「大怪獣バラン」熊も鳴かずば撃たれまいに。

大怪獣バラン [DVD]

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<あらすじ>%E5%A4%A7%E6%80%AA%E7%8D%A3%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%B3。
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むかーし、「にっぽんのチベット」と呼ばれている東北のある山奥の村、
その近くの湖に「バラン」という種類の大きな熊が棲んでいました。
熊は縄張り意識が強く、人間が縄張りの中に入ると怒って暴れ出し、
人間を生かして帰しませんでした。
村の人間はそのことをよーく知っており、
決して縄張りの中には入らずに
バランを「バラダギ様」と呼び神として奉りました。
そうしてバラダギ様と村人は、つかず離れずの関係を保って共生してまいりました。

しかしある時、東京から来て
「文明社会」がどうのこうのと理屈をつける人間がバラダギ様の縄張りに入ってきました。
バラダギ様は怒って暴れ出し村を壊しました。
すると東京の人間は「戦車」という武器を使って再びバラダギ様の縄張りに入ってきて、
バラダギ様を攻撃しました。
バラダギ様は再びお怒りになり、
住みかを出て東京に攻め込んできました。

ところが東京の人間は玄関口でバラダギ様に策略を仕掛け、
火のついた火薬を飲みこませました。
火薬が爆発したバラダギ様は苦しんで海に逃げましたが、
二度と再び上がってくることはありませんでした、とさ。

♪坊や〜、よい子だねんねしな・・・。
だいたいそういうお話。

まあ熊の大きさと攻撃のスケールは違いますが、
辺境の地から都会へ進み人間に危害を与えた生物が駆逐される、という点では大差ない。
って書くと身もフタもありませんから、もう少し考えてみましょう。
(バランは熊が暴れた程度、みたいな話は以前どこかで読みましたが出典不明です)

発端は中学生の夏休みの昆虫標本の中にシベリアにしかいない珍しい蝶、
アカボシウスバシロチョウがまぎれこんでいたことだった。
んでその蝶の生息地を調査するために東京から二人の調査隊がやってきて、
北上川上流の「日本のチベット」と呼ばれている秘境を調査しにくるが、彼らは謎の死を遂げる。
で調査のために亡くなった人の関係者と妹の雑誌記者らが再び現地へ。

その村の子供が連れてた犬がなぜか暴走、結界の中へ入ってしまう。
犬を追って子供も。子供を救いに結局みんなで行ってしまう。
すると湖からバランが出現して人間を襲撃。
村全滅。「帰らっしゃい」の祈祷師?(役名は「神主」だけど、どうみても祈祷師)も
バランに踏みつぶされた模様。

人間側が戦車やポンポン砲で再度攻撃。
バラン砲撃をものともせず、山の上から脇の皮膜で滑空して東京方面に進撃。
海から羽田空港に上陸して攻撃するが、千田是也の博士のひらめき案の作戦が功を奏し、
バランは撃退される。

だからねえ、バランを滅ぼしたのは蝶々と犬なんですよ。
蝶々が標本にされなければ、調査隊は来なかったし。
犬が突如暴走して結界を越えなければ子供もついて来なかったし、みんなで探しに来ることもなかった。
何で犬は暴走したんだろ?

前半はそういうバランが出現するまでの「理由」を延々と創りあげるストーリー。
後半はバラン撃退中心。
千田是也がバランの正体暴き(中生代の怪獣バラノボーダ、だそう)から撃退の可能性、
最後のひらめき作戦、と序盤から空気を終始支配していて、
他の登場人物による本編中のドラマがまったく希薄。
特殊火薬の発明者である平田昭彦の博士も、有効手段が思いつかず
千田是也の支配下から脱却できない。
何だか脚本に重厚さが感じられない。
因果関係みたいな話も兄が死んだ妹が調査に来るぐらい。

でも伊福部昭の音楽はいいです。
「兵士の序曲」のマーチ、「対バラゴン」にも使用された探索のマーチ、
それにバランのライトモチーフに、ラドンの「パパラパー、パパラパラパーラー、パララララ・・・」
っておなじみのメロディーが使用されている。

これは最初の一枚看板での映画「空の大怪獣ラドン」では
以後ラドンのライトモチーフと認知されるあのメロディーが全然出てこないので、
まあまだ「ラドンの曲」って認知されてなかったということですね。
大映の「鯨神」のラストでも同じメロディーが聴ける。
おいら的には伊福部先生のイメージとしては「空」的なイメージのメロディーではなかったかと思います。

【その後のバランの不遇】
折角一枚看板という、なかなか出来ないデビューを飾ったというのに
「ゴジラ対バラン」とかそういう企画はなかった模様。
長い間の沈黙の後の初のカラー作品登場
(アンギラスとともに「こういう体色してるんだ」と認識されたのはよかったが)の「怪獣総進撃」では
もうもろ員数揃え的な姿の表し方で、しかも劇中名前も呼ばれない。
大都市破壊にも、クライマックスの富士山麓での決戦にも参加せず、「総進撃」では最も影の薄い存在では。
バラゴンはバラン並みに登場回数は少なかったけど名前は結構出てたし(地底怪獣、ってところがミソ)
マンダはモノレール巻きつきで存在感見せたし、
クモンガは富士山麓戦に参加して糸吐いてたし。

さらに時間がたって21世紀。
「GMK大怪獣総攻撃」の対ゴジラの護国神獣はギドラ、モスラ、バラゴンですが
企画段階ではアンギラス、バラン、バラゴンだったそうです。
ところが地味?という理由でスター怪獣のキングギドラ、モスラが
アンギラス、バランと差し替えになった模様。
というわけで「怪獣総進撃」以降は今だに登場していませんバラン。

【野村浩三】
この人、主人公なんだけど、似たような話に出てたなあ・・・。
山奥行って、珍しい蝶を見つけて・・・。
ああそうだ、蝶の燐粉で変化して巨人になっちゃうウルトラQの「変身」。
あれで自分が巨人に変身してしまうエピソード。
高圧線の鉄塔が並ぶ平原を、電線を突破しながらよろよろと歩くシーンは
劇判とマッチしていて絶品でした。
まあテレビの「Q」よりこちらの方が早いので。

【その他】
「帰らっしゃい」「黙らっしゃい」
「バラダギ様を信じないとは、あきれた御方じゃ」
などと奇ッ怪なセリフを連発する祈祷師(瀬良明)がなかなかいい味。

バランたぶん海を渡るのは初めてだろうが、
真水飲めないのはキツかっただろうなあ。
山の淡水湖育ちだものなあ。
羽田に上陸した時は「水くれ・・・」ぐらいの苦しさだったのでは。

(10.0725)

1958(昭和33)年東宝:モノクロ82分
製作:田中友幸
原案:黒沼健
脚本:関沢新一
特技監督:圓谷英二(円谷英二)
監督:本多猪四郎

出演:配役
野村浩三:魚崎健二
園田あゆみ:新庄由利子
千田是也:杉本博士
平田昭彦:藤村博士
村上冬樹:馬島博士
土屋嘉男:勝本三佐
山田巳之助:防衛庁長官
田島義文:掃海艇艦長
瀬良明:神主



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