「七人の侍」真の主人公は?

七人の侍(2枚組)<普及版> [DVD]

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<あらすじ>野武士に搾取されるある農村。
長老はついに腹の減った侍を
めしを腹いっぱい食べさせることを報酬に雇って野武士退治を決める。
こうして七人の侍が集められ、侍と農民は村を要塞化して野武士たちと対決する。

08-09年のNHK・BSの監督没後十年特集で再び見て、
人気投票でベスト5に入ったので09年の2月に再度放送されてまた見る。
「日本映画名作ランキング」などの企画があると常に上位に登場する日本映画の傑作。
エピソードの一つ一つ、セリフなどがどれをとっても名シーン・名文句であり、
ラストの雨中の激戦も大迫力。

まず序盤、収穫が済んだらまた搾取に来よう、という野武士たちの話を隠れて聞いた百姓が長老・儀作に報告。
落胆する百姓たちの中で利吉という若い百姓が怒りを爆発させ野武士を退治することを提案。
儀作は「腹の減った侍」を集めて村を防衛することを指示。
前半は侍が集まるまでがメイン、後半は侍・百姓と野武士の攻防。

三船・菊千代の豪胆かつユーモラスな演技は見どころ。
左卜全や子供たちとの掛け合い、馬を乗りこなそうとして落馬するシーンなどはおかしくておかしくて仕方ない。
またその真逆に、百姓が落武者狩りをしているのがわかって侍の中に険悪な雰囲気が流れる中、
百姓の本質を説き、
また百姓をそのような境遇にした武士階級との対立構造を言い当てた絶叫(正直言って聞き取りづらいが)、
そして儀作の水車小屋が野武士によって焼かれた時、孤児になった赤子を抱いての叫び、
「これは、俺だ!俺もこうだったんだ・・・」と川の中に泣き崩れるシーン、印象深い。

百姓の利吉は野武士の本拠地で、野武士に囲われていた女房と再会。
しかし女房は利吉を見ると燃えさかる炎の中に自ら入っていった。
平八が、利吉が独り者だと思って話すと利吉がおこる部分の答え。
呼び戻そうとする利吉を抑えようとした平八は銃で撃たれて死ぬ
(この後も侍の死者は全員銃での死で、この映画内での種子島の特性・優位性が伺われる)。
平八が埋葬され暗い雰囲気の中、やりきれなくなった菊千代は
平八が生きているうちに作った○六つ(侍たち) に△(菊千代)、田んぼの「た」(百姓たち)が描かれた旗を屋根の上に掲げ皆を鼓舞する。
ここにあのテーマ曲がかかる。説明がなくても、決意がうかがわれるシーン。

宮口精二の久蔵も好きなキャラクター。
痩身で強き剣の道を目指すストイックな侍のようだが、やさしさもある。
勝四郎と志乃の逢引を見て、握飯を身寄りのない老婆のところへ持っていくのがわかると
食事の時勝四郎に「お前は食え、今日は俺が残す」と言ってのける。
夜中に単身で野武士側に乗り込み、種子島(火縄銃)を奪って帰って来て
「二人(野武士を倒した)・・・」と言って平然と仮眠する。
勝四郎はそのかっこよさにうきうきして「あなたは・・・素晴しい方です。私は尊敬します!」
と言うと久蔵は「けっ」とばかりに少し笑って眠りにつく。
ここも好きなんですよね。
そして最期・・・久蔵は母屋に隠れた野武士の親玉に種子島で撃たれる。合戦の喧騒が一瞬静寂と化す。
それでも久蔵は刀を振りかぶり進み、前のめりに倒れて絶命。
助け起こそうとして大声で叫ぶ勝四郎。
何回見てもこのシーンが近づくと「久蔵もうすぐやられちゃうんだ」ってハラハラしながら見ていて
自分でも見たいんだか見たくないんだかよくわからないうちに見ている。

いくさが百姓側の勝利で終われば、また田植えが始まる。
陽気にお囃子にあわせて田植え歌を歌う利吉。
何かすっ飛んでるような土屋嘉男の歌と笑顔。
侍集めは利吉の一言から始まり、
利吉が女房を追いかけようとしたところで侍が一人死に、ラストは利吉の田植え歌。
起承転結各節で動く土屋嘉男の百姓・利吉こそ
「百姓側」の象徴であり、この映画の隠れた、いや真の主人公なのかも知れない。

(09.0429)

1954(昭和29)年東宝
監督:黒澤明
脚本:黒澤明、橋本忍、小国英雄
音楽:早坂文雄

出演:配役
志村喬:勘兵衛(侍)
稲葉義男:五郎兵衛(侍)
宮口精二:久蔵(侍)
千秋実:平八(侍)
加東大介:七郎次(侍)
木村功:勝四郎(侍)
三船敏郎:菊千代(侍?本名不明の戦国孤児)

高堂国典:儀作(村の長老)
左卜全:与作(農民)
小杉義男:茂助(農民)
藤原釜足:万造(農民)
土屋嘉男:利吉(農民)
島崎雪子:利吉の女房
津島恵子:志乃(万造の娘)
東野英治郎:盗人
上山草人:琵琶法師


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