「ヒマラヤ無宿 心臓破りの野郎ども」雪男・羅生門対にせグレート・アントニオ。

1961年ニュー東映・カラー
監督:小沢茂弘
原作、脚色:松浦健郎
音楽:鈴木静一

出演:配役
片岡千恵蔵:土門博士
進藤英太郎:ボリショイの熊三(芸人)
水谷良重:ヨッチィ・三谷(国際司法刑事)
佐久間良子:土門道子(土門博士の妹、新聞記者)
筑波久子:ジーナ
江原真二郎:早田雄次郎(新聞記者)
羅生門:雪男
三島雅夫:チャン博士
ジョージ・ファーネス:モハメッド委員長
ハロルド・S・コンウェイ:サー・ハラリー博士
堺駿二:大賀(山岳評論家)
ユセフ・オスマン:ラスベガスの係員
特別出演・山東明子、三田圭子ほか:「雪男コンテスト」の審査員

<あらすじ>ヒマラヤの雪男を捕獲したとのニュースが全世界を流れた。
雪男を捕獲した土門博士が帰国。だが博士は雪男の居場所を明言しない。
雪男の居所を見つけて殺そうとする謎の一味が暗躍。
土門博士は雪男芸人の「ボリショイの熊三」を泳がし敵の動きを探ろうとするが
なぜか東京タワーの下で行われた「雪男コンテスト」の決勝戦を熊三と争うことに・・・。

「無宿」シリーズだそうですが無宿って何?
土門博士は家にいるより山に行ってる時間の方が多いらしいですが。
タイトル見る限り「クリフハンガー」みたいな山岳デスマッチを連想しますが
実は殆どが「ヒマラヤから帰国した後の東京での攻防」です。

でもオープニングはヒマラヤでの山岳隊キャンプを襲撃する雪男の姿から始まる。
雪男、顔は見せないけどなぜか腰には布が(笑)・・・。
そして転々と雪上に残る足跡。

ストーリーは帰国した博士一行と、
雪男を殺そうとする謎の一味の静かな攻防が続き
クライマックスの「世界雪男会議」の会場で
なぜ一味が雪男を狙うのか、などの謎が解き明かされ
全てが一本になるという展開。

雪男役は黒澤映画「用心棒」にも出演した元力士・プロレスラー、
台湾出身の羅生門だが、この作品では顔にメイクしていて
全身毛むくじゃらのコスチューム。やはり背はすごく大きい。

んで羅生門の雪男、初登場シーンは土門博士の家の風呂場。
氷の上に座って安眠している。
生肉しか食べない、っていう設定でにわとりや山羊が出てくる。
動物愛護協会から抗議が来そうな残酷シーンはない。

片岡千恵蔵の博士はクライマックス直前までヒゲを伸ばしていて
「世界雪男会議」の会場に登場した時はヒゲ剃ってタキシード着て出てくる。
悪の一味を捕まえるためにライフル持って大暴れ。
すごい博士だ。

博士、帰国直後一行を連れて自宅で宴会を行うが全員で合唱。
「ヒマラヤどんな山〜高い山〜♪」みたいな歌詞。
で全員が手拍子するんだけど、みんな片方がグーの手拍子。山の人独特?

悪の一味の大竹社長は、自分の経営するバーで雪男まがいのショーを行っている。
雪男を演じるは「ボリショイの熊三」。
パートナーの「姐御」筑波久子がハンターみたいなスタイルから次第に脱がされて
赤いビキニにシューズと手にムチといういで立ちになって
ムチで雪男役を威嚇してストリップ+SMチックなショーを展開。

んでこの熊三のビジュアルが長めの髪を顔の両脇に垂らして
シャツのボタンをかけないで胸や腹を出して着ている。
「雪男コンテスト」では鎖でバスを引っ張る種目も。
・・・どう見ても力道山時代の日本プロレスに来日した
「密林王」グレート・アントニオがモデルとしか思えません。
まああれほどアンコ形の体型ではありませんが(でもちょっと腹出てる)。

「ヒマラヤ無宿」映画の公開が'61(昭和36)年8月。
グレート・アントニオが日本初登場で大暴れしたシリーズ「第3回ワールド大リーグ戦」が
やはり'61年の5〜6月。かろうじて符合するようだが
「ボリショイの熊三」→モデルがグレート・アントニオ説、どうだろう。

熊三は大竹社長にそそのかされて雪男を殺しにホテルに行くが、
その巨体にビビった熊三に、雪男「死んだ兄貴に似てる」となつく(博士の通訳による)。
博士が優勝した「雪男コンテスト」の賞品の山羊を「食え」と勧められて熊三困惑(笑)。

悪い方はチャン博士、大竹社長、その上の「委員長」。会議の会場で席に着く。
現れない土門博士に、チャン博士は会議の流会を提案する。
チャン博士役の三島雅夫の独演会的演技が生きている。
が、ここで土門博士登場、雪男を入場させる。
・・・って出てきた雪男は熊三(笑)。
これは実は一味のヒマラヤでの悪事(ウラン鉱脈の発見、シェルパの殺害)を暴露するためのトリック。
続いて会場に本物の雪男さん登場。
で悪事がバレた一味は拳銃をぶっ放して乱闘、博士奮戦、警察介入して一味逮捕。
雪男は帰国して終わり。お土産は熊三が持ってきた山羊。飛行機の中で食事するわけにはいかないなあ。

【雪男の正体】
すっごく背が高くて毛むくじゃらですが、実はヒマラヤのシェルパでした。
彼はチャン博士ら一味に兄貴を殺されて、ヒマラヤに残り雪男化したらしいです。
でもそれなら序盤の「キャンプを襲撃する雪男の映像」が何だかよくわからなくなってしまいます。
それに風呂場で氷まみれで安眠、ってのもなあ・・・。風邪引くか凍死でしょう、人間なら。
食事が生肉だけ、ってのもフツーにシェルパではないと思います。
だから土門博士は完全に勘違いしてると思います。
あれはシェルパが雪男化したのではなくって、雪男がシェルパしてた、と考えるのが正解では?
プロレスつながりで考えるとコミック「タイガーマスク」の、
インドで行われた「アジア選手権」のエピソードに登場する
謎の雪男?プロレスラー、スノー・シンの元ネタなのかも知れません。


(2011.0206)



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