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<あらすじ>とある社殿で若侍9人が、城内の汚職を巡る密談をしている。
するとたまたま社殿の奥で寝ていた?浪人が出てきて遠まわしに「その話は危ない」と諭す。
案の定、社殿は敵方に四方を固められていたが若侍たちは浪人の機転で危機を逃れる。
浪人は若侍たちと行動を共にし、軟禁されている城代家老の行方を調べる。
ストーリーからすると「用心棒」の続編のようである。
「用心棒」では後半に刀奪われて蔵に閉じ込められていたが、
そのまま脱出して棺桶屋から授かった大刀一本のまま話が終わったが
「椿」ではそのまま大刀一本で登場する。
つまり「用心棒」のラストと「椿」の序盤がつながっている感じ。
ただしウィキで記述されているように、「用心棒」には
卯之助の拳銃、マフラーなど幕末の時期に日本に入ってきた「洋モノ」が出てくるが、
「椿」のストーリーは藩制度内でのお家騒動なので徳川幕府政権安定時代と考えられ
時代背景が逆転している可能性が高い。
三船の三十郎は名前を聞かれ名乗るシーンではやっぱり椿を見て・・・「用心棒」と続けて見ると笑える。
三十郎、相変わらず強く、冒頭の社殿のシーンでは刀を抜かずに菊井の配下を蹴散らすし
(素手での押し合いでも複数相手に勝ってしまう)、
捕まった若侍を逃がすために菊井の配下40数名ぐらいを斬りまくる場面は豪快。
そして最後の、映画史上に残る名場面、仲代の室戸との対決シーン。
NHK・BSの黒澤特集の時、ナビゲーターの山本晋也監督が解説していましたが、
このシーンの三十郎の斬り方は「左の逆手」。
つまり左の腰にさした大刀を左手の逆手で抜いて斬る。
だから室戸のように右手主体で抜いてから振り降ろす斬り方より一動作早いし、
右手が左腰へ行くより左の左、この方がさらにプラスコンマ何秒か早いだろう。
まあ逆手って言えば座頭市が有名ですが、以前テレビでどなたかが「逆手じゃ(力が入らなくて)斬れない」とは申してました。
しかし室戸の流血の度合いからして左逆手は首筋、ノド、頸動脈にヒットしたのは間違いないはずで、
そういう柔らかい部分なら切っ先がヒットすれば骨まで切れるような力使わなくても
充分大ダメージになるのではないかと考えます。
敵方で捕らえられて押入れに入れられていた小林圭樹の侍は最後どうなったのか?
最後の城代家老と会見するシーンでは出てこないが(まあ奥様が「悪いようにはしない」と言っていたので無事かと思いますが)
押し入れにこもって、時々意見しに出てくる、
あるいは若侍と一緒になって(本来敵方なのに)喜んでいる小林圭樹のシーンは非常にユーモアがあり笑える。
幽閉されていた城代家老が出て来て若侍たち前にして自分の顔について語った
「乗った人より馬が丸顔」は確か幕末の志士・高杉晋作がそう言われていたと記憶している。
ということはこのセリフは先の時代考証に一石を投じるものかも知れない。
若侍衆も加山(若大将)、田中(青大将)、平田(「ゴジラ」の芹沢博士ほか)、久保明(「怪獣大戦争」の町の発明家ほか)、
土屋(ガス人間、X星人)とある意味豪華な顔触れで、
特に田中邦衛はいちいち三船のいうことにムキになって反対したり、言ってることと現実が逆の流れになってしまって笑える。
文章出来上がってamazonのDVDの広告をデコレーションしてたら、
DVDのメインの写真が「左逆手」になっているのに気づきました。
もっと何作も作ってもらいたかったという気もあります、「三十郎シリーズ」。
1962(昭和37)年東宝、黒澤プロ・モノクロ
監督:黒澤明
製作:田中友幸、菊島隆三
脚色:菊島隆三、小国英雄、黒澤明
原作:山本周五郎『日日平安』より
音楽:佐藤勝
出演:配役
三船敏郎:椿三十郎
加山雄三:井坂伊織(城代家老の甥)
平田昭彦:寺田文治
田中邦衛:保川邦衛
太刀川寛:河原晋
久保明:守島隼人
土屋嘉男:広瀬俊平
仲代達矢:室戸半兵衛(菊井の腹心)
小林桂樹:見張りの侍・木村
入江たか子:睦田城代家老夫人
団令子:千鳥(城代家老娘)
志村喬:黒藤(次席家老)
伊藤雄之助:睦田(城代家老)
清水将夫:菊井(大目付)
その他、藤原釜足、堺左千夫、広瀬正一、樋口年子
(11.0104)
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