「キングコングの逆襲」天本英世のドクター・フー、悪役の魅力。

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これはリアルタイムで見ました。
序盤、北極でエレメントXの採掘のために
地下に潜ってゆくメカニコング1号機。
伊福部昭の、無慈悲、無表情のマシーン的なメカニコングのライトモチーフが冴えわたる。
腰の発破で爆発を起こして地下に潜ってゆくメカニコングは迫力。
しかしエレメントXの強力な磁力で作動不能になり、ドクター・フー側はすったもんだ。

国連の原子力潜水艦エクスプロアー号は海底油田調査の航行中、修理のためモンド島に立ち寄る。
エアクッション艇で上陸したネルソン、野村、スーザン。
留守番してるスーザンにふらふらとゴロザウルス登場。
ゴロザウルスはのどから腹部にかけてのシワやヒダが生物感たっぷりの出来。
逃げようとしてすっころんだスーザンの悲鳴を聞いて、眠っていたコングが覚醒。
スーザンを救出したコングはゴロザウルスと対決。
ここでの対決は'33年RKO版オリジナルの、コング対ティラノサウルスとの対決によく似た展開になっていて、
本多・円谷のオリジナル版へのオマージュの気持ちが感じられる。
コングのパワーであごを引き裂かれ絶命するゴロザウルスが、泡を口から出すシーンがショッキングでした(当時子供だったので)。

コングはドクター・フーに誘拐され、北極で催眠術で誘導されエレメントXを掘りさせられる。
ところがエレメントXの光で催眠が目覚め、脱出。北極の海にダイブ!熱帯生まれのはずだから寒かったろうなあ。

マダム・ピラニアが野村らを逃がしたため、東京でコングとスーザンが再会。
そこにメカニコング(2号機)が出現し対決。
対決は東京タワーによじ登るスカイハイマッチとなり、メカニはスーザンを人質にして優勢に立ったが
マダム・ピラニアがメカニの操縦装置を壊したため、作動不能になったメカニは墜落してバラバラ。

コングとスーザンが心を触れ合わせるシーンで必ず掛る「サロメ」からの引用曲。
非常に印象に残る美しい曲で、思えば「コングと美女が心を通わせる」映画は
アメリカ作品を差し置いてこの作品が初めてだと考えるので
伊福部昭の美しい旋律はコングとスーザンのエスコートに大きく寄与している、と言えるだろう。

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劇中コングはずーっと「コング」と呼ばれていて、
「キングコング」と呼ばれるのはラストの1回のみ、と記憶している。
若い個体が美女の危機を救ったことで「キング」の称号を得た、と解釈するべきか。
沢村いき雄のモンド島の老人は「ボー・コング」と呼んでいたが
坊やの「坊」?まさかね。

【天本英世のドクター・フー】
「仮面ライダー」の死神博士より、個人的にはこちらのドクター・フーを天本英世の傑作に挙げたい。
セリフまわしがいちいちかっこいい(悪役なのに)。
「わしもドクター・フーだ」
「この地下に、貨車いっぱいのエレメントX!」
「コング、掘れ、掘るんだ!」
(コングの方が素早いですね、の言葉に)「今に疲れてくる」

マダム・ピラニアと仲間割れになってテーブルの下のピストルを奪うため
テーブルの押し合いへしあい(笑)。
肉弾戦では意外と弱いドクター・フー。

あと手下たち(黒部進とか田島義文とか)が野村に正体を見破られ
「こいつらは日本人じゃないですよ、わたしにはわかります」とか言われる。

ラスト、コングに輸送船を襲撃されて、フーが机に挟まれて上から大量の水を浴びて
口から血を吐きながら死んでいくシーンは、子供だったので衝撃的でした。

【沢村いき雄】
モンド島を守る?老人の役で登場。
現地語で島にやってきた者に警告を与える。
ドクター・フーに拳銃で撃たれてひっくり返るシーンが爆笑。
その後ネルソン一行に発見されて快方されるが助からず。
状況を聞かれたネルソンに現地語で答えるが
コングを睡眠弾で眠らせヘリコプターで誘拐したドクター・フーのことを
「ドブネズミの目をした悪魔がやってきて、コングを空に連れて行った(大意)」
と説明する。が、
そもそもモンド島に「どぶ」はあるのか(笑)?

【生体対機械のダブル】
「逆襲」公開より1年早い昭和41年にコミック「ゲゲゲの鬼太郎」の「大海獣」というストーリーで
南方の不死の大海獣の血液を注射されてしまったっため大海獣そのものに変身してしまった鬼太郎と、
鬼太郎に大海獣の血を注射した張本人である天才少年科学者・山田が鬼太郎を迎え撃つため創造した
「鉄の大海獣」が東京タワーのそばで大格闘するシーンがある。これがヒントなのではないか?

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そもそも東宝はコングの使用権が切れる前にもう一作コング作品を作ろうと、
「ロビンソン・クルーソー作戦 キングコング対エビラ」を企画したが、アメリカ側が脚本に難色をつけたため、
この企画は「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」として世に出たそう。
コングのやる役をゴジラがやったためか「 南海の大決闘」はゴジラの擬人化がより目立つ。
んで新脚本のヒントになったのが「大海獣」なのではないか、という、まあ想像ですが。
もっとも東映TVアニメ版のキングコング
「大きな山をひとまたぎ、キングコングがやってくる」の主題歌がお馴染みのシリーズにも
ドクター・フーとロボット・コングというのが登場する。
この東映TVアニメ版のアメリカでの放送が前年1966年にはじまっているので「大海獣」とはほぼ同時期。
ということは偶然の一致か。
この「生体対機械の対決」のスタイルは「逆襲」を経て「メカゴジラ」へと進化したのだと考える。

20メートル級の魅力に溢れる名作です。
コングの権利の問題があるようだが今こそリメイクしてもらいたいものだ。
登るのは当然東京スカイツリー。
ドクター・フーは・・・「ガーイガン、起動!」平成X星人の人がいいかなあ・・・。

(2010.0905)

1967(昭和42)年東宝、ランキン・バス・プロ
製作:清水雅、アーサー・ランキンjr
脚本:馬淵薫
音楽:伊福部昭
プロデューサー:田中友幸
監督:本多猪四郎
特技監督:円谷英二

出演:配役
ローズ・リーズン:カール・ネルソン司令官
宝田明:野村次郎
リンダ・ミラー:スーザン・ワトソン
浜美枝:マダム・ピラニヤ
天本英世:ドクター・フー
田島義文:フーの手下
黒部進:フーの手下
沢村いき雄:モンド島の老人

ローズ・リーズンの声:田口計
リンダ・ミラーの声:山東昭子


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