「吸血鬼ゴケミドロ」高英男の怪演。

吸血鬼ゴケミドロ [DVD]

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1968年松竹
監督:佐藤肇
脚本:高久進、小林久三
音楽:菊池俊輔
特撮:ピープロダクション

出演・配役
吉田輝雄:杉坂(パイロット)
佐藤友美:朝倉(スチュワーデス)
高英男:寺岡(テロリスト)
北村英三:真野(次期総理大臣候補)
高橋昌也:佐賀(宇宙生物学者)
キャシー・ホーラン:ニール(ベトナム従軍兵士の未亡人)
加藤和夫:百武(精神科医)
金子信雄:徳安(兵器製造会社の重役)
楠侑子:法子(徳安の元妻)

<あらすじ>羽田空港から伊丹空港に向かう小型旅客機に時限爆弾が仕掛けられたとの通報が。
しかし旅客機は某国大使を暗殺したテロリストによってハイジャックされる。
直後機は発光する未確認飛行物体と交錯し計器に異常をきたし着陸するが、
通信の手段がなく不明の場所で孤立する。
機を脱出したテロリストはゲル状の宇宙生物に寄生され、吸血鬼と化して生き残った乗客を襲うが、
それは人類滅亡をもくろむ宇宙生物「ゴケミドロ」の宣戦布告だった。

オープニングの空が異常に赤い・・・。
なぜか何回も鳥が旅客機にぶつかって自殺(暗い)。
特撮映画だが、特撮の部分は冒頭の旅客機のシーン、
宇宙生物の円盤、生物が寄生するシーンぐらい。

この映画の見どころは下界と隔絶された世界で生き残った人間たちが裏切り、
またくっつきして全員が生き残ろうとするチームワークが破綻する部分。
次期総理大臣候補の北村に女房を譲った徳安は、水のない中わざと北村にウイスキーを飲ませ、喉を乾かせていじめる。
外の吸血鬼化したテロリストに生贄をささげると言い出した北村は、「外人なら後腐れない」とニールを指名。
だが隙を突いて機外に脱出する時は、そのニールと北村が銃で武装し結託してレッツ・ゴー!何てこっちゃ!
裏切りと結託が激しく交錯する展開は東宝「マタンゴ」を派手さでは陵駕したか。

そして絵的には何といってもテロリスト役の高英男の怪演!
濃いー顔で白いジャケット着て白い手袋で
額に宇宙生物が寄生した縦割りの傷跡をつけてにじり寄ってくるシーンは最高
(笑える)。
この「にじり寄ってくる」感じが強烈。
いきなり襲いかかるのではなく少しずつじりじり、じりじりと近づいてくる。
そして組みついて相手の首筋に吸い付き、
吸血する。

・・・吸血するんだけど、ドラキュラのように牙を立てて首筋に穴を開けるようでもなしに、口で吸い付いて、吸う。
・・・穴は開かないし、血は出ない。
どちらかというと、精気を吸い取るって感じ。
でも吸われた方は絶命したしな。
吉田輝雄と高橋昌也が、金子信雄の演じる徳安の死体について「血が一滴もなくなってる」というセリフもある。
穴を開けない高等テクニックか!うーん・・・

またゲル状、ドロドロの宇宙生物が額の割れたテロリストらに寄生するシーン。
顔がいかにもハリボテって感じのチープな造型。
その額の傷に逆回転でずるずると液体が侵入していく。
あんなにたくさんの液体が頭部に入ったら、頭の大きさが2倍になってしまいそう(笑)。
宇宙生物は頭部に侵入してから片っ端から脳細胞を食って、居場所をつくるのだろうか(コミックの「寄生獣」?)。

宇宙生物は自ら「ゴケミドロ」と名乗ったが、
あの人間に寄生するドロドロが、円盤を造って人類滅亡を考えた高い知能を持つ生物とは全然考えられない。
本当の侵略者「ゴケミドロ」は円盤の奥でモニターを見ているのでは?
あのドロドロは一種の生物兵器で、本当の「ゴケミドロ」はドロドロを遠隔操作しているのでは?
なんて深読み。

その中でラスト近くまで精悍さを失わない吉田輝雄と、未だにあんまり年取ったように見えない佐藤友美だけが
何とか人間らしさを失わずにこの状況から脱出しようと考える。
が・・・時すでに遅し・・・
っていうラスト。
菊池俊輔の劇判も浮遊感たっぷりで劇中の不安定な雰囲気を醸し出してます。

(08.0901)

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