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1960年東宝・黒澤プロ(黒澤プロ第一作)モノクロ
監督:黒澤明
製作:田中友幸、黒澤明
脚本:小国英雄、久板栄二郎、黒澤明、菊島隆三、橋本忍
音楽 佐藤勝
<あらすじ>土地開発公団汚職の中心人物・副総裁の岩淵の秘書で
岩淵の娘・佳子と結婚した西は
実は証拠隠滅のため死んだ公団課長補佐・古谷の息子の板倉だった。
板倉は戦友の西と戸籍を交換して岩淵に接近し、
父の復讐を遂げようとするとともに巨悪を根絶するため戦うが・・・。
08年10月5日のNHK衛星黒澤特集で見る。
冒頭結婚式で始まり登場人物の説明が続く部分は淡々と進むが
西村晃の課長・白井が西の策略でだんだんと神経衰弱になって行くあたりから引き込まれるように見てしまった。
この辺りは西村晃に注目しているだけで面白い。
山で遺書を残して死んだ和田課長(実は自殺する寸前に西に止められその後行動を共にする、
遺書だけが残ったので死んだと思われて葬式まで挙げる)の幽霊を見た、と言って脂汗たらして焦燥するシーンは迫真、
渋谷シネマヴェーラで毎年やってる特集(必ず西村晃出演のホラー作品がプログラムに入ってる)でかかりそうな演技(笑)。
殺し屋が田中邦衛ってのはおいらの立場から見ると笑ってしまうが(水戸黄門対青大将!)。
黒澤映画で最後に悪役が勝利する映画というのもあまり記憶にない(全部見たわけではないが)。
どんでん返しの後のラストは後味悪い、でもそれがこの映画の趣旨だ。
三船の西は巨悪に近づくためにその娘・佳子と愛のない結婚をするが、だんだんと健気な佳子に愛情を抱いてゆく。
父の岩淵はそんな佳子をだまし西のアジトをつきとめる。
そして西を事故に見せかけて殺す。
より非情さを失わなかった側が勝利した。
戸籍を交換したために板倉になった加藤武(実は本当の西)は三船の西が死んでしまったために
自分が西に戻れず無力な板倉として生きていくしかなくなる。
過去のキャリアを失って生きたまま監獄に入れられたような、加藤武の血を吐くような叫び。
佳子の香川京子が三船の西の死を知らされ
自分の行為がその遠因になってしまったことで
三橋達也の兄の腕の中で精神的に破綻していく演技(腕だけが悲しくもがいている)も生くって恐ろしいまでに。
三船の西(実は板倉)の死は本物の西の加藤武のセリフの説明でしか明らかにされないが
そういえば三船ってあまり死に顔を見せない俳優だと思う。
「七人の侍」の菊千代はうつ伏せで死んだし、デビュー作「銀嶺の果て」でも断崖から落ちたまま上がってこない。
ドロン、ブロンソンと共演した「レッド・サン」ぐらいか?(これも実はあまりよく憶えていない)
この辺自分も三船出演作品全て見たわけではないので知識ある方がいたら御意見乞う。
しかし豪華なキャストだ。
それに黒澤作品以外に妙なつながりを見せるメンバーでもある、何で?(笑)
三船、香川京子、志村、藤田→大坂城物語
加藤武、西村晃→怪奇せむし男
三橋達也、田島義文、土屋嘉男、松本染升→ガス人間第一号
(08.1012)
出演:配役
三船敏郎:西幸一(実は板倉)
加藤武:板倉(実は西)
森雅之:岩淵(土地開発公団副総裁)
三橋達也:岩淵辰夫(副総裁の息子)
香川京子:岩淵佳子(副総裁の娘)
三津田健:有村(公団総裁)
志村喬:守山(公団管理部長)
西村晃:白井(公団課長)
藤原釜足:和田(公団課長補佐)
田中邦衛:殺し屋
そのほか、笠智衆、宮口精二、藤田進、田島義文、土屋嘉男、沢村いき雄、山茶花究、松本染升
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