「用心棒」桑畑三十郎の巧妙な立ち回り。

用心棒<普及版> [DVD]

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<あらすじ>2人の親分が跡目争いから対立する宿場町。
そこにふらりと現れた腕の立つ素浪人(三船)。
素浪人は2つの勢力を戦わせて同士討ちにさせ、宿場町を甦らせようと画策するが
丑寅一家の頭の切れる末弟・卯之助(仲代)が拳銃を持って帰ってきて、
事態は混迷を極める。

10年12月、北千住ブルースタジオの黒澤特集で見る。もっともすでにテレビやビデオで何回も見てますが。

三船は勿論いいんんだけど、その他の出演者もいい味出てます。

加東大助の亥ノ吉、頭悪くて何度も騙されていて滑稽だが憎めないキャラ。
藤田進の用心棒先生、他にはないユーモアたっぷりの笑顔が楽しい。
山田五十鈴は・・・「蜘蛛巣城」「どん底」同様に強欲な元祖・鬼嫁って感じです(黒澤作品出演は全部そんな感じか?)。
東野英治郎の居酒屋のおやじも、初めは三十郎のことを「騒ぎを起こしそうだ」って感じで嫌っていたが
博打のカタに女房を、丑寅のバックにいる造酒屋の徳右衛門に取られた百姓・小平を女房・子供とともに救って逃がしてやったことを聞いて
だんだん三十郎のことを気に入って加担するようになる(これがピンチを招きラストにつながるんだが)。

居酒屋のおやじと言えば、最初に三十郎が居酒屋に入ってきて
「飯だ」とか言っておきながら金は持ってない後払いみたいな感じだったけど、
三十郎、ラストでおやじが縛られている縄を一刀の元に切り捨てて「さらば!」とか言って去る。
結局飯代とか一銭も払ってない(笑)。おやじの背中が印象的(笑)。「払えよ」って感じ。

仲代の卯之助のセリフ。清兵衛一家と通りで対峙した時は「もっとこっちへ来な」と言っていたのだが
ラストの三十郎との対決の時は「あんまり近くに来るんじゃあねえ」と変わっていてセリフの対照の妙。
卯之助から見れば、拳銃を持ってしても三十郎が難敵だということを示しているのだと思う。

ラストは卯之助のピストルに対して距離を詰めた三十郎が左右のフットワークで卯之助を幻惑、
手裏剣代わりの包丁を投げつける。

今わの際の卯之助が懇願するので銃を渡してやる三十郎。
「弾は入ってないぜ」と卯之助は言うが銃口が火を噴く。三十郎、豪胆。

【羅生門綱五郎】
台湾出身の元力士・プロレスラー。身長2m超。
牢代わりの蔵の中で三十郎を痛めつけるときの場面ではフルネルソン、クローからの叩きつけを披露。
光の加減と本人の頬骨が張った顔相(失礼)が独特の陰影をつけてP.カ―ロフのフランケンシュタインのような不気味さ。
それからウィキにもこの映画の出演がジャイアント馬場と間違えられることがあると書かれているが、
馬場は羅生門に比べるともっと肩幅があって横にも大きく、より巨大感があると思う。
それより何より、三船対馬場が実現していたらもっと世間に広まっているだろうし、
オープニングの出演者のクレジットで馬場の名前が出てこないことを不思議がってもいいはず。

藤田進、志村喬、三船敏郎、仲代達矢と黒澤作品4大主役と言える名優が勢揃い(ほかだと「天国と地獄」)というのも豪華な映画です。
オープニングの軽快且つ重厚感のある出来のメイン・テーマ曲(用心棒のライトモチーフ?)をバックに懐手で闊歩する三船の絵も、なかなか魅力的です。

1961年東宝・モノクロ
監督:黒澤明
製作:田中友幸、菊島隆三
脚本:菊島隆三、黒澤明
音楽:佐藤勝

出演:配役
三船敏郎:桑畑三十郎 (浪人・用心棒)
東野英治郎:居酒屋の権爺
河津清三郎:馬目の清兵衛
山田五十鈴:おりん(清兵衛の女房)
太刀川寛:与一郎(清兵衛の倅)
天本英世:弥八 (清兵衛の子分)
藤田進:本間先生(清兵衛の用心棒)
山茶花究:丑寅
加東大介:亥之吉
仲代達矢:卯之助
羅生門綱五郎:かんぬき(丑寅の用心棒)
藤原釜足:名主多左衛門
志村喬:造酒屋徳右衛門
渡辺篤:棺桶屋
沢村いき雄:番太の半助
西村晃:無宿者
加藤武:無宿者
土屋嘉男:小平(百姓)
司葉子:ぬい(小平の女房)
その他、堺左千夫、大村千吉、夏木陽介、ジェリー藤尾

(2010.1231)



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