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1958(昭和33)年東宝
製作:田中友幸
監督:本多猪四郎
特技監督:円谷英二
原作:海上日出男(うながみひでお)
脚色:木村武
音楽:佐藤勝
出演:配役
佐原健二:政田(生物学の助教授)
平田昭彦:富永捜査一課課長
白川由美:新井千加子(キャバレー「ホムラ」の歌手)
田島義文:坂田刑事
土屋嘉男:田口刑事
中丸忠雄:関刑事
千田是也:真木博士
白石奈緒美:峯子(正田の助手)
佐藤允:内田(ギャング)
伊藤久哉:三崎 (ギャング)
桐野洋雄:島崎(「ホムラ」のボーイ、ギャング)
山本廉:佐伯
中村哲:金(麻薬バイヤー)
大村千吉:船員
加藤春哉:船員
アベックの男:夏木陽介
<あらすじ>服だけを残す謎の人体消失事件が連続し、
政田助教授は友人の警視庁勤務の富永課長に「放射能による生物の液体化」の可能性を語る。
キャバレー「ホムラ」周辺を舞台に「クラブ歌手」新井千加子を巻き込み
警察、麻薬ギャング、液体人間の三つ巴の戦いが展開される。
えー、白川由美さんはニ谷家のお母さんでありまして、英明さんの奥さんで友里恵さんの母なんですが
「地球防衛軍」の入浴シーンといいこの「液体」といい、ほかにも「妖星ゴラス」などで東宝特撮のお色気シーンの多くを担っております。
年齢的には、こういう役もっとお若い方がいたのではないか?と思うのですが、
なんでか、って言うとやっぱり映画館に来たお子さんとお父さんが同時に楽しめる、ってからくりになってるのではないか?
と思うわけで、映画館にお子さん連れてくるお父さんぐらいなら、
若い子よりもちょっと妖艶で、
お化粧や香水のいい香りが漂ってきそうな白川由美さんが肩を露出している方がぐっとくる、
と当時の映画会社の偉い方が決断なさったのでしょうか。
ともかく白川由美さんの「地球防衛軍」の入浴シーンとこの「液体人間」での下水道でのシミ―ズ姿は
東宝特撮では際立ったエロスを醸し出している名シーンであります。
白川由美さんがお店で歌う立ち姿はなかなか。
当時の日本人女性には稀なプロポーション。
ただ今回調べたら歌は吹き替えだったようです。
また少し脱線してるなあ・・・大丈夫かなあ・・・。
などと考えつつ進む。
まあ今はなき浅草オールナイトなどで見てるんですが、渋谷シネマヴェーラの特集でかかったので見に行く。
液体人間は思うに自己の滋養あるいは栄養補給のために人間を襲撃して液化し吸収するのではないか、と考える。
南方の海で水爆実験と遭遇し行方不明になったとされる第二竜神丸に遭遇した船員が持ち帰った?航海日誌では
最初に甲板にいた六人が濃霧の中行方不明になったと記されていて、
第二竜神丸のその他の乗組員は服だけ残して行方不明になっていた。
つまり最初に行方不明になった六人だけが液体人間になって、
その他の乗組員、東京での犠牲者は全て元の六人に「同化」されたか、
もっとわかりやすく言うと「食われた」のではないでしょうか。
ギャングで新井千加子の内縁だった(これを子供に説明するのは難しいぞ、お父さん)三崎が液化されたあと、
ギャング仲間が千加子の部屋で待ち伏せをして千加子に迫った後、
部屋を出るや否や液体人間に襲撃され服を残すのみになるシーンで
「液体人間にされた三崎の記憶が残っていて千加子を守った」という説があるようだがどうだろう。
それなら液化された田島義文の坂田刑事の意識が捜査に協力してもいいのではないか、と思ってしまう
(液体人間の内ゲバ!)。まあそんなことすると一気に話が複雑になってしまうのでないでしょうが。
ただそうすると液体人間が新井千加子の住んでいるアパートにやってきたのと「ホムラ」に出現したことの動機が浮ばない。
こういうのはどうだろう、
液体人間は吸収した人間の意識や記憶を取りこむ。
つまり三崎の意識あるいは記憶が液体人間に取り込まれたため、新井千加子の元へ出現した。
それは新井千加子を守ろうとする三崎の意思?
それとも三崎の記憶からターゲットを決めた液体人間の食欲?
いずれにしても液体人間側の感情の描写は全くないのでそれは不明。
タイトルとエンドの曲がニュース映画の大本営発表のマーチみたいでえらくきらびやかで
せっかくオープニングで、船内で無人の舵取りが動いている液体人間の存在を喚起させるシーンがあるにもかかわらず
曲に「液体人間」の不気味な感じとかがまったく出てこないで、
曲自体の出来はいいと思うんですが映像とのマッチングということを考えるとどうもおかしい感じ。
巨匠・佐藤勝氏の実験的作品なのでしょうか。
特撮登場は珍しいギャング役・佐藤充のギラッとした笑顔も印象的。
ラスト、火炎攻撃で液体人間を駆逐する警察の作戦、
火力が強すぎて建造物も火の中へ(笑)。
駆け付ける消防車が効果音で表現されています。
この二次災害が人間の科学力というか暴力の強さを出していて、
それが液体人間の存在そのものを表しているかのよう。
実体のない液体人間の描写、どこかで読んだ記憶だとセットをさかさまにして液体の流れが壁に取りつくシーンなどを撮影したそうだけど、
それと白川由美さんの白い肌、というほとんど2つの見せ場でよくぞここまでの映画が出来たなあと思います。
「東宝特撮総進撃」では柳下毅一郎さんが「フィルム・ノワールとして実現した特撮映画」と表現されておりますが、
まさにその通りだと思います。
あと勝手な想像ですが現時点で国内特撮で唯一「美女と」がタイトルに反映されている件ですが、
この当時の海外特撮映画につけられた邦題の影響が大きいのではないかと感じます。
【気がつかなくていい部分】
第二竜神丸に遭遇し、中の様子を調べようと乗り替わって船内を歩く船員。
仲間が液体人間に溶かされてパニックになるシーンで騒ぐ声の中に、
よく聞いていると「困っちゃったなあ〜」なんてユルいセリフがある。
そりゃ仲間が溶かされたら困るけど・・・もっとインパクトあるセリフでしょう、ここは。
「いっせいの、せ〜」で発声しろ、との演出の指示で大部屋俳優が声出した時に
アイデンティティーの足跡を残したかった役者がいたのでしょうか。
それとも編集でのお遊びか?
(2011.0129)
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