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2009年東宝
「ゼロの焦点」製作委員会
原作:松本清張「ゼロの焦点」
監督:犬童一心
脚本:犬童一心、中園健司
音楽:上野耕路(元ゲルニカ)
主題歌:中島みゆき「愛だけを残せ」
挿入歌:プラターズ「オンリー・ユー」
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出演:配役
広末涼子:鵜原禎子
中谷美紀:室田佐知子(儀作社長夫人)
木村多江:田沼久子(金沢の耐火煉瓦会社の受付)
西島秀俊:鵜原憲一(禎子の夫)
杉本哲太:鵜原宗太郎(憲一の実兄)
鹿賀丈史:室田儀作(金沢の耐火煉瓦会社の社長、佐知子の夫)
市毛良枝:板根絹江(禎子の実母)
鵜原の親族:小泉博
2010年8月22日、浅草で見る。
松本清張の長編推理小説の再映画化。
23歳、英語が堪能な板根禎子(広末)はお見合い結婚で10歳年上の広告代理店勤務の鵜原憲一(西島)と結婚する。
7日後、仕事の引き継ぎで金沢事業所に向かった憲一は行方不明になり、禎子は金沢に夫の失踪を調べに行く。
序盤のお見合いのシーン、花嫁衣装、
新婚旅行で岩風呂での混浴シーン(残念だけど肩から上しか見れない)
などのヒロスエの初々しい若妻の出来は絶品の美しさ。
早大入学、中退時の騒動があり、
結婚・離婚で子持ちの30歳、のはずなんだけど
いやー、ヒロスエ、キュートです。
憲一が帰宅する予定日に、禎子はすき焼きを準備して待つ。
ラジオからはプラターズの「オンリー・ユー」が聞こえる。
ところが夫は帰ってこない。
夫の荷物を整理しているうちに出てきた2枚の建物の写真。
禎子は金沢へ行き、
さまざまな情報を手に入れ、夫の失踪に推理を働かせていく。
何だか女性探偵みたいに。
そうして東京と金沢を往復していくうちに、
次第に眉間にシワが寄り、目の下にクマが出来て
だんだんとヒロスエの顔に疲労感、焦燥感が刻み込まれていく。
禎子は金沢で憲一の得意先のレンガ会社を紹介され、
社長の儀作、その夫人で日本初の女性議員候補を陰で支援する佐知子らに話を聞く。
佐知子は家に実弟の洋画家を住ませており、佐知子をモデルにした絵が製作途中だった。
禎子は、儀作の会社で受付をしていた田沼久子の存在を知り、
彼女が特殊な英語の使い方をしていたことを気にかける。
それは・・・パンパン(戦後すぐの外国人相手専門の娼婦)が使っていた英語だった。
禎子が謎ときを進めると、憲一の実兄・宗太郎が毒殺され、
さらに禎子に協力していた金沢の広告代理店の社員も刺殺される。
見合い結婚した禎子は、憲一の過去についてまったく知らず、
失踪の謎を解いていくうちに憲一の過去が明らかになる。
運命の歯車が狂い、再会するはずのなかった男女が再び出会い、
禎子の「結婚しての新しい生活」というささやかな幸せが壊される。
田沼久子の他にもう一人、パンパンをやっていた女性の存在が浮かび上がる。それは・・・。
憲一の過去が明らかにされ、連続殺人事件の真犯人が明らかになる所で
ストーリーとしてのクライマックスは結実する、と思う。
その後の選挙事務所での禎子のリヴェンジその他は物語を終わらせるための儀式的な感じ。
だが、新幹線のぞみが走る現代の銀座の画廊に、弟が描いていた佐知子の肖像画が飾られていたのは謎。
ラスト近くで再びプラターズの「オンリー・ユー」がかかるが、
「既成曲の使用」ってどうなんだろう。「ヱヴァ・破」でもあったし。
そもそもタランティーノの影響なのだろうか。
「オンリー・ユー」はタイトルそのものにメッセージがあるが、
この部分は「愛だけを残せ」のインストゥルメンタルでもよかったのではないかと思う。
時代(太平洋戦争)に運命を翻弄される男女の群像を描いた作品、と見ることもできる。
推理ものだがしっかりとした出来、という感じがして大変面白く見ることが出来た。
中谷美紀の演技は強烈な印象。
そしてエンドロールの中島みゆきの人間賛歌「愛だけを残せ」の力強さ。
最後まで席を立てない。
【実写フィルム部分】
オープニングで、戦中の雨の神宮外苑での「学徒出陣」壮行会の実写フィルムが出てくる。
昔、このフィルムが発見された時のドキュメントを日本テレビで見た。
あの曲・・・勇壮な「陸軍分列行進曲(註1)」が演奏される雨中、
当時の首相東条英機に向かって「頭(かしら)ーっ、右ーっ」の号令で敬礼する学生たち。
このフィルムは何度見ても何か心を打たれる。
そのあと戦争が終わり、玉音放送があり
佐藤内閣成立のバンザイ、
長嶋茂雄の天覧ホームラン、
力道山対ルー・テーズのプロレス世界選手権の映像が映される。
註1:映画「大坂城物語」の序盤の曲に似ている記憶があり、
もしかしたら伊福部昭の作曲かと思ってました。
実際はフランス人作曲家シャルル・ルルーの作だそう(ウイキより)。
(2010.0912)
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