんの怒りの爆発。
これがれんなのか?あの儚さを持った美少女の面影は失せ、
そこにいるのは親や世間に復讐の炎を燃やす殺人鬼・・・。
二重人格?「ドゥオーモには何かがいる」と言ったのは・・・?
紅の首を絞める中、幻想ではだかになって自分を鞭打つれん。
少女のれんと魔物のれんがいた、そう信じたい。
光とともに「ドゥオーモの何か」がれんに降臨?
一瞬、邪のない表情を見せるれん。

しかし駆け付けてれんの抵抗で倒れされていた女刑事・ちひろは
止むを得ず拳銃の引き金を引いた。

胸からひと筋の血を流して動かなくなったれんの名を呼び続ける紅・・・。
紅のように信じたい、
れんは悪魔ではなかった、と。
この辺、紅の心情に感情移入できる。

ハナシは続く。
住居で座って動かない紅。れんのことがショックだったのか。
そこへ杖をついたちひろがやってくる。ちひろもあの石切り場で負傷していた。
ちひろ、お弁当を置いて帰る。
何日も何日も手つかずのお弁当が残る、ちひろはお弁当を運び続ける。
あの時、職務とはいえ撃ってしまったちひろの心の葛藤、紅への贖罪。

紅はついにお弁当に手をつける。
「どうですか、一緒に食べませんか・・・」
ちひろの目に涙が光る・・・。

そう・・・死んだ者はもう返らない。
死んだ人を想うのはいい。
でも生きている人は、生き続けなければ。
時間はいいものだ。時間の経過が忘れさせてくれることもある。
そして人間は、生きるために食べる。
いや、食べることが、生きることだ。

ちひろ役の「東風万智子」、どっかで見たことのある口元のほくろ・・・。
その昔「真中瞳」さんだった方でした!このメタモルフォーゼにもびっくり。
最後の「お弁当」のシーン、すする涙がしょっぱいけどいい味でした。

ということで殆どストーリー的には予備知識なしで見ましたが、
邦画の新作では近来稀にみる作品でした。
先にも述べましたが病める現代社会が内包する種々の時限爆弾、
その問題提起、メッセージ性。
革命的に大胆で、自然で美しいヌード映像。
そのエロティシズムが必然的である構成。
出演者多くが持つ演技の力強さ。
ハード、タフ、リベラル。
ナチュラル、スムーズ、ソフト・・・。
反語も装飾語として成立してしまう強烈な世界。

佐藤寛子の大胆なヌードシーン、
クライマックスの豹変振り、
と彼女の存在感に圧倒されます。
若くしてもはや「生きる伝説」です。

石切り場だったトンネル「ドゥオーモ」もクライマックスの舞台としてすごい迫力で、
照明とカメラワークによりその迫力が増幅されている感じ。
神秘的雰囲気も醸し出されいます。

それからタイトルとエンドの文字表記が出てくるタイミングも何か味があっていいですね。

序盤で紅次郎の名前が偽名で、免許証から本名が判明します。
前作は見てないので知りませんでしたが、ははーん、という感じ。

(2011.0122)

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