「海底軍艦」ムウ帝国の自滅。

海底軍艦 [DVD]

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<あらすじ>大古、繁栄しながら海底に没したムウ帝国が地上に進出を予告。
ムウ帝国はかつての植民地だった地上の大陸の返還と
強敵と認識した「海底軍艦」の建造中止を全世界に呼びかける。
楠見元少将以下は「海底軍艦」出動を依頼するために、
第二次大戦中に失踪した神宮司大佐に面会するため南の島に行く。

ムウ帝国はなぜ地上側の誰も存在を知らない、
(神宮司を戦時中に極秘裏に逃がした楠見元少将さえ知らなかった)
海底軍艦の建造を中止するよう、世界各国を脅迫したのだろうか。

ハナシの流れはこう。

かつてムウ帝国は太平洋上のムウ大陸に存在し、地上での栄華を極めた。


他の大陸は全てムウ帝国の植民地であり、他の人間はムウの奴隷だった。


だが地殻変動によりムウ大陸は海底に没した。


しかしムウ帝国は強大な科学力を持って地熱を利用して海底に居住地を建造し生き延びた。


そして長い年月が経ち再び地上への復帰を考えた。


第二次大戦中、神宮司大佐は反乱を企て潜水艦イ号四〇三で出発した。
楠見少将は神宮司を戦死したと発表して、彼の出航を黙認した。


神宮司を乗せたイ号四〇三は国籍不明の潜水艦(実はムウ帝国の船)と偶然遭遇、攻撃を受けるが
神宮司はイ号四〇三を囮にして脱出、南の島で「轟天建武隊」を結成、轟天号の建造に邁進する。


ムウ帝国は拿捕したイ号四〇三の中で轟天号に関する資料を発見、
これが完成すればムウの地上復帰に対する大いなる脅威と認識する。


ムウは工作隊員23号により、神宮司の上司だった楠見を誘拐しようとするが
カメラマン旗中と西部の妨害により失敗、プロモーションフィルムを楠見宛に送り付け
海底軍艦の建造中止と、かつて植民地だった地上の大陸の返還を要求する。



・・・えー、先にも書きましたが、楠見も含めて誰も海底軍艦の存在を知らなかったんです。
ってことは、ムウは逆に彼ら敵軍に海底軍艦の存在を知らせてしまった、ということですね。
おまけにせっかくみんなで南の島に会いに行った神宮司も「日本復興」を頑と主張して
対戦相手はムウ帝国よりも(ストーリーには出てきませんが)
むしろ第二次大戦の連合国(さらに言うとアメリカか?)、って息まき方。

だからムウは海底軍艦を無視して地上を攻撃してればよかったのではないかと追う。
終盤の丸の内、ニューヨークなどは大被害被りましたから。

仰天の作戦として、まず日本は無視して神宮司と手を組み
「アメリカをやっつけよう」でもよかったのではないかと思う。
もっと頭を使えよ、ムウ帝国。情報戦では先んじていたのに。

皇帝、強力なブレーンがいなかったのか。
高島忠夫の旗中と藤山陽子の真琴が捕虜にされて
天本英世の睨下が「この捕虜をどうしますか」って尋ねた時も
侍女みたいのが耳打ちしてから
「マンダのいけにえにせよ」とか言ってるし。
幼い皇帝だから(演じた故・小林哲子さんはこの当時22歳ぐらいの計算になる)
プライドばっかり高くてまだ自分で決める力がないのか?

そういや皇帝、罵倒して快感を得たかったのかわざわざ捕虜の部屋に出向いたら、
旗中に逆襲されて自分が捕虜になってしまう大逆転も演じちゃって、
もうムウ帝国もドジな人ばっかり?

工作隊員23号(平田昭彦)も楠見と真琴の誘拐に失敗したし
まあ直後に送りつけてきたムウ帝国のプロモフィルムのナレーション、
果ては全世界への脅迫のアナウンスまで23号がやってるのは芸達者だが。

ちゃんと仕事したのはあの「異常に寒がっていた雑誌記者」に化けていた佐原健二の工作員だけか?
彼は轟天のドックを爆弾で破壊し(少なくても轟天の出撃が少し遅れた)旗中と真琴を誘拐して捕虜にした。
でも爆弾はどこに持っていたのだろう?轟天のドック内で調達したのか?

ムウって、海底の帝国では南洋の現地人みたいな半裸の服装で
槍で武装して皆さんで集まってヘンな踊りして「マンダ〜、マンダ〜」を連呼して、
とても地上より進んだ文明、って感じがしないんだけど…。

ムウ帝国が全世界を支配していた時、他の大陸の人間は全てムウの奴隷だった、
って話もホントなのかどうか。
脅迫の為の方便ってこともあり得る。

んで映画の、轟天がムウ帝国の心臓部たる動力源にドリルで地底を掘って到達し
挺身隊が突入するシーンだけど、バックの轟天が、絵。
それから挺身隊の冷凍銃で凍りつくムウ人も、絵。
予算と日程が足りなくなっちゃたのかなあ。

なんだかトンデモ映画の紹介みたいですが。
でもおいら、この映画大好きです!
何と言いましても「海底軍艦」轟天号の圧倒的かっこよさ、強さ。
船首のドリル、武骨な黒金と赤の配色。変形する艦橋。
そして轟天号が行くところに響き渡る伊福部昭氏による楽曲。
この「曲」が轟天号のかっこよさを何倍にも増幅しているということは間違いない事実である。

あまりにも強いもんだから、敵のムウ帝国が可哀想なぐらい。
マンダはせっかく巻きつきで攻撃したのに高圧電流放電でビリビリして逃げて、
そこで冷凍砲を浴びて白髪のお爺さん顔で凍死(冬眠?)。
まあマンダが弱かったのではなくって轟天号が強かったと解釈したい。

最後に出てきたムウ帝国の潜水艦もあっけなく氷漬けにされておしまい。
たった数時間でムウ帝国を壊滅させたパワーは、
「金星を1日で死の星にした」あのキングギドラと肩を並べるかも。

映画の冒頭、日本の落盤専門の技師を誘拐していたところ、
海底地下のムウが落盤が続いていたところをみると、
地下帝国はかなりの老朽化が進んでいてムウ人の生活を脅かし、
もはや地上進出しか帝国存亡の道はなかった、と考えると
ムウの地上進出も納得がいくのでは。
しっかしいきなり「降伏せよ」とか武力ではなあ…。
ムウ皇帝には時勢を読み切れず、
いつかかつての繁栄が取り戻せると信じて疑わない豊臣秀吉の側室、淀殿を連想させる。
ムウ帝国の崩壊は必然だったのかも知れない。

【その他の見どころ】
・「ドデカ」藤木悠の「蒸気人間!」「温泉人間!」連発。
・楠見元少将に銃を奪われ、波打ち際に飛び込んで逃亡する「工作隊員23号」平田昭彦の役者魂。
・神宮司大佐vs楠見元少将の二度に渡るラチが明かない「戦争問答」。
・ラチが明かない親子問答、神宮司大佐vs真琴by湖畔。
・赤い髪のムウ皇帝役・小林哲子さんも何回も見てるとクセになりそうな独特の魅力
(『海底軍艦』以外の出演作品を見たことがありませんが)。

あと夢のないハナシですが、「その後の海底軍艦」ってどうなっちゃったんですかね。
自衛隊に編入されるわけもなく、アメリカが艦引き渡しを要求するも神宮司&日本側が認めず
結局アメリカに引き渡しするよりは、っていうことで解体されちゃう、ってスジしか見えないんですが。
神宮司が独断でニューヨークを目指して進撃すれば
それは「沈黙の艦隊」っていう別の作品に近くなってしまうことでしょう。

(09.1205)

1963年東宝
原作:押川春浪『海底軍艦』
監督:本多猪四郎
脚本:関沢新一
音楽:伊福部昭

出演・配役
高島忠夫:旗中進(カメラマン)
藤山陽子:神宮司真琴(神宮司大佐の娘、楠見の秘書)
小泉博:伊藤刑事
上原謙:楠見(海運会社専務=元日本海軍技術少将)
藤木悠:西部善人 (カメラマン助手)
佐原健二:海野魚人(雑誌『実話之友』記者=ムウ帝国工作員)
田崎潤:神宮司八郎大佐
田島義文:天野三郎(海軍一等兵曹)
北あけみ:リマコ(水着モデル)
高田稔:防衛庁長官
藤田進:防衛庁幹部
伊藤久哉:進藤技師
桐野洋雄:技師
沢村いき雄:タクシー運転手
小林哲子:ムウ帝国皇帝
天本英世:ムウ帝国睨下
平田昭彦:ムウ帝国工作隊員23号


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