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昭和35年新東宝
監督:並木鏡太郎
制作:大蔵貢
出演:池内淳子、五月藤江、天草博子、瀬戸麗子
<あらすじ>白井藤子(池内淳子)はスター養成学校の練習生。
しかし家は借金があって母親は病気だった。
ある日藤子は映画への出演が決まり「借金が返せる」と喜ぶが、その代わり予定されていた同僚は話を断られてしまう。
別の同僚の誕生パーティーでは芸能記者の男たちが付き合っている女を無視して藤子に色目。
「藤子憎し」で結束した女3人はピクニックの際に藤子を崖から突き落として顔に女優生命を奪うような大怪我をさせてしまう。
包帯姿の藤子が嵐の夜病院を抜け出して家に戻ると、家は借金のカタに差し押さえられていて母親はカミソリ自殺を遂げていた。
母の遺書に書いてあった唯一の身寄りの「影山のおことさま(曾祖母)」を山奥の屋敷に訪ねた藤子はおことさまに出会い、
影山家が大和朝廷直属の陰陽師の一族だったことを知る。
おことさまは秘伝の呪術で藤子の傷を治して女3人への復讐をさせようとするが、おことさまが中座している間に目がさめた藤子は
傷がますます醜くなっていることに絶望して刃を胸に刺して自殺する。
戻ったおことさまが藤子を見つけると、今度は死者を甦らせる呪術を行って自分の血を藤子に飲ませる。
藤子は甦り顔の傷も元通りになったが、同時に彼女は吸血する怪物に変身する能力も得てしまい、
街に帰って「影山小夜子」と名乗り3人の女に復讐を始める。
「ラピュタ阿佐ヶ谷」で見た、「女の嫉妬」が悲劇の輪廻を生んでゆく和製ホラー。
「映画秘宝 悪趣味邦画劇場」によると
勝手に他の男と結婚してあげく離婚し、映画界への復帰を懇願する池内淳子に当時の新東宝の社長・大蔵貢が
「どんな役でもやるというのなら」という約束で映画界への復帰をさせたという、いわばペナルティー映画。
だから若くて美しい池内淳子が毛むくじゃらの吸血怪物に変身して人間を襲うという、いじめとも感じられるギャップが激しい部分がある。
オープニングはいきなり片目、背骨が曲がってて足を引きずる怪異な風貌の男が蝙蝠が飛び交う洞窟を進むシーンで始まる。
住まいのようなところに着くと白髪で杖をついた、ぶつぶつだらけのすごい顔のお婆さん(=おことさま、当然特殊メイク)が出てきて
男を「このうつけもんが!」と叱る。
男はおことさまの下男らしくて、網で蝙蝠を捕まえてその血を皿に出し、神棚への祈りを終えたおことさまに供する。
おことさまはその血を飲む。どうやらおことさまの食事のようだ。
母を失い、借金で家を追われた藤子は傷を負った顔に包帯を巻いたまま山奥の影山家を訪ねる。
そこで下男に会い、おことさまに会った藤子は自分が3人の同僚の女に崖から突き落とされたことをおことさまに教わり
(おことさまの超能力により水鏡にVTRの如きに映像が出る)驚きとともに怒りの感情が湧いてくる。
おことさまは藤子に復讐することを申しつけ、顔の傷も直してやるという。
でもその治療っていうのが・・・
護摩焚いて祈祷するのと、藤子の包帯を1回はがして傷の上に蝙蝠を乗せて再び包帯を巻くという、いわば「蝙蝠のしっぷ」とでもいえそうな方法・・・。
藤子が気がつくとおことさまと下男の姿はなく、包帯をはがしてみると傷は前にまして醜くなっていた。
絶望した藤子は短刀で自殺。戻って来たおことさまと下男のコンビが藤子を見つけると(一体何故中座していたのだろうか?おトイレ?)、
おことさまは今度は藤子を甦らせるための祈祷を行う。
そして自分の手首を切り、その血を藤子の口に含ませる。おことさまは直後倒れこみ、その後は登場しない(死んだのか?)。
気づいた藤子は傷がなくなっていることを喜ぶが、不意に苦しがるようにしゃがみこむと顔が黒ずんで手にどんどん毛が生え出し、
全身に細いひらひらがたくさん生えた蝙蝠のような毛むくじゃらの怪物に変身してしまう。
これはおそらく蝙蝠の血を常食としていたおことさまの血が体に入ったためなのではないか、と考える。
この後元同僚3人の前に藤子そっくりの「影山小夜子」という女性が現れてコンテストに優勝する。
元同僚3人は「あれは藤子」だと言って動揺する。
「影山小夜子」を名乗る藤子は体に入ったおことさまの血液がコントロールするのか、
吸血の怪物に変身して復讐を繰り返す。
最後の女を追って会津に行った藤子はそこで新郎=かつての藤子の婚約者に出会い、
やさしい心を見せて一度は復讐をやめようとするが、体内のおことさまの血液が復讐を強要するのか
帰りの車中で再び怪物に変身してしまい、初夜寸前の目標を襲撃する。
でもこの怪物の着ぐるみっていうのが、「帰ってきたウルトラマン」に出てくる怪獣「ザザーン」の体に
永井豪の漫画「ハレンチ学園」のキャラ「小百合ちゃんことヒゲゴジラ」の頭部が鎮座したようなデザイン。
全身にひらひらがついていて手は蝙蝠の羽根をイメージしているような長い膜のようなものがついているだけで
(でも別に飛ばない)結構チープ。顔はヒゲだらけ(前掲書には「鬼瓦権造」の名も)。
でその手を大きく伸ばして目標の女がいるホテルの廊下で
「ひら〜、ひら〜」ってゆっくり動かしながら歩いているシーンはホラーというよりは何だか失笑がこみ上げてくる。
池内淳子は変身する途中のメイクは本人らしいが、完全に変身が終わった怪物は男の役者が演じているよう
(襲いかかり方とかが女の動きではない)。
映画の終わりはこの手の作品に多い後味の悪いアンハッピーエンド。
ホラーというほど怖くもなくどちらかというと池内のメイクといいグロい映画という感じ。
でももっとグロくするのなら、
怪物に変身した後も服だけが藤子が着ていたワンピースとかスカートのままで中身が怪物、というようにしたら
あの毛むくじゃらの怪物が女の服着て人を襲うということで失笑もんのすっごくグロい映画になっていたかも。
(2006.0814)
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